ジャズ・ディスク・ノート 2019年5月21日

第321回チック・ウェッブ 1936年

No.321 Chick Webb 1936

“Chick Webb and 1936”レコード・ジャケット

“Chick Webb and his Orchestra / featuring Ella Fitzgerald 1936” Jazz anthology JA 5199(輸入盤)

<Personnel>…チック・ウエッブ・アンド・ヒズ・オーケストラ(Chick Webb and his Orchestra)

Band leader & Drumsチック・ウェッブChick Webb
trumpetマリオ・バウザMario Bauzaボビー・スタークBobby Starkタフト・ジョーダンTaft Jordan
Tromboneサンディ・ウィリアムスSandy Williamsクロード・ジョーンズClaude Jones
Clarinet & Alto saxピート・クラークPete Clark
Alto saxエドガー・サンプソンEdger Sampson
Tenor saxテディ・マクレーTeddy McRaeウェイマン・カーヴァ―Wayman Carver
Pianoジョー・スティールJoe Steele
Guitarジョン・トルーハートJohn Trueheart
Bass記載なしNo credit

先ずパーソネルを見て「?」と思うことは、ベース奏者の記載がないことである。ベースはいなかったのであろうか。音があまり良くなくよく聴こえないのだが、ベースは入っているように思える。僕の持っている限りの前回録音時のベースはジョン・カービーであったが、1935年10月のことで4か月も前である。僕の持っている次回録音は、36年4月7日で、それによればベーシストは、ジョン・カービーではなくビヴァリー・ピアに変わったことになっている。この交代がいつ行われたかは分からない。とりあえずここでは、記載なしとしておこう。
また曲順が録音順ではない。2回のセッションを収録しているが、B面6曲目を除いて2月19,20日の録音には歌手にエラ・フィッツジェラルドが加わっている。

“Chick Webb and 1936”レコードA面ラベル

<Contents> … 1936年2月8,9日、19,20日 ニューヨークにて録音

A面
B面
1.サヴォイでストンプStompin’ at the Savoy2月8,9日1.ビッグ・ジョンズ・スペシャルBig John’s special2月8,9日
2.その手はないよDon’t be that way2月8,9日2.ユー・ヒット・ザ・スポットYou hit the spot2月19,20日
3.ニット・ウィット・セレナーデNit Wit Serenade2月8,9日3.リズム・アンド・ロマンスRhythm and romance2月19,20日
4.キング・ポーター・ストンプKing porter stomp2月8,9日4.キーピン・アウト・オブ・ミスチーフ・ナウKeepin’ out of mischief now2月8,9日
5.シャインShine2月19,20日5.ゴー・ハーレムGo harlem2月8,9日
6.ダークタウン・ストラッターズボールDark town strutter’sball2月19,20日6.ホエン・ドリームス・カム・トゥルーWhen dreama come true2月19,20日

A-1「サヴォイでストンプ」、2「その手はないよ」はどちらも楽団に在籍していたエドガー・サンプソンの作で当時大ヒットしてスタンダードとなった作品。2「その手はないよ」は1934年に一度録音している(拙HP第300回)。ソロもやはりサンプソンのアルトが良い。特に粟村政昭氏曰く「消えいらんばかりのつつましさでリズムセクション全体の中に埋没している」チックとしては珍しく短いがドラム・ソロを取っている。これが意外(?)に激しいソロで少し驚く。どちらもBG盤がヒットしたがやはり34年の録音も含めてウェッブ盤の方が威勢が良くて僕は好みである。
A-4「キング・ポーター・ストンプ」はジェリー・ロール・モートン作。これもBGも録音しているナンバーである。出だしのTp、途中で出るTs、Tbのソロが良いが誰が吹いているのか分からないのが残念。
A-5「シャイン」、A-6「ダークタウン・ストラッターズボール」、B-2「ユー・ヒット・ザ・スポット」、B-3「リズム・アンド・ロマンス」はエラの歌入り。声が若いというか可愛らしささえ感じられる。
B-6「ホエン・ドリームス・カム・トゥルー」は、エラではなくチャールズ・リントンのヴォーカルが入る。リントンは当時ウェッブ楽団の専属歌手だったという。声の質から白人ではないかと思われる。

”Cab - Ella & Chick”レコード・ジャケット

“Cab - Ella & Chick”Bandstand records 7125(輸入盤)

録音順でいえば、僕の持っているレコードでは左のレコードに1曲だけ収録されている「ホエン・アイ・ゲット・ロウ・アイ・ゲット・ハイ」という曲で、収録日は1936年4月7日とある。
因みにこのレコードはA面にキャブ・キャロウェイの1937年から1939年にかけての録音を収録し、B面にはエラの歌入りのチックの楽団の1936年から1940年にかけての演奏を収録している。このレコードに記載されたパーソネルは正しいとして、変わったメンバーを挙げておこう。

<Personnel>…チック・ウエッブ・アンド・ヒズ・オーケストラ(Chick Webb and his Orchestra)

前録音2月からの変更点
Trombone … クロード・ジョーンズ ⇒ ナット・ストーリー Nat Story
Alto sax … エドガー・サンプソン ⇒ ルイ・ジョーダン Louis Jordan
Piano … ジョー・スティール ⇒ トミー・フルフォード Tommy Fullford
Bass … 記載なし ⇒ ビヴァリー・ピア Beverly Peer

<Contents> … 1936年4月7日 ニューヨークにて録音

B面3.ホエン・アイ・ゲット・ロウ・アイ・ゲット・ハイWhen I get low , I get high

エラ・フィッツジェラルドのヴォーカル入り。エラの声は若いが歌のうまさは特筆ものである。

次回の録音は6月2日に行われる。この日の音源はいくつかのレコードに分かれて収録されているので、それを以下のようにまとめてみた。少々分かりにくいかもしれないがご容赦を!

”Princess of Savoy”レコード・ジャケット

<Contents> … 1936年6月2日 ニューヨークにて録音

曲名原題レコード個所
シング・ミー・ア・スイング・ソングSing me a swing song“Cab ‐ Ella & Chick”B面2.
シング・ミー・ア・スイング・ソングSing me a swing song“Princess of the savoy”A面1.
ラヴ・ユーアー・ジャスト・ア・ラフLove , you’re just a laugh“Princess of the savoy”A面2.
ゴー・ハーレムGo harlem「チック・ウェッブ/伝説」B面6.
ア・リトル・ビット・レイター・オンA little bit later on「チック・ウェッブ/伝説」B面7. 

<Personnel 「伝説」>…チック・ウエッブ・アンド・ヒズ・オーケストラ(Chick Webb and his Orchestra)

Band leader & Drumsチック・ウェッブChick Webb
trumpetマリオ・バウザMario Bauzaボビー・スタークBobby Starkタフト・ジョーダンTaft Jordan
Tromboneサンディ・ウィリアムスSandy Williamsナット・ストーリーNat Story
Clarinet & Alto saxピート・クラークPete Clark
Alto saxエドガー・サンプソンEdger Sampson
Tenor saxテディ・マクレーTeddy McRaeウェイマン・カーヴァ―Wayman Carver
Pianoジョー・スティールJoe Steele
Guitarジョン・トルーハートJohn Trueheart
Bassデル・トーマスDell Thomas
チック・ウェッブ「伝説」レコード・ジャケット

僕の持つ4曲の音源を収録した3種類のレコードに記載されているメンバーは、それぞれ若干異なる。上記は「伝説」に記載されているパーソネルである。もちろん同日の録音でメンバーが変わったこともあり得るが、このチック・ウェッブの場合あまり考えられない。ともかく相違点を上げると

“Cab ‐ Ella & Chick”

Alto saxは、エドガー・サンプソンではなく、ルイ・ジョーダン
Pianoは、ジョー・スティールではなく、トミー・フルフォード
Bassは、デル・トーマスではなく、ビヴァリー・ピア

“Princess of the savoy”

Alto saxは、エドガー・サンプソンである
Pianoは、ジョー・スティールである
Bassは、デル・トーマスである

もちろんこのパーソネルの違いも僕には判断することができないので、相違点を挙げるにとどめたい。

2月の再録「ゴー・ハーレム」を除き全てエラのヴォーカル入りである。繰り返しだが、まだ18歳のエラの歌唱が、声も若く表現もストレートで、しかもメチャうまい。

”Princess of Savoy”レコード・A面ラベル

さて、次の僕の持っている録音は、10月29日でこれも2枚のレコードに3曲が収められている。

<Contents> … 1936年10月29日 ニューヨークにて録音

曲名原題レコード個所
ユール・ハヴ・トゥ・スイング・イットYou’ll have to swing it“Cab ‐ Ella & Chick”B面7.
アイ・ガット・ザ・スプリング・フィーヴァー・ブルースI got the spring fever blues“Princess of the savoy”A面3.
ヴォ―ト・フォー・ミスター・リズムVote for Mr. rhythm“Princess of the savoy”A面4.

<Personnel >…チック・ウエッブ・アンド・ヒズ・オーケストラ(Chick Webb and his Orchestra)

Band leader & Drumsチック・ウェッブChick Webb
trumpetマリオ・バウザMario Bauzaボビー・スタークBobby Starkタフト・ジョーダンTaft Jordan
Tromboneサンディ・ウィリアムスSandy Williamsナット・ストーリーNat Story
Clarinet & Alto saxピート・クラークPete Clark
Alto saxルイ・ジョーダンLouis Jordan
Tenor saxテディ・マクレーTeddy McRaeウェイマン・カーヴァ―Wayman Carver
Pianoトミー・フルフォードTommy Fullford
Guitarジョン・トルーハートJohn Trueheart
Bassビヴァリー・ピアBiverly Peer

パーソネル表記は、2枚とも同じ。

3曲ともエラの歌入り。エラの歌が入っていることに全く不満はないのだが、エラの歌なし録音というのはなかったのだろうか?それとも歌入りの曲だけを集めたのだろうか?

そして次の録音は、11月18日。僕の持っている1936年最後の録音である。

”Ella swings the band”レコード・ジャケット

”Chick Webb/Ella swings the band” MCA-1327 輸入盤

<Contents> … 1936年11月18日 ニューヨークにて録音

A面1.オルガン・グラインダー・スイングOrgan grinder’s swing
A面2.シャインShine
A面3.マイ・ラスト・アフェアーMy last affair

<Personnel >…エラ・フィッツジェラルド・アンド・ハー・サヴォイ・エイト(Ella fitzgerald and her Savoy Eight)

Vocalエラ・フィッツジェラルドElla fitzgerald
trumpetタフト・ジョーダンTaft Jordan
Tromboneサンディ・ウィリアムスSandy tdWilliams
Clarinet & Alto saxピート・クラークPete Clark
Tenor saxテディ・マクレーTeddy McRae
Pianoトミー・フルフォードTommy Fullford
Guitarジョン・トルーハートJohn Trueheart
Bassビヴァリー・ピアBiverly Peer
Drumsチック・ウェッブChick Webb

この録音のバンド名が「エラ・フィッツジェラルド・アンド・ハー・サヴォイ・エイト」となっている。完全にエラの唄を中心に据えたコンボ・バックである。これは同時代のBGの録音などを意識したのだろうか?否意識しないはずはない。
A面1.「オルガン・グラインダー・スイング」は、少し前10月7日にBGも録音しているが、そちらはヴォーカル無しである。そしてここでは軽快な、後は看板となるスキャットを披露している。

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