ジャズ・ディスク・ノート 2019年6月16日

第329回デューク・エリントン Duke Ellington 入門第25回 1936年

No.329  Duke Ellington No.25 1936

ご覧いただきありがとうございます。
定年オジサン<のたり庵>のジャズ学習帳です。

柴田浩一著『デューク・エリントン』

柴田浩一氏はその著『デューク・エリントン』で、各年のデュークとその楽団に起こった主な出来事を簡単にまとめている。それによるとこの年は、
個人技を十二分に発揮させるため、その人のために書いた最初の作品『クーティのコンチェルト』、『バーニーのコンチェルト』を、この年初めて発表したことを最初に掲げている。デュークはその成果が気に入ったのかこの年中に、ローレンス・ブラウン、レックス・スチュワートのためのコンチェルトも作っている。

「Duke Ellington/The Columbia years」

次にアーサー・ホエッツェルが退団し、ウォーレス・ジョーンズが入団したことを上げている。しかし各種ディスコグラフィーでは記述が異なる。
HistoryのCDに付いているパーソネルでは、ウォーレス・ジョーンズが加わっての初録音は1936年12月21日である。
一方Ellingtoniaでは、ホエッツェルは1936年12月21日を含め1938年2月2日の吹込みまで参加し、ジョーンズは1938年2月24日の吹込みに参加、しかし3月3日ではホエッツェルに戻り、4月11日からはずーっとウォーレスである。
それでは右CD3枚セット”Columbia years”ではどうかというと、1938年2月2日の録音ではアーサー・ホエッツェル、2月25日ではウォーレス、しかし3月3日ではホエッツェルに戻り、12月19日はウォーレスで、以降はずーっとウォーレスである。どうもかみ合わない。
メンバーの移動について見れば、もう一人ワシントン時代からの盟友オットー・ハードウィックである。彼は2月27日の吹込みには参加しているが翌日28日には不参加。Historyでは7月17日から、Ellingtoniaでは7月29日から復帰している。
次に柴田氏は、マネージャー、アーヴィング・ミルズがレコード会社を設立した。2つのレーベルの内「マスター」レーベルにはオーケストラ、「ヴァラエティ」レーベルにはコンボを録音したとある。Historyには初録音時のレーベルの記載がなく、Ellingtoniaはどちうらも「マスター」レーベル、”Columbia years”では、コンボは「ヴァラエティ」レーベルと記載されているが、ミルズのレコード会社の音源は1曲しか収録されていない。
柴田氏によれば、Tpのクーティ・ウィリアムスはこの時期絶頂期を迎えたという。一音たりとも破綻がなく、間を測りながらの創造的な吹奏はすごみさえ感じさせるという。

History盤CD 40枚組の8セット目

<Contents>…Ellingtonia、History … 1936年1月20日 シカゴにて録音(ARC)

CD16-13.アイ・ドント・ノウ・ホワイ・アイ・ラヴ・ユー・ソーI don’t know why I love you so
CD16-14.ダイナ・ルーDinah Lou

<Personnel>…デューク・エリントン・アンド・ヒズ・オーケストラ (Duke Ellington & his Orchestra)

Band leader & Pianoデューク・エリントンDuke Ellington
trumpetアーサー・ウェッツェルArthur Whetselクーティ・ウィリアムスCootie Williamsレックス・スチュアートRex Stewart
Tromboneジョー・”トリッキー・サム”・ナントンJoe “Tricky Sam” Nantonローレンス・ブラウンLawrence Brown
Valve‐Tromboneファン・ティゾールJuan Tizol
Clarinet , Soprano & Alto saxジョニー・ホッジスJohnny Hodges
Clarinet , Alto & Bass saxオットー・ハードウィックOtto Hardwick
Clarinet & Tenor saxバーニー・ビガードBarney Bigard
Clarinet , Soprano & Baritone saxハリー・カーネイHarry Carney
Banjo & Guitarフレッド・ガイFred Guy
String Bassビリー・テイラーBilly Taylor
Drumsソニー・グリアSonny Greer
Vocalアイヴィー・アンダーソンIvie Anderson

HistoryとEllingtoniaとのパーソネルの違いは、Historyはこの録音に関してはTbのローレンス・ブラウンがいないとしているのに対してEllingtoniaは参加しているというところだけである。

Ellingtoniaによれば、この日に先立つ1月3日に3曲ほど録音をしているがそれはすべて破棄され、この日のレコーディングが行われたという。そしてこの録音はダブル・ベースではなくビリー・テイラーだけが加わっている。

CD16-13.「アイ・ドント・ノウ・ホワイ・アイ・ラヴ・ユー・ソー」はゆったりとしたテンポのメロウなナンバー。
CD16-14.「ダイナ・ルー」は、アイヴィー・アンダーソンのヴォーカル入り。

History盤CD 40枚組の16枚目

1936年の次の録音は、1か月余り後の2月末に行われる。日付としては2月27日と28日であり、2日間にわたる同一セッションととらえてよいだろう。

<Contents>…Ellingtonia、History … 1936年2月27、28日 ニューヨークにて録音(ARC)

CD16-15.イズント・ラヴ・ザ・ストレンジスト・シングIsn’t love the strangest thing2月27日
CD16-16.ノー・グレーター・ラヴ(There is) No greater love 2月27日
CD16-17.クラリネット・ラメント(バーニーズ・コンチェルト)Clarinet lament(Barney’s concerto)2月27日
CD16-18.エコーズ・オブ・ハーレム(クーティーズ・コンチェルト)Echoes of harlem(Cootie’s concerto)2月27日
CD16-19.ラヴ・イズ・ライク・ア・シガレットLove is like a cigarette2月28日
CD16-20.キッシン・マイ・ベイビー・グッド・ナイトKissin’ my baby good night2月28日
CD17-1.オー・ベイビー!・メイビー・サムデイOh baby ! maybe someday2月28日

<Personnel>…デューク・エリントン・アンド・ヒズ・オーケストラ (Duke Ellington & his Orchestra)

パーソネルが少々ややこしい。
CD16-15.「イズント・ラヴ・ザ・ストレンジスト・シング」は、1月20日と同じメンバー。
CD16-16.「ノー・グレーター・ラヴ」は、ほとんど同じだが、ベースだけがビリー・テイラーからヘイズ・アルヴィスに代わるのである。
そしてCD16-17.「クラリネット・ラメント」とCD16-18.「エコーズ・オブ・ハーレム」は、ベースがそのままアルヴィスで、オットー・ハードウィックが抜けるのである。
そして翌日の録音には、ハードウィックは初めから参加しておらず、ピート・クラークというアルト・サックス奏者が加わる。
CD16-19.「ラヴ・イズ・ライク・ア・シガレット」でのベースはアルヴィス一人であるが、
CD16-20.「キッシン・マイ・ベイビー・グッド・ナイト」とCD17-1.「オー・ベイビー!・メイビー・サムデイ」ではビリー・テイラーも加わり、ツイン・ベースとなるのである。
これまでのエリントンの録音は、基本的に1セッションは同一メンバーで行ってきたのに対し、かなりの変わりようである。

CD16-15.「イズント・ラヴ・ザ・ストレンジスト・シング」もアンダーソンの歌入り。
CD16-16.「ノー・グレーター・ラヴ」は今でも奏されるアイシャム・ジョーンズ作のスタンダード・ナンバー。非常にオーソドックスなアレンジでこの曲の演奏のスタンダードを作ったような気がする。
CD16-17.「クラリネット・ラメント(バーニーズ・コンチェルト)」は、冒頭記載した個人技を十二分に発揮させるため、その人のために書いた最初の作品。ゆったりとしたテンポで全面にビガードのクラリネットがフューチャーされる。
CD16-18.「エコーズ・オブ・ハーレム(クーティーズ・コンチェルト)」は、個人フューチャーものの第2弾。全盛期を迎えつつあったクーティーに焦点を当てるとあって、この面でも最大1、2を争う聴きものとなっている。クーティーはオープンで、ミュートで単に早吹きではなくじっくりと取り組んでいる感じがする。しかし何故かこの曲からハードウィックが抜けるのである。
CD16-19.「ラヴ・イズ・ライク・ア・シガレット」とCD16-20.「キッシン・マイ・ベイビー・グッド・ナイト」、CD17-1.「オー・ベイビー!・メイビー・サムデイ」は、アンダーソンのヴォーカル入り。「オー・ベイビー!」だけがエリントンの作でちょっとテンポを速めに取ったスインギーなナンバーに仕上がっている。ホッジス、クーティーのソロも面白い。

ディスコグラフィーを見ると、5月に放送用の録音をしたようだが、レコーダ化はされなかったようである。次にCDに収録されているのは、7月にニューヨークで行われたセッションとなる。

History盤CD 40枚組の9セット目

<Contents>…Ellingtonia、History …1936年7月17日 ニューヨークにて録音(ARC)

CD17-2.シュー・シャイン・ボーイShoe shine boy
CD17-3.イット・ウォズ・ア・サッド・ナイト・イン・ハーレムIt was a sad night in harlem
CD17-4.トランペット・イン・スペイド(レックスズ・コンチェルト)Trumpet in spades (Rex’s concerto)
CD17-5.ヤーニング・フォー・ラヴ(ローレンシズ・コンチェルト)Yearning for love(Lawrence’s concerto)

<Personnel>…デューク・エリントン・アンド・ヒズ・オーケストラ (Duke Ellington & his Orchestra)

この日は4曲とも同じメンバーによって録音されている。Historyではアルト・サックスがオットー・ハードウィックとしているのに対して、Ellingtoniaではピート・クラークが加わったとしている。ヴォーカルはアイヴィー・アンダーソン。

CD17-2.「シュー・シャイン・ボーイ」は、当時のヒットナンバーでアンダーソンの歌入り。この後になるが、フレッチャー・ヘンダーソン楽団も取り上げ、そこではロイ・エルドリッジが味のあるヴォーカルを聴かせることになる。
CD17-3.「イット・ウォズ・ア・サッド・ナイト・イン・ハーレム」もアンダーソンの歌入りのスロウ・ナンバー。じっくりと聴かせてくれる。
CD17-4.「トランペット・イン・スペイド(レックスズ・コンチェルト)」個人フューチャー第3弾。同じTpだが、こちらはアップ・テンポでテクニックを余すところなく披露している。
CD17-5.「ヤーニング・フォー・ラヴ(ローレンシズ・コンチェルト)」は、個人フューチャー第4弾。油井正一氏が「大阪弁のトロンボーン」と呼んだローレンス・ブラウンがフューチャーされる。ヒギンバサムのように豪快ではなく、トミー・ドーシーのように甘くなく、ジョー・ナントンのようにトリッキーでもなく、実に中庸を行くプレイで、どこが「大阪弁」なのか僕には分からないのだが。

<Contents>…History …1936年7月29日 ニューヨークにて録音(ARC)

CD17-6.イン・ア・ジャムIn a jam
CD17-7.エキスポジション・スイングExposition swing
CD17-8.アップタウン・ダウンビート(ブラックアウト) Uptown downbeat(Blackout)

<Personnel>…デューク・エリントン・アンド・ヒズ・オーケストラ (Duke Ellington & his Orchestra)

メンバーにTenor saxのベン・ウエブスターが加わったということではHistory、Ellingtoniaとも一致しているが、Ellingtoniaによれば、CD17-7.「エキスポジション・スイング」のみビリー・テイラーとヘイズ・アルヴィンのツィン・ベースだとしている。

CD17-6.「イン・ア・ジャム」は、エリントン作。アルト(多分ホッジス)とTpの2小節ずつのソロ交換などいろいろな工夫がみられる。そしてウエブスターのソロなど短いがソロ交換が多い。それで「ジャムで」ということか?
CD17-7.「エキスポジション・スイング」CD17-8.「アップタウン・ダウンビート(ブラックアウト)」ともエリントン作。どちらも短いソロが目まぐるしく展開する。

次の録音は約4か月半後の12月中旬、カリフォルニアのハイウッドで行われる。巡業の途中での録音だったのだろうか?

History盤CD 40枚組の17枚目

<Contents>…History …1936年12月16日 ハリウッドにて録音(Master)

CD17-9.リグザシャスRexatious
CD17-10.レイジー・マンズ・シャッフルLazy man’s shuffle

<Personnel>…レックス・スチュワート・アンド・ヒズ・フィフティ・セカンド・ストリート・ストンパーズ(Rex Stewart and his fifty second street stompers)

Band leader & Pianoデューク・エリントンDuke Ellington
trumpetレックス・スチュアートRex Stewart
Tromboneローレンス・ブラウンLawrence Brown
Soprano & Alto saxジョニー・ホッジスJohnny Hodges
Clarinet & Baritone saxハリー・カーネイHarry Carney
Guitarブリック・フリーグルBrick Fleagle
String Bassビリー・テイラーBilly Taylor
Drumsジャック・マイセルJack Maisel

レックス・スチュワート名義で「マスター」レーベルへの吹込み。柴田氏によれば「マスター」レーベルはビッグ・バンドのはずだが、Ellingtoniaには8名のコンボでも「マスター」と記載してある。レックス・スチュワート名義の録音だが、実質的なリーダーはデュークであろう。
ギターがフレッド・ガイではなくHistoryではブリック・フリーグル、Ellingtoniaではシール・バーク(Ceele Burke)となっており、ドラムがHistoryではジャック・マイセル、Ellingtoniaではソニー・グリアとなっている。どちらが正しいかいつもながら判断できない。曲はどちらもスチュワートオリジナル。CD17-10.「レイジー・マンズ・シャッフル」では、スチール・ギターのような音が聴かれる。

<Contents>…Ellingtonia、History …1936年12月19日 ハリウッドにて録音(Master)

CD17-11.クラウズ・イン・マイ・ハートClouds in my heart
CD17-12.フロリック・サムFrolic Sam
CD17-13.キャラヴァンCaravan
CD17-14.ストンピー・ジョーンズStompy Jones

<Personnel>…バーニー・ビガード・アンド・ヒズ・ジャゾペイターズ (Barney Bigard and his jazzopators)

Band leader & Pianoデューク・エリントンDuke Ellington
trumpetクーティ・ウィリアムスCootie Williams
Valve-Tromboneファン・ティゾールJuan Tizol
Clarinetバーニー・ビガードBarney Bigard
Baritone saxハリー・カーネイHarry Carney
String Bassビリー・テイラーBilly Taylor
Drumsソニー・グリアSonny Greer

3日後に行われた吹込みはバーニー・ビガード名義となっている。
CD17-11.「クラウズ・イン・マイ・ハート」はビガードの作。覚えやすいいい曲だと思う。クーティのソロがやはり聴き応えがある。
CD17-12.「フロリック・サム」は、クーティ、ビガード、カーネイと短いが聴き応えのあるソロである。
CD17-13.「キャラヴァン」はファン・ティゾール作の名作。初めはビガードのバンド名義で録音されたというのは驚きだ。
CD17-14.「ストンピー・ジョーンズ」は、エリントンの作。

<Contents>…Ellingtonia、History …1936年12月21日 ハリウッドにて録音(Master)

CD17-15.スキャッティン・アット・ザ・コットン・クラブScattin' at the cotton club
CD17-16.ブラック・バタフライBlack butterfly
CD17-17.ムード・インディゴ・アンド・ソリチュードMood indigo and solitude
CD17-18.ソフィスティケイティッド・レイディ・アンド・イン・ア・センチメンタル・ムードSophisticated lady and in a sentimental mood

<Personnel>…デューク・エリントン・アンド・ヒズ・オーケストラ (Duke Ellington & his Orchestra)

Historyでは、Trumpetがアーサー・ホエッツェルからウォーレス・ジョーンズ(Wallace Jones)に変わったとするが、Ellingtoniaでは引き続きアーサー・ホエッツェルだとしている。
またAlto saxはHistoryではハードウィック、Ellingtoniaではピート・クラークとしている。
また双方ともギターはフレッド・ガイとしているが、なぜ5日前のセッションではブリック・フリーグル(History)、シール・バーク(Ellingtonia)を起用したのだろう?

CD17-17.「ムード・インディゴ・アンド・ソリチュード」とCD17-18.「ソフィスティケイティッド・レイディ・アンド・イン・ア・センチメンタル・ムード」は、デュークが自身の代表作をピアノ・ソロでメドレーで弾いている。当時として珍しいのではないかと思う。

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ジャズ・ディスク・ノート 2019年6月11日

第328回アンディ・カーク、メリー・ルー・ウィリアムス&リル・アームストロング 1936年

No.328 Andy Kirk , Mary Lou Williams & Lil Armstrong 1936”

ご覧いただきありがとうございます。引退オジサン<のたり庵>のジャズ学習帳です。
アンディ・カークについて、僕が勝手に師事する粟村政昭氏は、「その昔彼の率いるオーケストラは、カンサス・シティ在住のバンドでありながら、ベニー・モーテンに代表されるリフ中心のジャンプ・バンドには聴かれない洒落たアレンジの数々のアレンジを用い、力強さと野暮ったさで売ったカンサス・シティ・グループの中で一際異彩を放つ存在となっていた。
この功績は主としてピアニスト兼アレンジャーであったメリー・ルー・ウィリアムスの手に帰すべきものであったが、テナーを吹いていたディック・ウィルソンもまたこのバンドの重要なソロイストに一人であった。
カークは自己のバンドを”Clouds of joy”という変わった名で呼び、30年にはジャック・カップとの契約が出来てブランズウィックに十数曲の演奏を吹き込んだが、この頃のカークのバンドはどちらかというと、まだ泥臭い田舎育ちに印象を抜けきってはいなかった。カークのバンドが真にジャズ史に残る名演を残すようになったのは、6年後にデッカへ録音を行い始めてからのことで、(中略)常に寛ぎを忘れぬスマートなKCスタイルを創造した点でカーク楽団の功績は永久に讃えられてよい。」と高く評価しているが、今日日本のレコード・ショップなどでアンディ・カークのレコードを見かけることはほとんどないと言っていい。誠に残念なことである。
僕自身このHPを書いている時に、ミュージシャンのプロフィールを調べると、「アンディ・カークのバンドに在籍云々」という記載を見ることがあり、名前は知っていたがレコードは、今回紹介するオムニバス以外に持っていない。
またメリー・ルー・ウィリアムスも、粟村氏の名著『ジャズ・レコード・ブック』は183名のジャズマンを取り上げている中で唯一の女性器楽奏者である。その中で粟村師は次のように彼女を紹介する。
「ジャズ史上最高の女性器楽奏者と言われる彼女は、かつてアンディ・カークのバンドに提供した優れたアレンジの数々と”Lady who swings the band”と讃えられた簡潔でブルース・フィーリング溢れたピアノ・ソロによってスイング・イーラに忘れられない足跡を残した。
彼女はアール・ハインズから大きな影響を受けブギー並びにブルースの名手として名を成したが、時代の変遷と共に(中略)モンクやバド・パウエルの影響さえ巧みに消化して我々を驚かせた。(中略)また、ランスフォード、BG、ノーヴォ、エリントンといった有力バンドに提供した彼女のアレンジの素晴らしさについてもご存知の方は多いに違いない」と。そして彼女のアルバムというのも残念ながら、そうそうは見かけないのである。僕は今日紹介するものの他にはレコード片面分、CDも1枚しか持っていない。
僕は、これからも、レコード・ショップに行った際には彼らのレコード或いはCDを見かければ買って聴きたいと思っている。


「MCAジャズの歴史」 MCA records VIM-17〜19

<Contents> … 1936年3月2日 ニューヨークにて録音

Record2B面4.ウォーキン・アンド・スインギンWalkin’ and swingin’

<Personnel> … アンディ・カークと彼のトゥエルヴ・クラウズ・オブ・ジョイ(Andy Kirk and his twelve clouds of joy)

Band leader & Baritone saxアンディ・カークAndy Kirk
Trumpetハリー・ロウソンHarry Lawsonポール・キングPaul Kingアール・トムソンEarl Thomson
Tromboneテッド・ドネリーTed Donnelly
Alto Saxジョン・ウィリアムスJohn Williamsジョン・ハリントンJohn Harrington
Tenor saxディック・ウィルソンDick Wilson
Pianoメリー・ルー・ウィリアムスMary Lou Williams
Guitarテッド・ロビンソンTed Robinson
Bassブッカー・コリンズBooker Collins
Drumsベン・シグペンBen Thigpen

「MCAジャズの歴史」に取り上げられたこの曲は、アンディ・カーク全盛時代の名演の一つに数えられているものである。作・編曲はもちろんメリー・ルー・ウィリアムス。力強くノリを生み出すリフと複雑なアンサンブルがうまくかみ合い他のバンドとは一線を画した興味深い演奏が聴ける。メリーのPソロ、実に短いが名手ウィルソンのTsソロが素晴らしい。
因みにレコード解説で、ギター奏者の名が、「テッド・ブリンソン」となっているが、どうググってもそういうギター奏者はおらず、他の解説書などでは「テッド・ロビンソン」となっているので、レコード解説の誤りだろうと思う。

<Contents> … 1936年3月7日 ニューヨークにて録音

Record2B面5.オーヴァーハンドOverhand

<Personnel> … メリー・ルー・ウィリアムス (Mary Lou Williams)

Pianoメリー・ルー・ウィリアムスMary Lou Williams
Bassブッカー・コリンズBooker Collins
Drumsベン・シグペンBen Thigpen

上記アンディー・カークの録音の5日後、リズム・セクションのトリオで吹き込まれた。といってもBとDsの音はほとんど聴こえず解説を見ないとPソロだと思ってしまうのではないかと思う。女性とは思えぬ力強いブギー・ウギーである。

<Contents> … 11936年10月27日 シカゴにて録音

Record2A面3.ジャスト・フォー・ア・スリルJust for a thrill

<Personnel> … リル・アームストロングと彼女のスイング・バンド(Lil Armstrong and her swing band)

Band leader & Vocalリル・アームストロングLil Armstrong
Trumpetジョー・トーマスJoe Thomas
Clarinetバスター・ベイリーBuster Bailey
Tenor saxチュー・ベリーChu Berry
Pianoテディ・コールTeddy Cole
Guitarヒューイ・ロングHuey Long
Bassジョン・フレイジアJohn Frazier

同レコード・ボックスに久しぶりに登場する女性ミュージシャンの吹込みがあったのでここで取り上げておこう。その名は「リル・アームストロング」で、ご存知ルイ・アームストロングの奥方である。ルイとは1931年から別居しているが、この時点ではまだ奥方である。彼女については、ルイとの共演盤をこれまで取り上げてきたが、彼女を中心に置いての紹介は初めてである。
彼女は、ルイとの共演ではピアノを弾いていたが、ここではピアノをテディ・コールに任せ、ヴォーカルを取っている。メンバーもTpのトーマス、Clのベイリー、Tsのベリーと素晴らしいメンツが揃った。彼女のヴォーカルを解説氏は、「この時代としては超一流。ヴァイタルでスイング感も満点」とべた褒めしているが、僕にはそうは思えない。何となく落ち着きが悪いヴォーカルである。

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ジャズ・ディスク・ノート 2019年6月8日

第327回 ボブ・クロスビー 1936年

No.327 Bob Crosby 1936”

ご覧いただきありがとうございます。引退オジサン<のたり庵>のジャズ学習帳です。
ビッグ・バンド全盛期の1930年代で、僕が最も興味を引かれたバンドは、前にも書いたが「グレン・グレイとカサ・ロマ・オーケストラ」ともう一つはこの「ボブ・クロスビーのオーケストラ」及びピックアップ・メンバーによる「ボブ・キャッツ」であった。
何故か?他のバンドが、特に白人バンドがどちらかといえばダンサブルで、洗練された演奏を目指したと思われる1930年代後期において、何とディキシーを演奏したからである。ビリー・ホリディが参加したことでも有名なテディ・ウィルソンの一連のブランズウィック・セッションの解説で、大橋巨泉氏などはちょっと古めかしい演奏を「コーニーだ!」と切り捨てている時代である。そこに敢えて一昔のスタイル「ディキシー」を標榜していくバンドがあったということに正直驚くのである。しかもそのリーダーが、洗練されたクルーナー・スタイル・ヴォーカルの確立者と言われるかのビング・クロスビーの弟というのだから、驚きは大きい。
このバンド設立の経緯などは、ジャズ評論界の重鎮瀬川昌久氏が詳述しているので、以降少しずつ紹介していきたいと思うが、今回は僕が勝手に師と仰ぐ粟村政昭氏の『ジャズ・レコード・ブック』における記述の抜粋を揚げておこう。曰く、
「スイング・ジャズの全盛時代にディキシーを演奏する大編成のバンドとして、ボブ・クロスビーと彼の一党が残した功績は長く記憶されてよいユニークなものであった。」


「ボブ・クロスビー・オーケストラ」 MCA-3145 日本盤

<Personnel> … ボブ・クロスビー・アンド・ヒズ・オーケストラ (Bob Crosby and his orchestra)

Band leaderボブ・クロスビーBob Crosby
Trumpetフィル・ハートPhil Hartヤンク・ローソンYank Lawson
Tromboneウォード・シロウェイWard Sillowayアーティー・フォスターArtie Foster
Clarinet & Alto Saxギル・ロディンGil Rodinマッティ・マトロックMatty Matlock
Alto Saxノニ・ベルナルディ Noni Bernardi
Clarinet & Tenor Saxエディ・ミラーEddie Miller
Tenor sax and arrangementディーン・キンケイドDean Kincaide
Pianoギル・バウアーズGil Bowers
Guitarナッピー・ラメールNappy Lamare
Bassボブ・ハガートBob Haggart
Drumsレイ・ボデュークRay Bauduc

<Contents> … 1936年4月13日 ニューヨークにて録音

A面2.ディキシーランド・シャッフルDixieland shuffle

現状僕が持っているボブ・クロスビー楽団の1936年の吹込みはこの1曲だけである。解説に拠ればこの曲は、バンドのオリジナルで、作者はラメール、ロディン、マトロック、ハガートの4人、アレンジはハガートという。この曲を録音した4月13日にはもう1曲、ディキシーのスタンダード「マスクラット・ランブル(Muskrat ramble)」が録音され、この2曲がバンド初のディキシーランド・ジャズの吹込みとなったという。ということはこれ以前はディキシーを演奏していなかったということだろうか?
まず聴いてみて、強烈なディキシー風というわけではない。ただ何となくユニークなのである。で、どこがユニークかといえばやはりどことなく「ディキシー」の風が吹いているといった感じなのである。当時の人々はこういう演奏で踊れたのだろうか?

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ジャズ・ディスク・ノート 2019年6月6日

第326回 ジミー・ランスフォード 1936年

No.326 Jimmy Lunceford 1936 Vol.4”

“Jimmy Lunceford / Harlem shout” History 20.1913−HI 輸入CD2枚組

<Personnel> … ジミー・ランスフォード・アンド・ヒズ・オーケストラ (Jimmy Lunceford and his Orchestra)

Band leader & Directionジミー・ランスフォードJimmy Lunceford
Trumpetエディー・トンプキンスEddie Tompkinsポール・ウエブスターPaul Websterサイ・オリヴァーSy Oliver
Tromboneラッセル・ボウルズRussell Bowles
Trombone & Guitarエディー・ダーハムEddie Durham
Clarinet & Alto Saxウィリー・スミスWillie Smith
Alto Saxラフォーレ・デントLaforet Dentダン・グリッソンDan Grisson
Tenor Saxジョー・トーマスJoe Thomas
Baritone Saxアール・カルザーズEarl Carruthers
Pianoエド・ウィルコックスEd Wilcox
Guitarアル・ノリスAl Norris
Bassモーゼズ・アレンMoses Allen
Drums , Vibraphone & Bellsジミー・クロフォードJimmy Crawford

<Contents> … 1936年 ニューヨークにて録音

CD1-2.オルガン・グラインダーズ・スイングOrgan Grinder’s swing8月31日
CD1-3.ハーレム・シャウトHarlem shout10月14日

僕の持っているジミー・ランスフォーだ楽団の1936年の録音は上記の2曲である。すごいのは前回録音は35年5月29日であり、1年以上たっているのに、メンバーの移動がないのである。
CD1-2.「オルガン・グラインダーズ・スイング」は、後にジミー・スミスがレコーディングして大ヒットとなるが、この年の11月にチック・ウェッブも録音をしている。オリヴァーの手の込んだアレンジが聴き処であろう。何となく牧歌的な感じのするアレンジである。クロフォードのベルなども効果的だ。
CD1-3.「ハーレム・シャウト」は、実にスインギーなナンバー。ここでもオリヴァーの複雑なアレンジが聴ける。奏するほうは難しいだろうなぁと思ってしまう。

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ジャズ・ディスク・ノート 2019年6月5日、6月7日訂正

第325回トミー・ドーシー・オーケストラ 1935・36年

No.325 Tommy Dorsey Orchestra 1935・36

ご覧いただきありがとうございます。定年オジサン<のたり庵>のジャズ学習帳です。

今の若い方には「なんのこっちゃ?」と言われるかもしれないが、僕がジャズを聴き始めた1968年頃は、既に本人は亡くなっていたがコルトレーン旋風が吹きすさび、マイルスの電化が喧々囂々の論争を巻き起こしていたが、一方では古き良きスイング時代の香りもまだかすかに残っていた。そんなスイング時代の白人三大バンドといえば「ベニー・グッドマン」、「グレン・ミラー」そしてこの「トミー・ドーシー」の楽団であった。

[センチメンタル・ジェントルマン]トミー・ドーシーに関して前回は、兄と組んだ「ドーシー・ブラザーズ」の1935年の録音を取り上げた。このジミーとトミーの「ドーシー・ブラザーズ」は、1935年春グレン・アイランド・カジノに出演中些細な意見の対立から、トミーはバンドを去る。トミーはジョー・ヘイムズのバンドをそっくりそのまま引き受け、補強も行い、彼の考えるカラーにバンドをスタイル・チェンジしてトミー・ドーシー・オーケストラとして名乗りを上げたのは1935年秋のことだった。極めて素早い動きだったと思う。
そして同年にはRCAヴィクターとレコーディングの専属契約を結ぶ。以後13年間に約560曲もの吹込みをヴィクターに行ったというが、その中から28曲が選ばれて「オリジナル・トミー・ドーシー・ベスト・コレクション」に収録されているが、これは彼のヴィクターへの吹込みの1/20である。
トミーのバンドのジャズを意識した演奏は、当時最も人気のあった「ベニー・グッドマン楽団」であったが、トミー自身はスイング・リズムを持ったスイート・ミュージックを好んだため、女性ファン、ダンス・ファンの人気を集め、人気のほどはベニー・グッドマン楽団に肉薄していたと言われる。
故粟村政昭氏は『ジャズ・レコード・ブック』において、1936、7年ごろが、マックス・カミンスキー、バド・フリーマン、ディヴ・タフ、それに偉大なるトランぺッターバニー・ベリガンを擁し第1期黄金時代であると述べている。

「オリジナル・トミー・ドーシー・ベスト・コレクション」RCA RA-9007-08 日本盤

<Contents> … 1935年9月26日 ニューヨークにて録音

record1.A-2ウエアリー・ブルースWeary blues

<Personnel> … トミー・ドーシー・アンド・ヒズ・オーケストラ (Tommy Dorsey and his orchestar)

Band leader & Tromboneトミー・ドーシー
Trumpetアンディ・フェレッチAndy Ferrettiスターリング・ボーズSterling Boseビル・グラハムBill Grahamクリフ・ウエストンCliff Weston
Tromboneベン・ピカリングBen Pickeringデイヴ・ジェイコブスDave Jacobs
Clarinet & Alto saxシド・ストーンバーンSid Stoneburn
Alto saxノニ・ベルナルディNoni Bernardi
Alto & Tenor saxクライド・ラウンズClyde Rounds
Tenor saxジョニー・ヴァントプスJohnny Vantps
Pianoポール・ミッチェルPaul Mitchell
Guitarマック・チークスMac Cheiks
Bassジーン・トラクスラーGene Traxler
Drumsサム・ローゼンSam Rosen

同LP2枚組に収録されたもっとも初期の演奏である。レコードに付されたディスコグラフィーの記載には疑問がある。 レコード1.A面1曲目には看板曲「センチになって」の1940年11月11日の録音が収録されているのだが、そのパーソネルが上記となっていて、1935年9月26日録音の同曲も同じメンバーによるとなっている。ところがレコード2.B面4曲目に同日録音の別曲が収録されており、まったく違うパーソネルが記載されているのである。時期から考えてこの録音のパーソネルは上記通りで、レコード1.A面1曲目には看板曲「センチになって」のパーソネルが誤っていると思われる。
これがバンドをたたまざるを得なくなったジョー・ヘイムズから引き継いだメンバーなのだろう、こう言っては何だが、よくまぁこれだけ無名の三流のミュージシャンを集めたものである。全15名中『ジャズ人名事典』に載っているのは、当のドーシーとTpのボーズのみである。また、これまでに登場したことがあるのはこの2人とリードのシド・ストーンバーンの3人しかいない。
さて演奏であるが、ドーシー・ブラザーズ時代に吹き込んだことがあるというが、何といっても1927年のルイ・アームストロングの名演が思い浮かぶ。それはともかくこちらは、かなり速いテンポで奏される当時の典型的なホット・ナンバーに仕立て上げている。ストーンバーンのCl、ミッチェルのP、トミーのTbソロが演奏の山場を作っているというが、ちょっと古臭いところもあるが演奏を盛り立てるローゼンのドラムも見事で、全体のアンサンブルも素晴らしい。トミーのバンドの初期の傑作の一つというが、ここまでバンドを仕込んだのはトミーの功績か?しかしここでのトミーは「センチメンタル」ではなく、かなり「ホット」である。

<Contents> … 1936年3月27日 ニューヨークにて録音

record1.A-3リズムRhythm saved the world

<Personnel> … トミー・ドーシー・アンド・ヒズ・クランベイク・セヴン (Tommy Dorsey and his Clambake seven)

Band leader & Tromboneトミー・ドーシー
Trumpetマックス・カミンスキーMax Kaminsky
Clarinetジョー・ディクソンJoe Dixon
Tenor saxシド・ブロックSid Block
Pianoディック・ジョーンズ
Guitarウィリアム・シャーファーWilliam Schaffer
Bassジーン・トラクスラーGene Traxler
Drumsディヴ・タフDave Tough
Vocalエディス・ライトEdyth Wright

前曲から半年後の録音で、Tpにカミンスキー、Drにタフを入れバンドの強化が実行された形になっている。ただしこれは『クラムベイク・セヴン』と名付けられたピック・アップ・メンバーによるもので、本体のオーケストラも同様にメンバー・チェンジが行われたのであろう。『クラムベイク・セヴン』はいささかコマーシャルなディキシー演奏を行ったと粟村師は書いているが、実際に演奏を聴いてみるとその通りインスト部分はディキシーで、ただヴォーカルの入るディキシーというのは聴いたことがなく、そういう意味ではスイングとディキシーのコラボとでも言うしかないような出来映えである。曲は1月にルイが録音した”Rhythm saved the world”で、日本タイトルは略して「リズム」というのは知らなかった。ライトは、ヴォーカルだけではなく、語りでもいい味を出している。

<Contents> … 1936年4月3日 ニューヨークにて録音

record1.A-4ロイヤル・ガーデン・ブルースRyal garden blues

<Personnel> … トミー・ドーシー・アンド・ヒズ・オーケストラ (Tommy Dorsey and his orchestar)

Band leader & Tromboneトミー・ドーシー
Trumpetマックス・カミンスキーMax Kaminskyサム・スコルニックSam Skolnickジョー・バウアーJoe Bauer
Tromboneベン・ピカリングBen Pickeringウォルター・マーキュリオWalter Mercurio
Clarinet & Alto saxジョー・ディクソンJoe Dixon
Alto saxフレッド・スタルクFred Stulcc
Alto & Tenor saxクライド・ラウンズClyde Rounds
Tenor saxシド・ブロックSid Block
Pianoディック・ジョーンズ
Guitarウィリアム・シャーファーWilliam Schaffer
Bassジーン・トラクスラーGene Traxler
Drumsディヴ・タフDave Tough

これもルイなどで有名なスタンダードのディキシー・ナンバー。ここでは豪快かつワイルドなビッグ・バンド・ジャズに仕上げているとは解説氏。しかし曲調がディキシーであることは覆うべくもない。トミーはディキシーが好きだったのだろうか?通して聴くと不思議なナンバーだ。

<Contents> … 1936年4月15日 ニューヨークにて録音

record1.A-5スターダストStardust
record1.A-6コッドフィッシュ・ボールAt the codfish ball

<Personnel> … トミー・ドーシー・アンド・ヒズ・オーケストラ (Tommy Dorsey and his orchestar)

Band leader & Tromboneトミー・ドーシー
Trumpetマックス・カミンスキーMax Kaminskyサム・スコルニックSam Skolnickジョー・バウアーJoe Bauer
Tromboneベン・ピカリングBen Pickeringウォルター・マーキュリオWalter Mercurio
Pianoウォルター・ジョーンズWalter Jones/td>
Guitarウィリアム・シャーファーWilliam Schaffer
Bassジーン・トラクスラーGene Traxler
Drumsディヴ・タフDave Tough

<Personnel> … トミー・ドーシー・アンド・ヒズ・クランベイク・セヴン (Tommy Dorsey and his Clambake seven)

下記以外3月27日と同じ。
Tenor sax … シド・ブロック ⇒ バド・フリーマン Bud Freeman

A-5「スターダスト」のパーソネル表記が正しければ、クラリネット、サックスというホーンが全く加わっていないことになっているが、どう聴いてもアンサンブルにはホーンが加わっているようにしか聴こえない。
当時ビッグ・バンドが競って録音していたというホーギー・カーマイケルの名歌曲。出だしのTbが美しい音色を響かせる。ライトのヴォーカルもグッドである。
A-6.「コッドフィッシュ・ボール」はポピュラー・ソングで、クラムベイク・セヴンによる傑作の一つ。このバンドはピック・アップなので、バド・フリーマンは本体オーケストラにも加わっているのだろう。これは楽しいディキシーでライトのヴォーカルが良いし、フリーマンのソロ、カミンスキーのTpもさすがの出来映え。

<Contents> … 1939年10月18日 ニューヨークにて録音

record1.A-7メイプル・リーフ・ラグMaple leaf rag

<Personnel> … トミー・ドーシー・アンド・ヒズ・オーケストラ (Tommy Dorsey and his orchestar)

下記以外4月15日と同じ。
Trumpet … サム・スコルニック ⇒ スティーヴ・リプキンス Steve Lipkins Trombone … ベン・ピカリング ⇒ リー・ジェンキンス Lee Jenkins

ご存知スコット・ジョプリン作のラグタイムの傑作。こういうピアノ曲に挑戦するというのは素晴らしい。実に聴き応えがある作品に仕上がった。

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ジャズ・ディスク・ノート 2019年5月30日

第324回 グレン・グレイとカサ・ロマ・オーケストラ 1936年

No.324 Glen Gray & his Casa Loma Orchestra 1936

ご覧いただきありがとうございます。定年オジサン<のたり庵>のジャズ学習帳です。
今回は1936年のカサ・ロマ・オーケストラを取り上げよう。僕の持っているHEP盤のCDには、1935年の録音が1曲も入っていないので、1934年以来2年1か月ぶりの録音となる。

Casa Loma Orchestra “Maniac’s ball”HEP CD 1051 AAD

<Personnel> … グレン・グレイとカサ・ロマ・オーケストラ(Glen Gray and his Casa Loma Orchestra)

Band leader & Alto saxグレン・グレイGlen Gray
Trumpetソニー・ダンハムSonny Dunhamグラディ・ワッツGrady Wattsボビー・ジョーンズBobby Jones
Trombone & Vocalピー・ウィー・ハントPee Wee Huntフリッツ・ハンメルFritz Hummel
Tromboneビリー・ローチBilly Rauch
Alto sax & Clarinetクラレンス・ハッチェンライダーClarence Hutchenrider
Alto sax , Oboe & Basoonアート・ラルストンArt Ralston
Alto sax & Vocalケニー・サージャントKenny Sargent
Tenor saxパット・デイヴィスPat Davis
Violinメル・ジャンセンMel Jensen
Pianoジョー・ホース・ホールJoe “Horse” Hall
Guitarジャック・ブランシェットJack Blanchette
Tuba & Bassスタンレー・デニスStanley Dennis
Drumsトニー・ブリグリアTony Briglia
Vocalジャック・リッチモンドJack Richmond

上記のメンバーは前回1934年5月の録音時から変更がない。これはこの時代大変珍しいことである。

<Contents> … 1936年6月10日ニューヨークにて録音

CD21.コペンハーゲンCopenhagen
CD22.ロイヤル・ガーデン・ブルースRoyal garden blues
CD23.リオ・グランデのバラRose of the Rio Grande
CD24.ジャングル・ジッターズJungle jitters
CD25.ビューグル・コール・ラグBugle call rag

この日の収録曲は割と古い曲が多いような気がする。全ての曲においてソロは極めて短くTpやTs、Cl等が入り乱れて交互に繰り出される。合奏、リフが中心の軽快なスイング・ナンバーにアレンジされている。聴いて楽しいとのしいというよりもダンサブルなナンバーに仕立て上げられている。
CD21.「コペンハーゲンは、1924年ルイ・アームストロングを擁したフレッチャー・ヘンダーソン楽団、1929年にはエルマー・ショーベルの楽団などが録音している。ヘンダーソン楽団はほぼ2ビートだった。
CD22.「ロイヤル・ガーデン・ブルース」も、サッチモやビックスが録音した古いナンバー。
CD23.「リオ・グランデのバラ」は、1922年にハリー・ウォーレン作のナンバー。1938年公開の西部劇映画のタイトル・チューンかどうかは不明。
CD24.「ジャングル・ジッターズ」も、1938年公開の短編アニメ映画と同名なのだが、関係はあるのだろうか?
CD25.「ビューグル・コール・ラグ」。これも色々な人が演っているナンバー。1936年にもベニー・グッドマンが録音している。

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ジャズ・ディスク・ノート 2019年5月29日

第323回2019年5月29日

ルイ・アームストロング入門 その28 1936年

No.323 Louis Armstrong 1936

The Chronogical “Louis Armstrong and his orchestra 1934-1936”classics 509

<Contents> … 1936年1月18日 ニューヨークにて録音

CD-21.ザ・ミュージック・ゴーズ・ラウンド・アンド・アラウンドThe music goes ‘round and around
CD-22.リズム・セイヴド・ザ・ワールドRhythm saved the world

<Personnel> … ルイ・アームストロング・アンド・ヒズ・オーケストラ(Louis Armstrong & his club orchestra )

Trumpet , Vocal & Band leaderルイ・アームストロングLouis Armstrong
Trumpetレオナード・ディヴィスLeonard Davisガス・エイキンGus Aikenルイ・ベイコンLouis Bacon
Tromboneハリー・ホワイトHarry Whiteジミー・アーチ―Jimmy Archey
Alto saxヘンリー・ジョーンズHenry Jonesチャーリー・ホルムズCharlie Holmes
Clarinet & Tenor saxビンギー・マディソンBingie Madison
Tenor saxグリーリー・ウォルトンGreely Walton
Pianoルイ・ラッセルLuis Russell
Guitarリー・ブレアLee Blair
String Bassポップス・フォスターPops Foster
Drums & Vibraphoneポール・バーバリンPaul Barbarin

ルイ・アームストロングの1936年最初の録音は、前レコーディングから1か月後の1月18日に行われた。メンバーは前録音と全く同じで、ルイ・ラッセルのバンドを従えた格好である。
CD-21.「ザ・ミュージック・ゴーズ・ラウンド・アンド・アラウンド」は、いかにもヒット狙いのポップス・チューンという感じである。しかしヴォーカル後のTpソロはさすがに見事である。
CD-22.「リズム・セイヴド・ザ・ワールド」。前曲とカップリングで発売されたようで、前曲は「音楽は巡り巡る」、本曲は「リズムが世界を救う」といった「音楽はいいもんだよ」コンセプト・レコードだったと思われるが、どうだったのだろうか?色々な曲のメロディーを借用したり楽しい曲作りを目指したのがよく分かる。

<Contents> … 1936年2月4日 ニューヨークにて録音

CD-23.アイム・プッティング・オール・マイ・エッグズ・イン・ワン・バスケットI'm putting all my eggs in one basket

<Personnel> … ルイ・アームストロング・アンド・ヒズ・オーケストラ(Louis Armstrong & his club orchestra )

Trumpet , Vocal & Band leaderルイ・アームストロングLouis Armstrong
Trumpetバニー・ベリガンBunny Beriganボブ・メイヒューBob Mayhew
Tromboneアル・フィルバーンAl Philburn
Clarinet & Baritone saxシド・トラッカーSid Trucker
Alto saxフィル・ワルツァーPhil Waltzer
Tenor saxポール・リッチPaul Ricci
Pianoフルトン・マグラスFulton McGrath
Guitarデイヴ・バーバーDave Barbour
String Bassピート・ピーターソンPete Peterson
Drumsスタン・キングStan King

本CDでもっとも残念なのは、この日行われたセッションではもう1曲(”Yes! Yes! My! My!”)レコーディングされたが、収録されていない点である。それはスイング時代最高の白人Tp奏者バニー・ベリガンが加わっているからである。ジャズ史上最高のTp奏者の一人サッチモとベリガンの共演は僕の調べた限りこの日のセッションしかないはずである。そもそもこのセッションはどうして実現したのであろうか?評論家の先生方は何故書かないのであろうか?
曲構成は、イントロのTpソロ⇒Tsソロ⇒Tpリード⇒Cl⇒ヴォーカル⇒合奏⇒Tpソロ⇒エンディングで、どちらがベリガンでどちらがルイか?あるいはどちらもルイか?どちらも豪放で奔放な芸風は被るところがあるので悩むところだが、僕は最初がベリガン、エンディングに近い方がルイだと思う。

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ジャズ・ディスク・ノート 2019年5月28日

第322回2019年5月28日

テディ・ウィルソンとビリー・ホリディ 1936年

テディ・ウィルソンのブランズウィックでの全133曲のディスコグラフィーを見ると、1936年のレコーディング・セッションは8回、31曲(内1曲は破棄)がレコーディングされているので、35年に比べると格段に増えているといえる。
その内「ザ・テディ・ウィルソン」に収録されているのは14曲、「ビリー・ホリディ物語」に収録されているのが12曲である。
「ビリー・ホリディ物語」1936年には、テディ・ウィルソンのブランズウィック・セッション以外の録音も収録されているので、ちょっとややこしくなるが今回も「テディ・ウィルソン&ビリー・ホリディ」として1項目にしようと思う。
またこれら一連の録音は、全てジョン・ハモンド氏絡みである。同じ時期のミルドレッド・ベイリーもジョン・ハモンド氏絡みであるので、本来は<テディ・ウィルソン=ビリー・ホリデイ=ミルドレッド・ベイリー>という関連で聴いていくのが良いだろうと思う。

「ビリー・ホリディ」レコード第1集」レコード・ジャケット

「ビリー・ホリディ」レコード第1集CBS SONY SOPH 61-62 日本盤 モノラル

<Personnel> … テディ・ウィルソン・アンド・ヒズ・オーケストラ(Teddy Wilson and his orchestra)

Band leader & pianoテディ・ウィルソンTeddy Wilson
Trumpetクリス・グリフィンChris Griffin
Clarinetルディ・パウエルRudy Powell
Tenor saxテディ・マクレーTeddy McRae
Guitarジョン・トルーハートJohn Truheart
Bassグラチャン・モンカーGrachan Moncur
Drumsコージー・コールCozy Cole
Vocalビリー・ホリデイBillie Holiday

<Contents> … 1936年1月30日 ニューヨークにて録音

曲名原題収録アルバム収録個所
人生は恋ありてこそLife begins when you're in love「ビリー・ホリディ物語」record1.B-8
リズム・イン・マイ・ナーザリー・ライムスRhythm in my nursery rhymes「ザ・テディ・ウィルソン」record1.B-1

1936年最初のセッションは1月30日に行われた。ディスコグラフィーによれば、上記の2曲が録音されたようである。そしてインストものは「ザ・テディ・ウィルソン」に、ヴォーカルで参加したビリー・ホリディの歌入りは「ビリー・ホリディ物語」に収録されている。パーソネルは元々1回毎に変わることを前提としたシステムなので、ああそうですかという感じだが、新顔のクリス・グリフィンは5月からBGの録音に参加しているTp奏者なので、登場としてはこちらが早い。同じくTsのテディ・マクレーも初登場。こちらは拙HPでは前回のチック・ウェッブの回で初登場している。
「人生は恋ありてこそ」。出だしのグリフィンのミュート・ソロ、それを受けて出る(ヴォーカル後も)マクレーが良い感じだ。巨泉氏はビリーもよく泣いていて(?)いいが得意なタイプの曲ではないとしている。日本ではアート・カール楽団の「スザンナ」(フォスターではない)のB面として発売され、この曲で油井正一氏はビリーを知り、一生忘れえぬ存在になったというエピソードを明かしている。
「リズム・イン・マイ・ナーザリー・ライムス」は2ビートで少々デキシー風に演奏される。わざとそういうアレンジをしているのかは分からないが、少しコーニーな感じがする。

「ザ・テディ・ウィルソン」レコード1A面

「ザ・テディ・ウィルソン」 CBS SONY SONP 50332

<Personnel> … テディ・ウィルソン・アンド・ヒズ・オーケストラ(Teddy Wilson and his orchestra)

Band leader & pianoテディ・ウィルソンTeddy Wilson
Trumpetフランキー・ニュートンFrankie Newton
Tromboneベニー・モートンBenny Morton
Clarinet & Alto saxジェリー・ブレイクJerry Blake
Guitarジョン・トルーハートJohn Truheart
Bassスタン・フィールズStan Fields
Drumsコージー・コールCozy Cole
Vocalエラ・フィッツジェラルドElla Fitzgerald

<Contents> 1936年3月17日 ニューヨークにて録音

曲名原題収録アルバム収録個所
クリストファー・コロンバスChristopher Columbus「ザ・テディ・ウィルソン」record1.A-7
オール・マイ・ライフAll my life「ザ・テディ・ウィルソン」record1.A-8

2度目の録音は7月末に行われた。ディスコグラフィーによれば、録音は全4曲、その内発売されたのは3曲で他に1曲あるはずだがそれはどちらにも収録されていない。ここで注目は、「オール・マイ・ライフ」を歌うエラ・フィッツジェラルド。チック・ウェッブ楽団専属だが、どのような手段を使ったのかジョン・ハモンド氏が連れてきたのであろう。ミルドレッドにビリー、そしてエラとハモンド氏の見る目は確かである。
「クリストファー・コロンバス」は、これまでBG、ヘンダーソン楽団のものを紹介してきた。チュー・ベリー作の当時の人気曲で、迫力あるリズム・セクションに乗って、モートン(Tb)、ウィルソン(P)、マクレー(Ts)が力強いソロを展開する。
「オール・マイ・ライフ」は、Tb、Tpの短いイントロの後に展開するウィルソンのソロがリリカルで正に本領発揮。エラのヴォーカルも若々しく、素直で伸びやかであり素晴らしい。 ヘレン・ウォードの歌ったBGヴァージョン(4月24日録音なので順序は後、バックはBGトリオ)と比べるのも面白い。

「ザ・テディ・ウィルソン」レコード・ジャケット

「ザ・テディ・ウィルソン」 CBS SONY SONP 50332-3

<Personnel> … テディ・ウィルソン・アンド・ヒズ・オーケストラ(Teddy Wilson and his orchestra)

Band leader & pianoテディ・ウィルソンTeddy Wilson
Trumpet & Vocalロイ・エルドリッジRoy Eldridge
Clarinetバスター・ベイリーBuster Bailey
Tenor saxチュー・ベリーChu Berry
Guitarボブ・レッシーBob Lessy
Bassイスラエル・クロスビーIsrael Crosby
Drumsシドニー・カットレットSidney Cattlet

<Contents> 1936年5月14日 シカゴにて録音

曲名原題収録アルバム収録個所
ブルース・イン・C・シャープ・マイナーBlues in C sharp minor「ザ・テディ・ウィルソン」record1.A-1
メアリーの子羊Mary had a little lamb「ザ・テディ・ウィルソン」record1.A-2
本当かしらToo good to be true「ザ・テディ・ウィルソン」record1.A-3
ウォーミン・アップWarmin’ up「ザ・テディ・ウィルソン」record1.A-4

1936年第3回目の録音は、5月14日シカゴのグランド・テラスに出演中だったフレッチャー・ヘンダーソン楽団の猛者共6人にウィルソンが加わるという、気心の点ではまさに理想的な形で行われた。
「ブルース・イン・C・シャープ・マイナー」は、この2枚組セットの冒頭を数るにふさわしい、というか冒頭を飾るにふさわしいキャッチ―な曲を選んだというのが正しいだろう。印象的なベースのフレーズは、一度聴いたら忘れられない。クロスビーはこの曲において名声を確立したという。クロスビーのBに注目が集まるが、印象的なベースのイントロの後に出るウィルソンのピアノも音数を減らして間を活かしたソロはまさに彼の真骨頂というべきであろう。しかし本当に素晴らしいのは、エルドリッジで前後に2コーラス吹くが、1回目が余りにエモーショナルで泣きが効いた素晴らしいソロを取ったので、もう一度取ったのではないかとさえ思える。もちろんベイリー、ベリーのソロも長が効いて効果的なものである。
また、タイトルは「C♯マイナーのブルース」というジャム・セッションで行ったことを素直にタイトルにしただけだがそもそも「C♯マイナー」もブルースというのは珍しい。なぜこのキーを選んだのかウィルソンに訊いてみたいものだ。
「メアリーの子羊」は、フレッチャー・ヘンダーソンも少し後、5月23日に録音している(第320回)。実に楽しいナンバーで、ここでのヴォーカルはエルドリッジ。テーマの後に出るベリーのTsソロがホーキンスほど唸らないホーキンス派のプレイで素晴らしい。ここではベリーが2度ソロを取るが、前曲同様ベリーが良いので、もう一度取ったのかとも思ってしまう。そういえば彼はヘンダーソン楽団での録音でもよいソロを取っていた。もちろんエルドリッジ、ベイリーも良い。
「本当かしら」は、BGトリオでは「本当じゃ良すぎる」という日本タイトルが付き、ヘレン・ウォードの歌入りであった(36年4月27日録音)。ややゆったりとしたテンポでここでもベリーが素晴らしいプレイを聴かせてくれる。当時としては長めのソロで実に聴き応えがある。次に出るウィルソンのソロもリリカルで申し分ない。そしてエルドリッジの歌い上げるソロも活きている。
「ウォーミン・アップ」は、テンポを上げてスインギーなナンバーに仕立てている。まずソロを取るのはベイリー(Cl)でこれが良い。と思っていると次に出るベリー(Ts)、エルドリッジ(Tp)、ウィルソン(p)と名人芸の連発である。
全体としてこの日のセッションは、ウィルソンのブランズウィックにおける全セッションの中でも白眉のものではないかと思われる。やはり一流のソロイストが揃うと出来映えも素晴らしいという当然といえば当然な結果になっている。ただ惜しむらくは、粟村師も書いているが録音を安上がりにするため、ほとんどがヘッド・アレンジでエンディングがディキシー風の集団合奏で締め括ることが多く、これがコーニーが感じになってしまっていることである。

「ビリー・ホリディ」レコード第1集」レコード2A面ラベル

<Personnel> … テディ・ウィルソン・アンド・ヒズ・オーケストラ(Teddy Wilson and his orchestra)

Band leader & pianoテディ・ウィルソンTeddy Wilson
Trumpetジョナ・ジョーンズJonah Jones
Alto saxジョニー・ホッジスJohnny Hodges
Clarinet & Baritone saxハリー・カーネイHarry Carney
Guitarローレンス・ルーシーLawrence Lucie
Bassジョン・カービーJohn Kirby
Drumsコージー・コールCozy Cole
Vocalビリー・ホリデイBillie Holiday

<Contents> … 1936年6月30日 ニューヨークにて録音

曲名原題収録アルバム収録個所
高嶺の花It's like reaching for the moon「ビリー・ホリディ物語」record2.A-1
想い出のたねThese foolish things「ビリー・ホリディ物語」record2.A-2
今度は貴方が泣く番よI cried for you「ビリー・ホリディ物語」record2.A-3
誰だか解る?Guess who ? 「ビリー・ホリディ物語」record2.A-4
内気な恋Why do I lie to myself about you「ザ・テディ・ウィルソン」record1.B-2

第4回目のセッションは、場所をニューヨークに戻し、歌手にビリー・ホリディを加えて6月30日に行われた。全5曲の録音で、ビリー入りの4曲は「ビリー・ホリディ物語」に、インストの1曲と何故かビリーの歌入り1曲(「誰だか解る?」)の2曲が「ザ・テディ・ウィルソン」に収録されている。つまり珍しく「誰だか解る?」は双方に収録されている(ただし「ザ・テディ・ウィルソン」では「ゲス・フー」)と英語を読んだものになっているが)。
このセッションの聴き処は、ホッジス、カーネイといったエリントニアン参加と何といってもビリーのヴォーカルである。「ビリー・ホリディ物語」解説の大和明氏は、以下のように詳細に解説してくれる。

この日のビリーのヴォーカルには、初期における彼女の唱法の特色が十分に披露されている。
例えば、A-1、2における大きくヴィブラートを付けながらフレイズの語尾を引き延ばすようにして軽く下げる独特のフレイジング。
A-1、2、3のように歌い始めを原メロディーより高い音で始める。
A-3の”every road has a turning”と歌う部分のように殆ど平坦に引き延ばしたフレイズを重ねることによって平面的な感覚をもたらす唱法。
さらにA-2では最初から平坦な調子で大胆に歌い始める。
といったやり方などである。
演奏面では、どの曲もホッジス、カーネイが良い出来を示している。 「高嶺の花」は、ハリー・カーネイがクラリネットを吹いた非常に珍しいもの。まずウィルソンがリリカルに歌い本領を発揮すると続くホッジスも負けじとロマンティックに歌い上げる。巨泉氏は「ややオーヴァーなヴィブラートが気になるが、持って生まれた感性の高さで限りない乙女の「憧れ」を見事に表現している」と述べている。この曲などは大和氏、巨泉氏の解説を読みながら味わうと楽しい。
「想い出のたね」は、最近は原題通り「ディーズ・フーリッシュ・シングス」と称されることが多いと思う。サビを吹くカーネイのBsがさすがのプレイを聴かせる。
「今度は貴方が泣く番よ」は、ビリーの十八番で、自伝によれば8コーラス歌ってサラ・ヴォ―ンをダウンさせたという。まず最初に吹くホッジスが素晴らしい。ビリーの歌唱の崩しがすごい。ヴォーカル後のウィルソンもリリカルだ。このレコードは当時1万5千枚も売れるという大ヒットを記録したという(普通は3〜4千枚程度)。
「誰だか解る?」は、カーネイがクラリネットとバリトンを持ち替える。特にクラリネットではソロも披露する。なかなか達者なソロで、大和氏はバスター・ベイリーから、巨泉氏はバーニー・ビガードからの影響が感じられるという。軽い小唄で、ビリーも気楽に歌っているという。
「内気な恋」は、短いPイントロの後、カーネイ(Bs)、ジョーンズ(Tp)、ホッジス(As)、ウィルソン(P)の短いソロが交互に奏されるナンバー。

7月10日には初めてビリー・ホリディ名義のレコーディングが行われる。当時彼女の人気のほどがよく分かる。こちらはテディ・ウィルソンとは異なりヴォカリオン・レーベル発売されたという。

「ビリー・ホリディ物語 第1集」ライナーノーツ

<Personnel> … ビリー・ホリデイ・アンド・ハー・オーケストラ(Billie Holiday and her orchestra)

Bandleader & Vocalビリー・ホリデイBillie Holiday
Trumpetバニー・ベリガンBunny Berigan
Clarinetアーティー・ショウArtie Shaw
Pianoジョー・ブシュキンJoe Bushkin
Guitarディック・マクダナフDick McDonough
Bassピート・ピーターソンPete Peterson
Drumsコージー・コールCozy Cole

<Contents> … 1936年7月10日 ニューヨークにて録音

曲名原題収録アルバム収録個所
憶えているかしら?Did I remember ?「ビリー・ホリディ物語」record2.A-5
後悔しないわNo regrets「ビリー・ホリディ物語」record2.A-6
サマータイムSummertime「ビリー・ホリディ物語」record2.A-7
ビリーのブルースBillie’s blues「ビリー・ホリディ物語」record2.A-8

この日のセッションは白黒混合で行われたが、黒人はビリーとDrのコジ―・コールの二人で他の5人は白人である。この録音の聴きものは、スイング時代最高の白人Tp奏者バニー・ベリガンが典型的な彼のスタイルの素晴らしいプレイを披露していることと、アーティー・ショウ(Cl)の参加で、後に(38年)ショウはビリーを自己のバンドの専属歌手に迎え入れている。白人バンドの専属になった黒人の苦労は彼女の自伝に詳しい。またピアノのジョー・ブシュキンもキャリア上ごく初期の録音であり貴重である。この日のビリーも周りの面子に刺激されたのかかなり大胆に崩して歌っている。
「憶えているかしら?」は、ヴォーカルの後のショウのCl、ブシュキンのP、ちょっと合奏が入りベリガンのTpがあり、またちょっとショウ、そしてビリーのヴォーカルで終わる。せっかくの面子なのでもっとソロが聴きたいと思うのは僕だけではないだろう。
「後悔しないわ」は、ショウのブレイクによるソロそしてベリガンとの絡み実に極上の演奏である。ビリー名義だとヴォーカル・スペースが大きい。コーラスに入る度に違う歌い方で入るところはさすがである。
「サマータイム」は言わずと知れたガーシュイン兄弟作のミュージカル「ポーギー・アンド・ベス」挿入歌である。この演奏を大和氏は大変興味深いとししている。それはベリガンがイントロで大胆なダーティー・トーンで始めるところであり、さらにそれに啓発されたようにビリーも大胆に低唱で始めるといったところで、才能ある者同士がお互いを啓発し合い素晴らしいコラボレーションを見せて行くところであるという。
「ビリーのブルース」は、ビリー自作曲の初吹込みであり、吹き込んだレコードでは初のブルース・ナンバーである。ビリーは、「ブルースを歌うレディ」と呼ばれたが実は余りブルースを歌っていない。しかし彼女の歌にはブルース・フィーリングが溢れているためにそう呼ばれたのであろう。そして逆にこのような本当のブルース・ナンバーをどちらかといえばスインギーなナンバーとしてこなしているところが面白い。ブギー・ウギーのリズムに乗って大胆に歌っている。

ビリー・ホリディ名義の2回目のセッションは、9月29日に行われた。

「ビリー・ホリディ」レコード第1集」レコード2B面ラベル

<Personnel> … ビリー・ホリデイ・アンド・ハー・オーケストラ(Billie Holiday and her orchestra)

Bandleader & Vocalビリー・ホリデイBillie Holiday
Trumpetバニー・ベリガンBunny Berigan
Clarinetアーヴィング・ファゾラIrving Fazola
Pianoクライド・ハートClyde Hart
Guitarディック・マクダナフDick McDonough
Bassアーティー・バーンスタインArtie Bernstein
Drumsコージー・コールCozy Cole

<Contents> … 1936年9月29日 ニューヨークにて録音

曲名原題収録アルバム収録個所
結構なロマンスA fine romance「ビリー・ホリディ物語」record2.B-1
偽れない心I can’t pretend 「ビリー・ホリディ物語」record2.B-2
数を数えて君を待つOne , two ,button your shoe「ビリー・ホリディ物語」record2.B-3
心と心でLet’s call a heart a heart「ビリー・ホリディ物語」record2.B-4

引き続き白黒混合で、中心はベリガンであろう。ファゾラとクライド・ハートの参加が面白い。ファゾラはどちらか言えばディキシー系と思っていたが、全く異なりクールで素晴らしいソロを聴かせてくれる。
「結構なロマンス」。大和氏は、ビリーはベッシー・スミスの大きな声と感覚、ルイ・アームストロングのフィーリングを求めていたと語っていて、それが如実に表れたのがこの曲だとしている。ここではいつものように軽く歌い始めず、最初からベッシーのように堂々と歌い出す。しかもサッチモのようなフィーリングに乗り一言一言を叩き出すように歌う唱法を取っていて、さらに着実なリズムの上を実に安定した乗り方で撃てって行けることを示した。しかしビリーがベッシーやサッチモの感覚に浸ろうとするあまり、歌詞の表現の上で正しく伝達しえたかどうか疑問があるとし、それを解決し、真に偉大なシンガーとなるのはもう少しばかり先のこととなるとする。一方巨泉氏は、比較的コミカルな失恋の歌を真摯にひたむきに歌っていると高評価である。ファゾラのソロが良い。ベリガンものびのびと吹いている。
「偽れない心」はビリーの特異なナンバーという。クールなファゾラとのびのびとしながらも抑えたベリガンのソロが良いが、コジ―のチンドン屋風のコーニーなドラムが出来を台無しにしている。
「数を数えて君を待つ」は、コジ―とのセリフのやり取りから始まる当時の典型的なナンセンス・ソング。ファゾラとベリガンのソロが全体の出来を救っている。
「心と心で」。ベリガンがミュートでソロを取るがこれは極めて珍しいという。続くハートのソロはウィルソン風で、影響を脱していないという。続くファゾラのソロはここでも素晴らしい。

「ザ・テディ・ウィルソン」レコード1B面

<Personnel> … テディ・ウィルソン・アンド・ヒズ・オーケストラ(Teddy Wilson and his orchestra)

Band leader & pianoテディ・ウィルソンTeddy Wilson
Trumpetクリス・グリフィンChris Griffin
Clarinetベニー・グッドマンBenny Goodman
Tenor saxヴィド・ムッソVido Musso
Vibraphoneライオネル・ハンプトンLionel Hampton
Guitarアラン・リュースAllan Reuss
Bassハリー・グッドマンHarry Goodman
Drumsジーン・クルーパGene Krupa
Vocalヘレン・ウォードヘレン・ウォード

<Contents>  … 1936年8月24日 ハリウッドにて録音

曲名原題収録アルバム収録個所
愛は君の瞳Here’s love in your eyes「ザ・テディ・ウィルソン」record1.B-2

第5回のセッションでは他に3曲録音されて様だが、どちらにも未収録。面子はどう見てもBGの楽団である。歌手もBG楽団のヘレン・ウォードである。BGはテディ・ウィルソンを自身のレコーディングに起用するたびに、お返しにブランズウィックのテディのセッションに出向かなければならなかった。このことは分かってウィルソンを起用したはずなのに、当時かなり名声を博しつつあったBGは、サイドマン扱いをされることを極度に嫌がり、35年7月の録音、また本録音の際は、録音が完了するのを待たずにスタジオを後にしたという。ましてやこの回は自分の楽団員をかなり引き連れてブランズウィックのスタジオに向かったわけで、その心中や穏やかではなかったろう。
演奏的には、ほぼBGバンドの安定した演奏であるが、アレンジャーがいないこのセッションでは、ここでもエンディングがディキシー風の合奏で終わるのが面白い。

<Personnel> … テディ・ウィルソン・アンド・ヒズ・オーケストラ(Teddy Wilson and his orchestra)

Band leader & pianoテディ・ウィルソンTeddy Wilson
Trumpetアーヴィング・ランドルフIrving Randolph
Clarinetヴィド・ムッソVido Musso
Tenor saxべン・ウエブスターBen Webster
Guitarアラン・リュースAllan Reuss
Bassミルト・ヒントンMilt Hinton
Drumsジーン・クルーパGene Krupa
Vocalビリー・ホリデイBillie Holiday

<Contents> … 1936年10月21日 ニューヨークにて録音

曲名原題収録アルバム収録個所
もてすぎる貴方Easy to love「ビリー・ホリディ物語」record2.B-5
君とスイングWith thee I swing「ビリー・ホリディ物語」record2.B-6
今宵のあなたThe way you look tonight「ビリー・ホリディ物語」record2.B-7
愛しているのは誰だと思うWho loves you ?「ビリー・ホリディ物語」record2.B-8

第6回目のテディ・ウィルソンのセッションは10月に行われた。4曲ほど吹き込まれたが、全てビリー・ホリディのレコードに収録されている。この日の面子はベニー・グッドマンの楽団のメンバーが半数以上を占めている。BGの楽団ではテナーを吹いているムッソが、ウエブスターがいるのでClに廻ったか?珍しいのは当時キャブ・キャロウェイの楽団に在籍していたミルト・ヒントンの参加で、1990年代まで活躍したベーシストの極めて初期のレコーディングである。
「もてすぎる貴方」はコール・ポーターの作だが、巨泉氏によれば原メロディーは全く出てこないという。ランドルフは力量不足、ウエブスターはこの日は抑え気味でいい味を出している。
「君とスイング」。イントロの後とエンディング前のウエブスターが聴き処。ムッソのClはまるでBGだという。
「今宵のあなた」は、現在もよく奏されるジェローム・カーン作のスタンダード・ナンバー。全体的に今一つ精彩がない出来とは巨泉氏。
「愛しているのは誰だと思う」。巨泉氏の言うように、ランドルフの出だしのソロは全く素朴吹いているだけで、ベリガンとの力量の差が歴然である。

「ビリー・ホリディ/奇妙な果実

<Personnel> … テディ・ウィルソン・アンド・ヒズ・オーケストラ(Teddy Wilson and his orchestra)

Band leader & pianoテディ・ウィルソンTeddy Wilson
Trumpetジョナ・ジョーンズJonah Jones
Clarinetベニー・グッドマンBenny Goodman
Tenor saxベン・ウエブスターBen Webster
Guitarアラン・リュースAllan Reuss
Bassジョン・カービーJohn Kirby
Drumsコージー・コールCozy Cole
Vocalビリー・ホリデイBillie Holiday

<Contents> … 1936年11月19日 ニューヨークにて録音

曲名原題収録アルバム収録個所
黄金の雨Pennies from heaven「ビリー・ホリディ物語」record3.A-1
これが人生なのねThat’life I guess「ビリー・ホリディ物語」record3.A-2
捧ぐるは愛のみI can't give you anything but love「ビリー・ホリディ物語」record3.A-3
セイリンSailin’「ザ・テディ・ウィルソン」record1.B-5

第7回目のセッションは11月19日に行われた。録音は4曲で、3曲がビリーの歌入り、もう1曲がインスト・ナンバーである。ということでここでもビリーのヴォーカル入りナンバーは「ビリー・ホリディ物語」に、インスト・ナンバーは「ザ・テディ・ウィルソン」に収められている。なお「ビリー・ホリディ物語」はLP2枚組が1セットで、トータルでは5セットLP10枚組みとなっている。ここから2セット目LPとしては3枚目に入る。
ここでのパーソネルの陣容は7名セプテットである。8月24日以来BGが参加した録音である。8月24日のセッションの時に書いたが、BGはサイドマン扱いされることを極端に嫌いこのセッションから「ジョン・ジャクソン(John Jackson)という変名を使うようになったという。今では堂々と「ベニー・グッドマン」と出ているが、SP盤発売当時は、クラリネットは”John Jackson”だったのである。
解説の大和氏によると、このセッションでビリーは実に大胆な唱法を示しているという。
まず、「黄金の雨」では、最初から最後までこの曲の通常の歌い方を全く一新した唱法を取り、不必要なまでにリズム・セクションのテンポを殺しながらレイジーにフレイズを引き延ばし、しかも歌い始めから原メロディーより一段と高い音でスタートし、そのまま原メロディーにとらわれず、しなやかな感覚で歌いきっており、まったく新しい解釈による自由なアドリブ唱法を取っているのである。特に最後の”There'll be pennies from heaven for you and me”と歌うところの思い切った崩し方などはまさにこの頃のビリーの本領を充分に発揮した圧巻の出来といえる
ビリー以外、ウィルソン、ウエブスターも快調で、歌の後に出るBGもビリーに啓発されたように珍しく憂鬱そうなソロを取る。
「これが人生なのね」。前曲とこの曲でのBGは実に思いやりに満ちたプレイで、巨泉氏は「この頃の二人の仲を想わせる」と書いている。やはりみんな知ってるんじゃないの?なぜ書かない?
「捧ぐるは愛のみ」は、サッチモはじめいろいろな人が演っているスタンダード・ナンバーである。こういう知っている曲だとビリーがかなり崩しまくって歌っていることがよく分かる。
「セイリン」。ビリーの入った3曲は少しテンポを落としたグルーミーな雰囲気を醸し出していたが、一転インストのこちらはフロント3人とドラムのコジ―が絡み合うホット・ナンバーである。ジョーンズ⇒ウィルソン⇒BGと続き最後の1コーラスは、最初と同様全員による集団合奏で終わる。

この年最後のセッションは、12月16日に行われた。ミッジ・ウィリアムスのヴォーカル入りが2曲、インストが2曲計4曲レコーディングされたが、ミッジのヴォーカル入りの1曲が収録されず計3曲収録されている。

「ザ・テディ・ウィルソン」レコード・ジャケット

<Personnel> … テディ・ウィルソン・アンド・ヒズ・オーケストラ(Teddy Wilson and his orchestra)

Band leader & pianoテディ・ウィルソンTeddy Wilson
Trumpetアーヴィング・ランドルフIrving Randolph
Clarinetヴィド・ムッソVido Musso
Tenor saxべン・ウエブスターBen Webster
Guitarアラン・リュースAllan Reuss
Bassジョン・カービーJohn Kirby
Drumsコージー・コールCozy Cole
Vocalミッジ・ウィリアムスMidge Williams

<Contents> … 1936年12月16日 ニューヨークにて録音

曲名原題収録アルバム収録個所
ライト・オア・ロングRight or wrong「ザ・テディ・ウィルソン」record1.B-6
二人でお茶をTea for two「ザ・テディ・ウィルソン」record1.B-7
夢で逢いましょうI'll see you in my dreams「ザ・テディ・ウィルソン」record1.B-8

「ライト・オア・ロング」は、ランドルフの味のあるイントロに続き、ウィルソンが情熱を秘めた美しいタッチのソロを聴かせる。そしてムッソ、ランドルフと続きミッジの歌となる。鼻にかかったような声は独特のチャーミングな味をもたらしている。ビリーとは対極的な歌手である。バックのムッソも歌を引き立てるいい感じのオブリガードを吹いている。その後のウエブスターもスイング時代の代表的テナー奏者らしい貫禄あるソロを取り、ランドルフのリードによってラスト・アンサンブルに入る。
「二人でお茶を」は、超有名スタンダードで、ムッソはサブ・トーンでメロディーをストレートに吹いていき落ち着いた雰囲気を出しているが、バックを付けるウィルソンのピアノは躍動的で面白い対照となっている。第2コーラスでのランドルフのソロは、彼の代表的名演と評判の高いもの。第3コーラスのウエブスターもソフトなトーンで、ランドルフとの対照が興味深い。
「夢で逢いましょう」。これも超有名スタンダード・ナンバー。通常メロウなムードで奏されることが多いが、ここでは快適なノリのいいリズム・セクションに導かれ、ウエブスター、ランドルフ、ムッソと快適なソロを披露する。

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ジャズ・ディスク・ノート 2019年5月21日

第321回チック・ウェッブ 1936年

No.321 Chick Webb 1936

“Chick Webb and 1936”レコード・ジャケット

“Chick Webb and his Orchestra / featuring Ella Fitzgerald 1936” Jazz anthology JA 5199(輸入盤)

<Personnel>…チック・ウエッブ・アンド・ヒズ・オーケストラ(Chick Webb and his Orchestra)

Band leader & Drumsチック・ウェッブChick Webb
trumpetマリオ・バウザMario Bauzaボビー・スタークBobby Starkタフト・ジョーダンTaft Jordan
Tromboneサンディ・ウィリアムスSandy Williamsクロード・ジョーンズClaude Jones
Clarinet & Alto saxピート・クラークPete Clark
Alto saxエドガー・サンプソンEdger Sampson
Tenor saxテディ・マクレーTeddy McRaeウェイマン・カーヴァ―Wayman Carver
Pianoジョー・スティールJoe Steele
Guitarジョン・トルーハートJohn Trueheart
Bass記載なしNo credit

先ずパーソネルを見て「?」と思うことは、ベース奏者の記載がないことである。ベースはいなかったのであろうか。音があまり良くなくよく聴こえないのだが、ベースは入っているように思える。僕の持っている限りの前回録音時のベースはジョン・カービーであったが、1935年10月のことで4か月も前である。僕の持っている次回録音は、36年4月7日で、それによればベーシストは、ジョン・カービーではなくビヴァリー・ピアに変わったことになっている。この交代がいつ行われたかは分からない。とりあえずここでは、記載なしとしておこう。
また曲順が録音順ではない。2回のセッションを収録しているが、B面6曲目を除いて2月19,20日の録音には歌手にエラ・フィッツジェラルドが加わっている。

“Chick Webb and 1936”レコードA面ラベル

<Contents> … 1936年2月8,9日、19,20日 ニューヨークにて録音

A面
B面
1.サヴォイでストンプStompin’ at the Savoy2月8,9日1.ビッグ・ジョンズ・スペシャルBig John’s special2月8,9日
2.その手はないよDon’t be that way2月8,9日2.ユー・ヒット・ザ・スポットYou hit the spot2月19,20日
3.ニット・ウィット・セレナーデNit Wit Serenade2月8,9日3.リズム・アンド・ロマンスRhythm and romance2月19,20日
4.キング・ポーター・ストンプKing porter stomp2月8,9日4.キーピン・アウト・オブ・ミスチーフ・ナウKeepin’ out of mischief now2月8,9日
5.シャインShine2月19,20日5.ゴー・ハーレムGo harlem2月8,9日
6.ダークタウン・ストラッターズボールDark town strutter’sball2月19,20日6.ホエン・ドリームス・カム・トゥルーWhen dreama come true2月19,20日

A-1「サヴォイでストンプ」、2「その手はないよ」はどちらも楽団に在籍していたエドガー・サンプソンの作で当時大ヒットしてスタンダードとなった作品。2「その手はないよ」は1934年に一度録音している(拙HP第300回)。ソロもやはりサンプソンのアルトが良い。特に粟村政昭氏曰く「消えいらんばかりのつつましさでリズムセクション全体の中に埋没している」チックとしては珍しく短いがドラム・ソロを取っている。これが意外(?)に激しいソロで少し驚く。どちらもBG盤がヒットしたがやはり34年の録音も含めてウェッブ盤の方が威勢が良くて僕は好みである。
A-4「キング・ポーター・ストンプ」はジェリー・ロール・モートン作。これもBGも録音しているナンバーである。出だしのTp、途中で出るTs、Tbのソロが良いが誰が吹いているのか分からないのが残念。
A-5「シャイン」、A-6「ダークタウン・ストラッターズボール」、B-2「ユー・ヒット・ザ・スポット」、B-3「リズム・アンド・ロマンス」はエラの歌入り。声が若いというか可愛らしささえ感じられる。
B-6「ホエン・ドリームス・カム・トゥルー」は、エラではなくチャールズ・リントンのヴォーカルが入る。リントンは当時ウェッブ楽団の専属歌手だったという。声の質から白人ではないかと思われる。

”Cab - Ella & Chick”レコード・ジャケット

“Cab - Ella & Chick”Bandstand records 7125(輸入盤)

録音順でいえば、僕の持っているレコードでは左のレコードに1曲だけ収録されている「ホエン・アイ・ゲット・ロウ・アイ・ゲット・ハイ」という曲で、収録日は1936年4月7日とある。
因みにこのレコードはA面にキャブ・キャロウェイの1937年から1939年にかけての録音を収録し、B面にはエラの歌入りのチックの楽団の1936年から1940年にかけての演奏を収録している。このレコードに記載されたパーソネルは正しいとして、変わったメンバーを挙げておこう。

<Personnel>…チック・ウエッブ・アンド・ヒズ・オーケストラ(Chick Webb and his Orchestra)

前録音2月からの変更点
Trombone … クロード・ジョーンズ ⇒ ナット・ストーリー Nat Story
Alto sax … エドガー・サンプソン ⇒ ルイ・ジョーダン Louis Jordan
Piano … ジョー・スティール ⇒ トミー・フルフォード Tommy Fullford
Bass … 記載なし ⇒ ビヴァリー・ピア Beverly Peer

<Contents> … 1936年4月7日 ニューヨークにて録音

B面3.ホエン・アイ・ゲット・ロウ・アイ・ゲット・ハイWhen I get low , I get high

エラ・フィッツジェラルドのヴォーカル入り。エラの声は若いが歌のうまさは特筆ものである。

次回の録音は6月2日に行われる。この日の音源はいくつかのレコードに分かれて収録されているので、それを以下のようにまとめてみた。少々分かりにくいかもしれないがご容赦を!

”Princess of Savoy”レコード・ジャケット

<Contents> … 1936年6月2日 ニューヨークにて録音

曲名原題レコード個所
シング・ミー・ア・スイング・ソングSing me a swing song“Cab ‐ Ella & Chick”B面2.
シング・ミー・ア・スイング・ソングSing me a swing song“Princess of the savoy”A面1.
ラヴ・ユーアー・ジャスト・ア・ラフLove , you’re just a laugh“Princess of the savoy”A面2.
ゴー・ハーレムGo harlem「チック・ウェッブ/伝説」B面6.
ア・リトル・ビット・レイター・オンA little bit later on「チック・ウェッブ/伝説」B面7. 

<Personnel 「伝説」>…チック・ウエッブ・アンド・ヒズ・オーケストラ(Chick Webb and his Orchestra)

Band leader & Drumsチック・ウェッブChick Webb
trumpetマリオ・バウザMario Bauzaボビー・スタークBobby Starkタフト・ジョーダンTaft Jordan
Tromboneサンディ・ウィリアムスSandy Williamsナット・ストーリーNat Story
Clarinet & Alto saxピート・クラークPete Clark
Alto saxエドガー・サンプソンEdger Sampson
Tenor saxテディ・マクレーTeddy McRaeウェイマン・カーヴァ―Wayman Carver
Pianoジョー・スティールJoe Steele
Guitarジョン・トルーハートJohn Trueheart
Bassデル・トーマスDell Thomas
チック・ウェッブ「伝説」レコード・ジャケット

僕の持つ4曲の音源を収録した3種類のレコードに記載されているメンバーは、それぞれ若干異なる。上記は「伝説」に記載されているパーソネルである。もちろん同日の録音でメンバーが変わったこともあり得るが、このチック・ウェッブの場合あまり考えられない。ともかく相違点を上げると

“Cab ‐ Ella & Chick”

Alto saxは、エドガー・サンプソンではなく、ルイ・ジョーダン
Pianoは、ジョー・スティールではなく、トミー・フルフォード
Bassは、デル・トーマスではなく、ビヴァリー・ピア

“Princess of the savoy”

Alto saxは、エドガー・サンプソンである
Pianoは、ジョー・スティールである
Bassは、デル・トーマスである

もちろんこのパーソネルの違いも僕には判断することができないので、相違点を挙げるにとどめたい。

2月の再録「ゴー・ハーレム」を除き全てエラのヴォーカル入りである。繰り返しだが、まだ18歳のエラの歌唱が、声も若く表現もストレートで、しかもメチャうまい。

”Princess of Savoy”レコード・A面ラベル

さて、次の僕の持っている録音は、10月29日でこれも2枚のレコードに3曲が収められている。

<Contents> … 1936年10月29日 ニューヨークにて録音

曲名原題レコード個所
ユール・ハヴ・トゥ・スイング・イットYou’ll have to swing it“Cab ‐ Ella & Chick”B面7.
アイ・ガット・ザ・スプリング・フィーヴァー・ブルースI got the spring fever blues“Princess of the savoy”A面3.
ヴォ―ト・フォー・ミスター・リズムVote for Mr. rhythm“Princess of the savoy”A面4.

<Personnel >…チック・ウエッブ・アンド・ヒズ・オーケストラ(Chick Webb and his Orchestra)

Band leader & Drumsチック・ウェッブChick Webb
trumpetマリオ・バウザMario Bauzaボビー・スタークBobby Starkタフト・ジョーダンTaft Jordan
Tromboneサンディ・ウィリアムスSandy Williamsナット・ストーリーNat Story
Clarinet & Alto saxピート・クラークPete Clark
Alto saxルイ・ジョーダンLouis Jordan
Tenor saxテディ・マクレーTeddy McRaeウェイマン・カーヴァ―Wayman Carver
Pianoトミー・フルフォードTommy Fullford
Guitarジョン・トルーハートJohn Trueheart
Bassビヴァリー・ピアBiverly Peer

パーソネル表記は、2枚とも同じ。

3曲ともエラの歌入り。エラの歌が入っていることに全く不満はないのだが、エラの歌なし録音というのはなかったのだろうか?それとも歌入りの曲だけを集めたのだろうか?

そして次の録音は、11月18日。僕の持っている1936年最後の録音である。

”Ella swings the band”レコード・ジャケット

”Chick Webb/Ella swings the band” MCA-1327 輸入盤

<Contents> … 1936年11月18日 ニューヨークにて録音

A面1.オルガン・グラインダー・スイングOrgan grinder’s swing
A面2.シャインShine
A面3.マイ・ラスト・アフェアーMy last affair

<Personnel >…エラ・フィッツジェラルド・アンド・ハー・サヴォイ・エイト(Ella fitzgerald and her Savoy Eight)

Vocalエラ・フィッツジェラルドElla fitzgerald
trumpetタフト・ジョーダンTaft Jordan
Tromboneサンディ・ウィリアムスSandy tdWilliams
Clarinet & Alto saxピート・クラークPete Clark
Tenor saxテディ・マクレーTeddy McRae
Pianoトミー・フルフォードTommy Fullford
Guitarジョン・トルーハートJohn Trueheart
Bassビヴァリー・ピアBiverly Peer
Drumsチック・ウェッブChick Webb

この録音のバンド名が「エラ・フィッツジェラルド・アンド・ハー・サヴォイ・エイト」となっている。完全にエラの唄を中心に据えたコンボ・バックである。これは同時代のBGの録音などを意識したのだろうか?否意識しないはずはない。
A面1.「オルガン・グラインダー・スイング」は、少し前10月7日にBGも録音しているが、そちらはヴォーカル無しである。そしてここでは軽快な、後は看板となるスキャットを披露している。

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