ローレンス・ブラウン (トロンボーン) 

Lawrence Brown (Trombone)

ローレンス・ブラウン

1907年8月3日カンザス州ローレンス生まれ(1905年7月3日生まれ説あり)。
1988年9月5日ロスアンゼルスにて死去。

1932年にエリントン楽団に参加、51年まで演奏していたが、1951年2月に独立するジョニー・ホッジス(as)と行動を共にし退団する。
1955年にホッジス楽団が解散した後スタジオ・ミュージシャンとして活動し、1960年5月にエリントン楽団に復帰、1970年に退団するまでトロンボーン・セクションの中核を担った。
幼いころはピアノ、ヴァイオリン、チューバなどを学んでいたが、やがてトロンボーンに落ち着いたという。
また学んでいたジャンルも、エリントンによれば黒人霊歌からクラシックまで、あらゆるジャンルに及ぶという。
レガート基調のメロディアスなアプローチはヴァイオリンの素養と幅広い音楽的な背景に培われたものかもしれない。
最初期の楽歴は不明で、ロサンゼルスでポール・ハワード楽団(1929‐30年)、ルイ・アームストロング楽団(1930年、実質はレス・ハイト楽団―録音あり)で演奏していたという。
エリントン楽団には1932年2月にエリントン楽団に入団した。
エリントン楽団のトロンボーン奏者の経歴を見ると、1926年6月、チャーリー・アーヴィスに代わってジョー“トリッキー・サム”ナントンが参加する。
ナントンはマイレイのプランジャー・ミュートを使ったワーワー奏法を吸収し、ジャングル・サウンドの創造に大きな役割を果たす。
次第に編成が拡大するなか、トロンボーンはナントン一人に委ねられていた。
1929年7月にファン・ティゾール(vtb)が加わる。エリントンの狙いはアンサンブルの強化だが、それはパワーよりもヴォイシングに力点が置かれていた。
そして1932年2月ローレンス・ブラウンが加わり、トロンボーン・セクションは3人体制になる。当時としては異例で、他の楽団はもちろん、ビッグバンドの雄、
フレッチャー・ヘンダーソン楽団ですら3人体制になるのは5年後のことだ。このときも、狙いが新しいカラーの創造にあったことは前後の演奏を聴き比べればわかる。
エリントンをとらえたのは一にも二にもブラウンのサウンドに違いない。
それはエリントンがブラウンについて「ソロイストとしてのテイストに非の打ちどころはないが、最高の役割は伴奏者としてのものだ」と語っていることで分かる。
入団した時点でブラウンは出来上がっており、そのプレイの源流を探るのは困難だと言われる。
当時のトロンボーンの主流は朗々型で、黒人ならジミー・ハリソン、白人ならミフ・モールの系譜につらなるものだが、どちらにも入れづらい。
温かく柔らかなトーンによる雲がわき上がるようなラインと、やや張りのあるトーンによる闊達なラインのコンビネーションは油井正一氏に“関西弁のトロンボーン”と評された。
のちにはビロード・タッチの美しいバラード演奏によって“黒いトミー・ドーシー”ともあだ名される。
そうしたブラウンのサウンド創出の妙技と秀でた音量制御術は、微妙でカラフルなヴォイシングによるアンビエンスの醸成に欠かせないものだった。
前述したように、入団した時点でブラウンの個性は確立していた。40年に及ぶ録音を見渡しても大きな変化はない。しかし時とともに個性に磨きがかかっていった。
常に水準以上の出来で、およそ駄演というものはないと言われる。
なかでも代表的な名演と言われるもの(未聴も含む)を挙げておこう。
1930年代ではブラウンの十八番になった《リオ・グランデのバラ》(38年6月、ブランズウィック)
1940年代では《オール・トゥー・スーン》《マイ・グレート・ミステイク》(40年6月、ビクター)、
レックス・スチュアート(co)名義の《リンガー・アホワイル》(同年11月、ブルーバード)、《アフター・オール》(41年2月、ビクター)、《ブルー・セロファン》(45年1月、同)、
『ムード・エリントン』の《ゴールデン・クレス》(47年9月、コロンビア)
1950年代では『マスターピーシィズ・バイ・エリントン』の《ソフィスティケイテッド・レディ》(50年12月、同)が屈指の名演だ。
退団後のものではジミー・ラッシング(vo)の『リッスン・トゥ・ザ・ブルース』(55年8月、ヴァンガード)が快演だったという。
リーダー作はクレフ(1955年1・9月)とインパルス(1965年3月)にあるが、大して優れたものではないという(未聴)。
ルイ・アームストロング1930年度録音の中に最も初期の演奏が聴ける。

レコード・CD

「黄金時代のルイ・アームストロング 1925-1932」CD-5
"Duke Ellington 1934-36"(History)
「デューク・エリントン楽団 1929〜1943」(DVD JLD-410)
"The Duke"(COL 517687-2)
"Duke Ellington presents Ivie Anderson"(Columbia KG 32064)
"Hodge Podge"(Epic JEE 22001)
"Billie Holiday/Live and private recordings in Chronological order"(LDB01〜LDB22)
「ライオネル・ハンプトン/オール・スター・セッション」(RCA RA-90〜95)
"The Duke box"(Storyville records 108 8600)
"Duke Ellington 1943-1946"(Philips 15PJ-6)