ベニー・カーター 1939年

Benny Carter 1939

今回は、ベニー・カーターの1939年の吹込みを取り上げる。

「ビリー・ホリディ」レコード第4集」レコード・ジャケット

<Date & Place> … 1939年1月30日 ニューヨークにて録音

<Personnel> … テディ・ウィルソン・アンド・ヒズ・オーケストラ(Teddy Wilson and his orchestra)

Band leader & Pianoテディ・ウィルソンTeddy Wilson
Trumpetロイ・エルドリッジRoy Eldridge
Clarinet & Alto saxベニー・カーターBenny Carter
Tenor saxアーニー・パウエルErnie Powell
Guitarダニー・バーカーDanny Barker
Bassミルト・ヒントンMilt Hinton
Drumsコジ―・コールCozy Cole
Vocalビリー・ホリディBillie Holiday

このセッションにおける担当楽器については色々説があるというが、ここでは上記レコード解説の大和明氏の説を記載しておく。

<Contents> … 「ビリー・ホリディ物語 第4集」(SOPH 67〜68)

Record2 A-1.何て言ったらいいのWhat shall I say ?
Record2 A-2.お天気のせいなのよIt's easy to blame the weather
Record2 A-3.貴方が考える以上にMore than you know
Record2 A-4.シュガーSugar

ジョン・ハモンド監修によるテディ・ウィルソンとビリー・ホリディのコンビによるブランズウィック・セッション最後の録音。前年度の録音では、テディは他のメンバーに余りソロを取らせていない。サックスを中心としたアンサンブルなどをバックにテディのピアノを浮き上がらせていると、解説では書かれているがここではメンバーにも十分ソロ・スペースを与えている。テディに心境の変化があったのだろうか。ともかくこの後テディは自分のオーケストラを率いてレコーディングを始める。

「ビリー・ホリディ」レコード第4集」2枚目A面
Record2 A-1.「何て言ったらいいの」
まずカーターのAsによるイントロの後エルドリッジのミュートTp、パウエルのTsの短いソロを挟み、ビリーのヴォーカルとなる。ビリーのヴォーカルは抑えた表現で、少ししわがれた声が一層この曲の哀感を伝えている。テディのPソロも美しい。解説の大橋巨泉氏は、隠れた名盤と高く評価している。エンディングはディキシー風の合奏で締めている。
Record2 A-2.「お天気のせいなのよ」
パウエルのテナー・ソロでスタートする。ホーキンス派と巨泉氏は言うがホーキンスとレスターの間、チュー・ベリーに近い感じがする。そしてカーターのClソロはモダンなフレイジングである。ビリーのヴォーカルの後テディのPソロ、そして続くカーターはAsでソロを取るがこれもいい味だ。そして短いエルドリッジのソロが入る。少しだけテンポが速く巨泉氏はビリー向きのテンポではないが、テディのセッションなので仕方ないという。
Record2 A-3.「貴方が考える以上に」
こちらはゆったりしたテンポで、ビリー向きとは巨泉氏。ここでもビリーの歌は抑え気味で、この人は抑えて歌うといい味を出すと僕は思う。続くテディのPソロもリリカルで素晴らしい。そしてカーターのAsも聴き応えがある。
Record2 A-4.「シュガー」
カーターのAsソロが良い。カーターの間に入るエルドリッジも上手い。ビリーのヴォ―カル、エルドリッジのTp、テディのPソロ、パウエルのTsソロもなかなかの出来である。

アーニー・パウエルは当時ベニー・カーターの楽団にいたTs奏者だという。このパウエルが頑張ったことでこのセッションは素晴らしいものになった。テディ、エルドリッジ、カーターと名人が揃えばいいセッションになるという当たり前と言えば当たり前のことをこのセッションからは感じることができる。このセッションでのビリーは好きだなぁ。

<Date & Place> … 1939年8月31日 録音

<Personnel> … ベニー・カーター・アンド・ヒズ・オーケストラ(Benny Carter and his orchestra)

Band leader & Alto saxベニー・カーターBenny Carter
Tromboneヴィック・ディッケンソンVic Dickenson
Pianoエディ・ヘイウッドEddie Heywood
Others不明Unknown

パーソネルが不備で分かるミュージシャンだけ上記記入した。
レコード裏面の解説は大和明氏が書いているが、大和氏らしからぬ不親切な解説である。他にもう一人或いは二人「E.パウエル」という人物が加わっていることになっているが、B面8ソロ・オーダーでE.パウエル(Cl)、E.パウエル(Ts)とある。しかしこれは同一人物がクラリネットとテナーを持ち替えたのか、それぞれ別の人物なのか分からない。それにE・パウエルにしても、たぶんアーニー・パウエル(Ernie Powell)というリード奏者ではないかと思うのだが、エディー・パウエル(Eddie Powell)というリード奏者もいるので、分からない。そのためパーソネルからは外しておいた。レコード解説は不備だが演奏は素晴らしい。

<Contents> … 「ベニー・カーター1933/39」(Philips 15PJ-4(M))

B面7.フェイヴァ―・オブ・ア・フールThe favor of a fool
B面8.リフ・ロンプRiff romp

この2曲はカップリングで発売された。

B面7.「フェイヴァ―・オブ・ア・フール」
ゆったりとしたテンポでまずカーターがメロディアスに歌い上げる。続いてヘイウッドが短いソロを取る。そしてアンサンブルに移ってエンディングを迎える。
B面8.「リフ・ロンプ」
アップ・テンポのナンバーで、ユーグ・パナシエがカーターのベスト・オーケストレイションであると絶賛したナンバーだという。確かに素晴らしいアンサンブル・ワークである。ソロ・オーダーはTp(?)⇒カーター(As)⇒ディッケンソン(Tb)⇒E・パウエル(Ts)⇒ヘイウッド(P)⇒E・パウエル(Cl)。ヘイウッドのPソロが素晴らしい。

<Date&Place> … 1939年9月11日 ニューヨークにて録音

<Personnel> … ライオネル・ハンプトンと彼のオーケストラ(Lionel Hampton and his orchestra)

Band leader , Vibraphone & Vocalライオネル・ハンプトンLionel Hamton
Trumpetディジー・ガレスピーDizzy Gillespie
Alto saxベニー・カーターBenny Carter
Tenor saxコールマン・ホーキンスColeman Hawkinsチュー・ベリーChu Berryベン・ウエブスターBen Webster
Pianoクライド・ハートClyde Hart
Guitarチャーリー・クリスチャンCharlie Christian
Bassミルト・ヒントンMilt Hinton
Drumsコージー・コールCozy Cole

ともかく大変なメンバーである。当時最高のテナー・サックス奏者と思われていたホーキンス、チュー、ウエブスターの3巨頭が顔を揃え、アルトにはこれまたジャズ・グレイト、ベニー・カーターが入る。まず、ホーキンスは1934年にフレッチャー・ヘンダーソン楽団を辞め、ヨーロッパへ渡る。そしてこの年帰国するのであるが、いつ帰国したのだろうか?寄稿して最初に吹き込んだのが超有名なあの”Body and soul”(1939年10月11日吹込み)という記載がある(岩浪洋三氏 ”Coleman Hawkins”BVCJ-37155CD解説)。しかしどう考えてもこちらの録音の方が時期が早い。ホークの帰米後初録音に当たるはずである。
そしてビ・バップの立役者の一人ディズがTpに座るが、この時はキャブ・キャロウェイ楽団でチューと同僚だった。さらにギターのクリスチャン、彼もビ・バップの草創期の伝説化したギタリストである。野口氏はなぜか書いていないが、「チャーリー・クリスチャン/メモリアル・アルバム」に記載されているディスコグラフィーではこれが初吹込みに当たる貴重な録音である。ともかく聴きどころ満載のセッションである。

<Contents> … 「RCAジャズ栄光の遺産シリーズ第16巻 ライオネル・ハンプトン/オール・スター・セッション」(RCA RA-90〜95)

Record4.A-4ホエン・ライツ・アー・ロウWhen lights are low
Record4.A-5ワン・スイート・レター・フロム・ユーOne sweet letter from you
Record4.A-6ホット・マレッツHot mallets
Record4.A-7アーリー・セッション・ホップEarly session hop
Record4.A-4「ホエン・ライツ・アー・ロウ」
ベニー・カーター作の有名曲。アレンジもカーター。最初のコーラスはアンサンブルとVbで、カーターのアルトが入り、そのままハンプトンのVbがフル・コーラスのソロを取る。続いてテナー・ソロとなるが、音色の似ている3巨匠がいるので分かりにくいが、これはホーキンスだという。サビはハートのPで、Vbを絡ませた合奏で締め括る。
Record4.A-5「ワン・スイート・レター・フロム・ユー」
1927年にハリー・ウォーレンが作曲した曲でこの1939年にリヴァイヴァル・ヒットしていたという。まずピアノのイントロから最初のテナーは、これもホーキンス。続いて短いハンプのVibソロを挟みハンプのヴォーカルとなる。このヴォーカル・バックでクリスチャンのコード・ワークが聴ける。ラストはVbと合奏となる。
Record4.A-6「ホット・マレッツ」
ここでディズが登場する。曲はハンプのオリジナル。ファースト・コーラスのディズは、ロイ・エルドリッジの影響が明らかだが、1939年とは思えないようだモダンなソロである。サビはカーターのAsで次はTsとなるのだが、この奏者については説が分かれているが、野口氏はチュー・ベリーだとしている。チューの権威、油井正一氏の見立て(?)だという。テナーの後はハンプトン(Vb)とリフ・アンサンブルとなる。
Record4.A-7「アーリー・セッション・ホップ」
ホット・ダンス・ナンバーで、このTs奏者が物議を醸しているという。ヴィンテージ・シリーズのLP「ボディ・アンド・ソウル」ではホーキンスとしているが、これはウエブスターだという。そしてこの見立ても油井氏で野口氏も賛成だと書いてある。しかしヴィンテージ・シリーズのLP「ボディ・アンド・ソウル」解説でホーキンスと書いているのは油井氏である。どうも話に整合性がない。しっかりして欲しい。ウエブスターだとすれば、これで確かにこれでTs3巨匠そろい踏みとなる。速いテンポでアンサンブルからTs、Vb、Asとソロが続く。

<Date&Place> … 1939年12月21日 ニューヨークにて録音

<Personnel> … ライオネル・ハンプトンと彼のオーケストラ(Lionel Hampton and his orchestra)

Band leader & Vibraphoneライオネル・ハンプトンLionel Hamton
Trumpetベニー・カーターBenny Carter
Clarinetエドモンド・ホールEdmond Hall
Tenor saxコールマン・ホーキンスColeman Hawkins
Pianoジョー・サリヴァンJoe Sullivan
Guitarフレディー・グリーンFreddie Greene
Bassアーティー・バーンスタインArtie Bernstein
Drumsズッテイ・シングルトンZutty Singleton

<Contents> … 「RCAジャズ栄光の遺産シリーズ第16巻 ライオネル・ハンプトン/オール・スター・セッション」(RCA RA-90〜95)

Record5.A-1ダイナ(テイク1)Dinah take1
Record5.A-2ダイナ(テイク1)Dinah take1
Record5.A-3マイ・バディMy Buddy
Record5.A-4シンギン・ザ・ブルースSingin’the blues

このメンバーも魅力的である。カーターはトランペットも本職はだしである。ジョー・サリヴァン、シングルトンは当時自己のグループを率いて活躍していた。

Record5.A-1、2.「ダイナ」
エリントン楽団やBGトリオも演奏し、日本ではディック・ミネが歌って大ヒットしたあの曲。2つのテイクがあるが構成は同じ。Vbのイントロからカーター(Tp)、ホーキンス(Ts)、ハンプトン(Vb)のフル・コーラスのソロが聴きもの。ラストはVb絡みのリフ・アンサンブルで結んでいる。
Record5.A-3「マイ・バディ」
1922年のヒット曲という。ファースト・コーラスはホール(Cl)にホークのTsが絡み、次のコーラスはホークの豪快なTsソロ、その後ハンプトンのVb、そして合奏で締め括る。
Record5.A-4「シンギン・ザ・ブルース」
正式なブルース形式ではなく16小節1コーラスの曲。ビックス・バイダーベックが名演を残した曲と同じであろうか?解説では全く触れていないが、かなり編曲されていてよく分からない。ミディアム・スロウのテンポで、サリヴァン(P)⇒ホーク(Ts)⇒ハンプトン(Vb)そして合奏となる。サリヴァンとホークのソロが秀逸。ラスト・コーラスのTsとVbの絡み心地良い。

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