ベニー・グッドマン 1930年
Benny Goodman 1930
今回は僕の持っている1930年のベニー・グッドマンの音源を録音順に並べてみよう。種々のレコード、CD合わせて14曲。もちろんBGが参加したレコードの半分にも満たないだろうが、代表的な吹込みではあるだろう。そして気付くのは自己名義の録音は一つもないということである。
| No. | 曲名 | 原題 | 録音日 | 名義 | 録音場所 |
| 1. | 南から来た男 | The man from the south | 1930年1月16日 | Rube Bloom & his bayou boys | ニューヨーク |
| 2. | ザ・ホール・ダーンド・シングス・フォー・ユー | The whole darned thing's for you | 1930年4月9日 | Ben Selvin and his orchestra | ニューヨーク |
| 3. | ロッキン・チェア― | Rockin’chair | 1930年5月21日 | Hoagy Carmichael and his orchestra | ニューヨーク |
| 4. | バーナクル・ビル・ザ・セイラー | Barnacle Bill the sailor | 1930年5月21日 | Hoagy Carmichael and his orchestra | ニューヨーク |
| 5. | ヒア・カムズ・エミリー・ブラウン | Here comes Emily Brown | 1930年5月26日 | The charleston chasers | ニューヨーク |
| 6. | チャイナ・ボーイ | China Boy | 1930年7月2日 | Red Nchols and his five pennies | ニューヨーク |
| 7. | アラビアの酋長 | The shiek of Araby | 1930年7月3日 | Red Nchols and his five pennies | ニューヨーク |
| 8. | シム・ミー・シャ・ワッブル | Shim-Me-Sha-Wabble | 1930年7月3日 | Red Nchols and his five pennies | ニューヨーク |
| 9. | ディープ・ダウン・サウス | Deep down south | 1930年9月8日 | Bix Beiderbecke and his orchestra | ニューヨーク |
| 10. | アイ・ドント・マインド・ウォーキング・イン・ザ・レイン | I don't mind walkin’in the rain | 1930年9月8日 | Bix Beiderbecke and his orchestra | ニューヨーク |
| 11. | アイル・ビー・ア・フレンド・ウィズ・プレジャー | I'll be a friend “with pleasure” | 1930年9月8日 | Bix Beiderbecke and his orchestra | ニューヨーク |
| 12. | アイ・ガット・リズム | I got rhythm | 1930年10月23日 | Red Nchols and his five pennies | ニューヨーク |
| 13. | アイ・ミス・ア・リトル・ミス | I miss a little Miss | 1930年12月12日 | Ben Selvin and his orchestra | ニューヨーク |
| 14. | ユアーズ・アンド・マイン | Yours and mine | 1930年12月12日 | Ben Selvin and his orchestra | ニューヨーク |
<Date & Place> … 1930年1月16日 ニュー・ヨークにて録音
<Personnel> … リューブ・ブルーム・アンド・ヒズ・バイユー・ボーイズ(Rube Bloom & his bayou boys)
<Contents> …「ベニー・グッドマン/新たなる宝庫」(Columbia CSM890〜891)
record1 A-3.南から来た男(The man from the south)
リューブ・ブルームは後に1930年4月録音の「ザ・ホール・ダーンド・シングス・フォー・ユー」(Ben Selvin and his orchestra)でもピアノを弾いているが、当時アメリカでは非常に著名な作編曲家で、他に「沼地の歌」、「ペントハウス・セレナーデ」などが有名という。また彼はビックス・バイダーベックや多くのジャズメンと親交を重ねたことでも知られているという。これは自作曲を演奏したもの。ヴォーカルに絡むオブリガード、ソロと随所にBGのクラリネットが活躍する。
<Date & Place> … 1930年4月9日 ニュー・ヨークにて録音
<Personnel> … ベン・セルヴァン・アンド・ヒズ・オーケストラ(Ben Selvin and his orchestra)
<Contents> … ”The young Benny Goodman”(Timeless CBC 1-088)
CD-17.ザ・ホール・ダーンド・シングス・フォー・ユー(The whole darned thing's for you)
先ずこれはジャズではない。当時のポップ・ミュージックであろう。BG、トミー・ドーシー、再びBGのソロが入るが、ジャズ・コンセプトの下に行われた演奏ではない。ジャズ・ファンにとってはBGその他の記録という以外の価値はない。
<Date & Place> … 1930年5月26日 ニュー・ヨークにて録音
<Personnel> … ザ・チャールストン・チェイサーズ(The charleston chasers)
<Contents> …「ベニー・グッドマン/新たなる宝庫」(Columbia CSM890〜891)
record1 A-5.ヒア・カムズ・エミリー・ブラウン(Here comes Emily Brown)
コン・コンラッドとジャック・ミスキルの共作した「1931年のニュー・ムービー トーン・フォーリーズ」(飯塚氏の解説によるがこの単語を検索してもヒットしない)の(多分映画の)主題歌。そもそも「The protean Mr. Goodman」についている飯塚氏の解説は分かり難く字送り等誤りが多い。
ウクレレ中心の演奏(と飯塚氏は書くが余り強調されてはいない)だがBGのクラリネット・ソロはエキサイティングな快演である。
<Date & Place> … 1930年5月21日 ニュー・ヨークにて録音
<Personnel> … ホーギー・カーマイケル・アンド・ヒズ・オーケストラ(Hoagy Carmichael and his orchestra)
<Contents> … 「ベニー・グッドマン秘蔵名演集」(PDTD-1046)
| CD-10. | ロッキン・チェア― | Rockin’chair |
| CD-11. | バーナクル・ビル・ザ・セイラー | Barnacle Bill the sailor |
ニュー・ヨークに復帰した復帰したビックス・バイダーベックは、親友ホーギー・カーマイケルのオールスター編成のバンドに加わりヴィクターに2曲吹き込んだ。ビックスとカーマイケルはインディアナ大学時代からの知り合いである。このバンドはパーソネルを見ればわかるように、トミー・ドーシー、ベニー・グッドマン、ジミー・ドーシー、バド・フリーマン、ジョー・ヴェヌーティー、エディ・ラング、ジーン・クルーパといったスターたちを揃えており、その仲間たちとの吹込みでその日の午後のビックスは幸福そうに見えたという。
CD-10.ロッキン・チェア―
ホーギー・カーマイケル作。後にミルドレッド・ベイリーが歌い大ヒット、「ロッキング・チェア−・レディ」と呼ばれる元になった曲。この録音にBGのソロはない。要はこういう歴史上貴重録音にも参加していました的なことだろうか?因みにTpのソロもビックスではなく、レコード会社の意向でババー・マイレイだったそうだ。ババー・マイレイは初期エリントン・バンドで存在感を発揮したトランぺッターで、1932年29歳の若さでこの世を去る天才的プレイヤーである。ビックスとマイレイの共演というのは意外な組み合わせで興味深い。ともかく豪華な顔ぶれである。CD解説の野口氏はクルーパのドラムが素晴らしいと書いている。
CD-11.バーナクル・ビル・ザ・セイラー
「水夫のバーナクル・ビル」というタイトルで「ポパイ・ザ・セイラー・マン」を思わせるような曲。カーマイケルとロビンソンの掛け合いのようなヴォーカルの後短いビックスのソロ、再びヴォーカルの掛け合いの後テンポが倍になりBGが16小節に渡るソロを吹く。その後は効果音的な音をBGは担当している。こちらもクルーパのドラムが素晴らしいと野口氏は書いている。ヴォーカルで参加したロビンソンはカントリー・ミュージック畑の大物でなぜここに参加したのかは不思議ではある。
<Date&Place> … 1930年7月2、3日 ニューヨークにて録音
<Personnel> … レッド・ニコルス・アンド・ヒズ・ファイヴ・ぺニーズ (Red Nchols and his five pennies)
<Contents> … 『レッド・ニコルス物語』(MCA-3012)&“Red Nchols and his five pennies”(Ace of Hearts AH-63)
| MCAA面6曲目、AH-B面4曲目 | チャイナ・ボーイ | China Boy | 1930年7月2日 |
| MCAB面1曲目 | アラビアの酋長 | The shiek of Araby | 1930年7月3日 |
| MCAA面3曲目 | シム・ミ・シャ・ウォブル | Shim-Me-Sha-Wabble | 1930年7月3日 |
次の録音は5か月後の7月2日と3日に行われたセッションからとなる。AH盤には1曲収録されているが、これはMCA盤と被る(チャイナ・ボーイ)。
[チャイナ・ボーイ]はグレン・ミラーの編曲によるファイヴ・ぺニーズの代表作という。ニコルス、BGのソロも力演で素晴らしいが、続くサリヴァンの2コーラスに渡るソロは圧巻である。
[アラビアの酋長]について大和明氏は、この演奏後ティーガーデンの十八番となったとし、以下詳しく解説している。
「バンジョーのトレグ・ブラウンがストレート・メロディーで『俺らはアラビアの酋長だ』と歌い出すと、すぐ横からティーガーデンがそれを抑え、大胆にメロディーを崩してジャジーな感覚を出す。そしてグレン・ミラーのトロンボーンがストレート・メロディーで美しく流していくのに対して、ティーガーデンの奔放なアドリブが絡んでいくところなど実に素晴らしい。以後ティーガーデンは常にこの形式でこの曲を演奏することにしたという。続いてBG、ニコルスとソロがリレーされ再びティーガーデンのヴォーカルで締めくくる。
[シム・ミ・シャ・ウォブル]について、大和氏は「かつてミフ・モールの名演があったとし、ここでは大型コンボによる各自のソロが楽しめるとする。ソロ・オーダーは、ベイブ・ラッシン、BG、ジャック・ティーガーデン、サリヴァンそしてニコルスによるアンサンブル・リードからラスト・コーラスへと引き継がれる。ちょっとぎこちないラッシンのソロに比べて、ダーティー・トーンを交えたBG、余裕を感じさせるティーガーデンのソロは聴き応えがある。
「レッド・ニコルスとファイヴ・ぺニーズ」―キャッチ―なバンド名でキャッチ―なジャズを演奏した。レッド・ニコルスはビックスの影響を受けた素晴らしいトランぺッターである。
BGはニコルスの48のレコーディングに参加している。彼はこう言っている、「レッドに呼ばれれば我々は行った。我々は若くスタミナがあった。」
この録音でBGはいつもより薄く強いタッチでプレイしている。ベイブ・ラッシンの力強く音数の多いテナー・ソロは続くティーガーデンに明るく生き生きとした雰囲気を吹き込んでいる。
解説のジョージ・サイモン氏も触れていないが、僕は、僕だけかもしれないがこの曲のエンディングの部分に着目している。このアンサンブルは後のスイング時代によく使われた正に「リフ」である。この時代は普通に奏されていたのであろうか?今後少しずつ勉強していきたいと思うが、これこそスイング・リフの先駆けではないかと思っている。
<Date & Place> … 1930年9月8日 ニュー・ヨークにて録音
<Personnel>…ビックス・バイダーベック・アンド・ヒズ・オーケストラ(Bix Beiderbecke and his orchestra)
<Contents> … 「ベニー・グッドマン秘蔵名演集」(PDTD-1046)&“An introduction to Bix Beiderbecke 1924-1930”(Best of jazz 4012)
| CD-12. | ディープ・ダウン・サウス | Deep down south |
| CD-13. | アイ・ドント・マインド・ウォーキン・イン・ザ・レイン | I don't mind walkin' in the rain |
| CD-14&CD-22. | アイル・ビー・ア・フレンド・”ウィズ・プレジャー” | I'll be a friend "With pleasure" |
クラリネットにはもう一人、ピー・ウィーラッセルが参加している。人選に当たって八方美人のビックスは知り合い3人に声をかけてしまったのだ。そこで「アイル・ビー・ア・フレンド・”ウィズ・プレジャー”」はそれぞれの奏者で計3テイク録られたが、ピー・ウィーのものはオクラ入りとなった。それで2人の名がクレジットされることになったのである。
CD-12.ディープ・ダウン・サウス
こちらの録音にはホーギー・カーマイケルは関与していないようだが、メンバーはホーギーとのセッションとほぼ同じである。しかしこちらの方がぐっとジャズっぽい。
ウエスのヴォーカルの後BGが4小節、ビックス16小節、再びBG8小節のソロを取る。CD解説の野口氏はビックスのソロはビックスらしからぬサウンドで残念だが、BGのソロは聴きものであると書いている。しかしビックス=BGというソロ回しは貴重である。
CD-13.アイ・ドント・マインド・ウォーキン・イン・ザ・レイン
冒頭ビックス8小節のソロはあるものの全体としてジョー・ヴェヌーティのヴァイオリンをフューチャーしたナンバーである。
CD-14&CD-22.アイル・ビー・ア・フレンド・”ウィズ・プレジャー”
これは先に述べたように3テイクあったうちのグッドマンが吹いたテイクである。これも歌物だが、ヴォーカルの前でドーシーのトロンボーン、ヴォーカルの後ビックス、BGの短いソロがある。
<Date&Place> … 1930年10月23日 ニューヨークにて録音
<Personnel> … レッド・ニコルス・アンド・ヒズ・ファイヴ・ぺニーズ (Red Nchols and his five pennies)
<Contents> … “Red Nchols and his five pennies”(Ace of Hearts AH-63)
record B-5.アイ・ガット・リズム(I got rhythm)
ご存知ジョージ・ガーシュイン作曲アイラ・ガーシュイン作詞のスインギーなナンバーで出版されたのは1930年というから最も初期の演奏の一つであろう。元々は1928年の”Treasure girl”というブロードウェイ・ミュージカルのために作られたが、後にテンポを速めて”Girl crazy”で使われたのだという。完全にスイング時代に突入した演奏である。
<Date & Place> … 1930年12月12日 ニュー・ヨークにて録音
<Contents> … ”The young Benny Goodman”(Timeless CBC 1-088)
| CD-18. | アイ・ミス・ア・リトル・ミス | I miss a little Miss |
| CD-19. | ユアーズ・アンド・マイン | Yours and mine |
<CD-18.Personnel> … ベン・セルヴァン・アンド・ヒズ・オーケストラ(Ben Selvin and his orchestra)
<CD-19.Personnel> … ベン・セルヴァン・アンド・ヒズ・オーケストラ(Ben Selvin and his orchestra)
| Violin & band leader | … | ベン・セルヴァン | Ben Selvink |
| Two trumpet | … | Unknown |
| Trombone | … | トミー・ドーシー | Tommy Dorsey |
| Clarinet | … | ベニー・グッドマン | Benny Goodman |
| Reeds | … | ハイミー・ウルフソン | Hymie Wolfson | 、 | Unknown |
| Violin、Piano | 、 | Banjo、Bass、Drums… | Unknown |
| Vocal | … | スミス・バリュー | Smith Ballew |
CDの記載によるとCD-18、19は同バンドの同日の録音だが、メンバーが結構入れ替わっている。どの理由であろうか?例えばTpについて、CD-18には2人のプレイヤーの名が記載されているが、CD-19では2本のTpは不明と記載されている。ということは2曲間で交代が行われたのであろう。でもなぜ?どちらにおいてもTpは重要なソロを取っているわけではないのに替える必要がどこにあったのであろう。それとも先に録音した方のメンバーが後のスケジュールが詰まっているので先にスタジオを後にしたというようなことかもしれない。
いずれにしろこの2曲もBGの演奏記録という意味だけで、ジャズ・ファンには他の価値を見出しようがないものと思う。
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