ドン・レッドマン Don Redman 1925年

Don Redman 1925

この年レッドマンの在団するヘンダーソン楽団の吹込みで、僕が持っているのは4曲。全てルイ・アームストロングの加わった録音である。この年ヘンダーソンは意中のトランペット奏者ジョー・スミスを手に入れることになる。これでルイ、ジョーという2枚看板が揃ったかと思いきやルイは10月に在団1年で退団し、シカゴに戻ってしまう。しかしこのバンドに齎したルイの影響は大きく、また天才ドン・レッドマンも本領を発揮し出し、ヘンダーソンのバンドは20年代最高のバンドに登りつめていくのである。

「スタディ・イン・フラストレイション」CD・ジャケット

<Date & Place> … 1925年2月2日 ニュー・ヨークにて録音

<Personnel> … フレッチャー・ヘンダーソン・アンド・ヒズ・オーケストラ(Fletcher Henderson and his orchestra)

Piano & Band readerフレッチャー・ヘンダーソンFletcher Henderson
Trumpetルイ・アームストロングLouis Armstrongエルマー・チェンバースElmer Chambersハワード・スコットHoward Scott
Tromboneチャーリー・グリーンCharlie Green
Clarinet & Alto saxバスター・ベイリ―Buster Baileyドン・レッドマンDon Redman
Clarinet & Tenor saxコールマン・ホーキンスColeman Hawkins
Banjoチャーリー・ディクソンCharlie Dixon
Tubaラルフ・エスクデロorボブ・エスクデロRalph Escudero or Bob Escudero
Drumsカイザー・マーシャルKaiser Marshall

<Contents> … "Fletcher Henderson/A study in frustration"(Essential・JAZZ・Classics EJC55511)

CD1-8.アラバミー・バウンド(Alabamy bound)
タイトルの「アラバミー・バウンド(Alabamy bound)」とはどんな意味であろうか?演奏は何となく汽車が走っているような雰囲気がある。アラバマへ汽車で向かって」とういうことであろうか?

「フレッチャー・ヘンダーソン/ア・スタディ・イン・フラストレイション」CD1枚目

<Date & Place> … 1925年5月29日 ニュー・ヨークにて録音

<Personnel> … フレッチャー・ヘンダーソン・アンド・ヒズ・オーケストラ(Fletcher Henderson and his orchestra)

ここから全てのデータがトランペットのハワード・スコットがジョー・スミスに替わったことになる。他は上記「アラバミー・バウンド (Alabamy bound)」と同一。

<Contents> … "Fletcher Henderson/A study in frustration"(Essential・JAZZ・Classics EJC55511)

CD1-9.シュガー・フット・ストンプSugar foot stomp
CD1-10.ホワッチャ・コール・エム・ブルースWhat-cha-call‘em blues

CD1-9. シュガー・フット・ストンプ
この録音は大変重要な録音である。僕の知っているだけで評論家3氏がこの録音について述べている。詳しくは「フレッチャー・ヘンダーソン 1925年」
まず油井正一氏は「この曲はキング・オリヴァーのレパートリーだった“Dippermouth blues”を手土産としてルイが持参し、ドン・レッドマンがアレンジしたもの」と述べ、瀬川昌久氏も「作曲者はオリヴァーということになっていて、1923年の演奏ではルイとオリヴァーが一緒に演奏しているが、ソロはオリヴァーだけであった。そして1925年フレッチャー・ヘンダーソン楽団がアレンジを加え、『シュガー・フット・ストンプ』という名前で吹き込んでいる」と述べている。
これに対してガンサー・シュラー氏は「”Sugar foot stomp”は、キング・オリヴァーの“Dippermouth blues”をルイ自身がシカゴから持参してきたという話は、ジャズのライターたちが音楽的分析をせずにしばしば飛びついた類(たぐい)の伝説である」と真っ向から反対しているのである。
僕が思うにまずこの曲は“Dippermouth blues”なんだと思う。それをルイが手土産として持ってきたかどうかはさほど問題ではないのではないかと思う。もちろんその場合なぜ“Dippermouth blues”という曲名を”Sugar foot stomp”というタイトルに変えたのかは不明であるが…。曲構成は変わっているが、どちらも途中”Oh!play that thing!”という掛け声を入れることで、この曲は“Dippermouth blues”であることを示唆しているように思うのだが。
さらに瀬川氏は、「『ディッパー・マウス・ブルース』はワン・コーラス12小節だが、さらにドン・レッドマンが16小節のクラリネット合奏の第2テーマを加えた。そしてルイはここで、オリヴァーが『ディッパー・マウス・ブルース』で吹いた3コーラス36小節のソロを自分なりに敷衍して演奏している。これが本当に素晴らしい」と。
ところがシュラー氏はこれに真っ向から異を唱えるのである。「『シュガー・フット・ストンプ』が『コペンハーゲン』の完成度をもたないことは明白である」とし、その原因はドン・レッドマンであるとする。それは「元の“Dippermouth blues”に対して彼が付け加えた部分がこの曲の一番の弱点となっているからである。ルイはオリヴァーの古いソロを見事に処理しているのだが、レッドマンは、その曲の中ごろに、こぎれいなストップ・タイムの手法を導入する。ところがこの甲高く、不味く演奏されるクラリネット・トリオのコーラスとその後の持続音の「交響楽的」セクションが、ソロや半即興的な楽句の隣では、何とも場違いなのである」というのである
僕が感じるのはやはりルイのソロが飛び抜けていることで、ミュートで吹く2回目のソロあるソロの形状を作りながらそれを変幻自在に展開して行く様は、天賦の才能の持ち主であると思わざるを得ない。前曲、この曲などは僕でもその凄さが分かる。
油井氏は、終わり近くの“Oh , play that thing !”という掛け声はドン・レッドマンの声であるという。そして「サックス・セクションがクラリネットに持ち替えて合奏するする部分などは、後ヘンダーソンのトレード・マークになったばかりでなく、さらにはベニー・グッドマン楽団の特徴にもなった」という。
CD1-10.ホワッチャ・コール・エム・ブルース
イントロの柔らかいホーン・アンサンブルなどはレッドマン・アレンジらしいところなのだろう。しかしどう聴いてもブルースではない。ルイは最初のテーマを吹くが全体としては、トロンボーンのグリーンをフューチャーした作品。

この5月末の録音からしばらく録音がなく、そしてこの日の録音がルイのヘンダーソン楽団における最後の録音となるのである。

「フレッチャー・ヘンダーソン/ア・スタディ・イン・フラストレイション」CD1枚目

<Date & Place> … 1925年10月21日 ニュー・ヨークにて録音

<Personnel> … フレッチャー・ヘンダーソン・アンド・ヒズ・オーケストラ(Fletcher Henderson and his orchestra)

1925年5月29日と同じ

<Contents> … "Fletcher Henderson/A study in frustration"(Essential・JAZZ・Classics EJC55511)

CD1-11. ティー・エヌ・ティー (T.N.T.)
この曲が、ルイのヘンダーソン楽団における最後の吹込みとなった。この後ルイは退団し、シカゴへ戻ってしまうのである。
タイトルの“T.N.T.”は、TNT爆弾のことで強力な爆薬として有名。エルマー・ショーベルの作品。
ルイのソロが合奏部を挟んで大きくフューチャーされた後、ホークの4小節という短いソロ、Tbのグリーンの合奏を挟んだ少し長いソロが入る。その後ジョー・スミスのソロが入るが、彼の特徴がよく出ていると油井氏は書いているが、シュラー氏は、この2番目のTpのソロもルイで、ジョー・スミスの完璧な模倣そのものであるという。
そもそもスミスなのか、それを完璧に真似をしたルイなのかはもちろん僕などには判別できない。

「ルイ・アームストロング/若き日のルイ」A面

<Date & Place> … 1925年11月2日 ニューヨークにて録音。

<Personnel> … ペリー・ブラッドフォード・ジャズ・フールズ (Perry Bradford’s jazz phools)

Vocalペリー・ブラッドフォードPerry Bradford
Cornetルイ・アームストロングLouis Armstrong
Tromboneチャーリー・グリーンCharlie Green
Clarinetバスター・ベイリ―Buster Bailey
Alto saxドン・レッドマンDon Redman
Pianoジェームス・P・ジョンソンJames P Johnson
Drumsカイザー・マーシャルKaiser Marshall
※Banjoサム・スピードSam Speedorチャーリー・ディクソンCharlie Dixon

<Contents> … 「ルイ・アームストロング/若き日のルイ」(SDL-10377)

A面3.ルーシー・ロングLucy long
A面4.アイ・エイント・ゴナ・プレイ・ノー・セカンド・フィドルI ain’t gonna play no second fiddle

A面3.ルーシー・ロング
ペリー・ブラッドフォード自身が作ったオリジナル。8小節+8小節計16小節が1コーラスで、まずペリーのヴォーカルの1コーラスの後、レッドマンのアルトが1コーラス、ルイのコルネットが1コーラス、ベイリーのクラリネットが1コーラス、ヴォーカルが1コーラス、そして合奏をバックにしたグリーンのトロンボーンの短いソロが配される。
A面4.アイ・エイント・ゴナ・プレイ・ノー・セカンド・フィドル
これもブラッドフォードの自作。レコード・ライナーノーツの油井氏の解説は、「特にベイリーのクラリネット、ルイのコルネットのソロが素晴らしくホットなアンサンブルが楽しめる」と短いが、シュラー氏は譜例を上げて詳細に解説している。先ず合奏のイントロがあり、まずソロを取るのはクラリネットのベイリーでその後3連符でルイはソロを吹きはじめる。このソロについてシュラー氏は譜例を示し詳述するが、それは「ルイ・アームストロング 1925年」参照のこと。
ピアノに「ストライド・ピアノの父」と言われるジェームス・P・ジョンソンが加わっているが、シュラー氏も「若き日のルイ」解説の油井氏も何もコメントしていない。

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