1928年ジミー・ヌーンやそして何よりもルイ・アームストロングと歴史的なレコーディングを行い、単身ニューヨークに出てピアノ・ソロを録音した。このレコードはQRSというレーベルに吹き込まれ、後にアトランティックからも出ていたことがあるらしいが、残念なことに見たことがない。ぜひ聴いてみたいものだ。
そして28年直ぐにシカゴに引き返し、ビッグ・バンドを結成する。電光石火の早業である。このバンドにも興味があるが、レコーディングを行ったのか或いは不況の波に飲み込まれ、殆どレコーディングは出来なかったのか、今回取り上げる1934年までビッグ・バンドでの録音は見当たらないのである。
この「サウスサイド・スイング」というレコードは、粟村政昭氏の『ジャズ・レコード・ブック』によって以前から知っていたが、長い間持っていなかった。しかしやっと見つけたレコードは左写真をご覧いただければわかるように、ジャケット右下部分には大きくシールをはがした跡があり、また日本盤だが解説も付いていなかった。かなり出来損ないの盤で本来なら購入の対象にはならないのだが、このレコードは殆ど見かけることがなかったので、不備を承知で購入した。僕の持っているアール・ハインズのグランドテラス・ビッグバンドの最も初期のレコードとなる。
その後コーラルから出ている”Swinging in Chicago”(写真右)というレコードを見つけ購入したが、1934年の収録曲は日本盤と同じである。
因みに粟村師は単に「良い」とし、ハンズのバンドが本当に充実してきたのは39〜40年にかけてのことである、と述べている。
| Band leader & Piano | … | アール・ハインズ | Earl Hines | ||||||
| trumpet | … | チャーリー・アレン | Charlie Allen | 、 | ジョージ・ディクソン | George Dixon | 、 | ウォルター・フラー | Walter Fuller |
| Trombone | … | ルイ・テイラー | Louis Taylorandy Williams | 、 | ビリー・フランクリン | Billy Franklin | 、 | トラミー・ヤング | Trummy Young |
| Alto sax , Clarinet & Violin | … | ダーネル・ハワード | Darnell Howard | ||||||
| Clarinet & alto sax | … | オマー・シメオン | Omer Simeon | ||||||
| Tenor sax | … | セシル・アーウィン | Cecil Irwin | 、 | ジミー・マンディ | Jimmy Mundy | |||
| Guitar | … | ローレンス・ディクソン | Lawrence Dixon | ||||||
| Bass | … | クイン・ウィルソン | Quinn Wilson | ||||||
| Drums | … | ウォーレス・ビショップ | Wallace Bishop |
9月12日と13日でメンバーの変動はない。
| A面1. | ザッツ・ア・プレンティ | That’s a plenty | 9月12日 |
| A面2. | ファット・ベイブス | Fat babes | 9月12日 |
| A面3. | メイプル・リーフ・ラグ | Maple leaf rag | 9月12日 |
| A面4. | スィート・ジョージア・ブラウン | Sweet Georgia Brown | 9月12日 |
| A面5. | ロゼッタ | Rosetta | 9月12日 |
| A面6. | コペンハーゲン | Copenhagen | 9月13日 |
| A面7. | アングリー | Angry | 9月13日 |
| A面8. | ウォルヴェリン・ブルース | Wolverine blues | 9月13日 |
| B面1. | ロック・アンド・ライ | Rock and rye | 9月13日 |
| B面2. | ケイヴァ―ニズム | Cavernism | 9月13日 |
9月12、13日で一挙に10面分の録音を行った。このレコードのA面1曲目に針をおいて、音が出て最初に思ったことは「音がよい」ということだった。当時のシカゴはスタジオが整っていたのだろうか。
A-1.[ザッツ・ア・プレンティ]
どこかで聞いたことのあるメロディー。1914年ルー・ポラックという人が作ったラグタイムの曲だという。いつもの詳細な解説がないので、ソロの担当などは全く分からないが、As、Tpのソロが聴かれる。アレンジもよくスインギーな1曲。。
A-2.[ファット・ベイブス]
ハインズ自身のソロがフューチャーされている。いわゆるストライド奏法とは一線を画すシングル・トーン中心の現代に通じるプレイである。
A-3.[メイプル・リーフ・ラグ]
ご存知スコット・ジョプリン作のラグタイムの古いナンバーであり、それは以前拙HPでも取り上げたことがある。それをビッグ・バンドにアレンジしての演奏。アレンジはハインズ自身で、見事である。ソロはAs、P、ミュートTp、再びハインズの短いソロからアンサンブルを挟んで三度ハインズ。ハインズのソロはラグっぽさが全くない。エンディングのアンサンブルも見事。
A-4.[スィート・ジョージア・ブラウン]
現代でもよく取り上げられるいわゆるスタンダード・ナンバー。これはベースのクイン・ウィルソンの見事なアレンジが光り、ハインズのピアノも生きている。後半のブラス・セクションとホーン・セクションのコール&レスポンスのかけあいが楽しい。
A-5.[ロゼッタ]
ハインズの自作で自身何度も取り上げてレコーディングしている。ヴォーカルはTpのウォルター・フラーで、彼はこの曲を歌ったことから、ウォルター”ロゼッタ”フラーと呼ばれるようになったという。ハインズ自身のPをフューチャーした曲。ソロは他にAsが取っている。
A-6.[コペンハーゲン]
ルイ・アームストロングやフレッチャー・ヘンダーソン楽団も取り上げたことのある曲。まずソロはTs、続いてTp、P、Tb、Clと廻していく。
A-7.[アングリー]
ハインズのPをフューチャーしている。聴いていると、いわゆるストライド系統ジェイムスPジョンソン-ファッツ・ウォーラー-アート・ティタムとは別系統のピアノだということがよく分かる。ソロは他にTs、Clなど。
A-8.[ウォルヴェリン・ブルース]
ジェリー・ロール・モートンの曲。ソロはAs、ハインズのピアノ、Tp、Clが取っている。
B-1.[ロック・アンド・ライ]
いかにもスイング時代到来といった感じのスインギーなナンバー。途中に出てくるリフなどに強く感じる。アンサンブルが見事。
B-2.[ケイヴァ―ニズム]
ハインズの自作。ピアノのイントロからアンサンブルに入り、ソロはミュートTp、Tb、そして続くヴァイオリン・ソロがこの時代珍しいと思う。そしてハインズのPソロも左手がストライドから完全に卒業していることを感じさせる。