| Band reader& Piano | … | フレッチャー・ヘンダーソン | Fletcher Henderson | |||
| Trumpet | … | ボビー・スターク | Bobby Stark | 、 | ラッセル・スミス | Russell Smith |
| Cornet | … | レックス・スチュワート | Rex Stewart | |||
| Trombone | … | J.C.ヒギンバサム | J.C.Higginbotham | 、 | サンディー・ウィリアムス | Sandy Williams |
| Alto sax& Violin | … | エドガー・サンプソン | Edger Sampson | |||
| Clarinet & Alto sax | … | ラッセル・プロコープ | Russell Procope | |||
| Tenor sax | … | コールマン・ホーキンス | Coleman Hawkins | |||
| Banjo | … | クラレンス・ホリディ | Clarence Holiday | |||
| Tuba | … | ジョン・カービー | John Kirby | |||
| Drums | … | ウォルター・ジョンソン | Walter Johnson |
「RCAジャズ栄光の遺産シリーズ」は、何度も言及して申し訳ないが、一切録音データを掲載していないので、上記パーソネルは、Webから拾い上げたものである。
| レコード収録 | 邦題 | 原題 | Vocal | ||||||
| record1B-3. | ストレンジャーズ | Strangers | ジョン・ディケンズ(John Dickens) | ||||||
| record1B-4. | テイク・ミー・アウェイ・フロム・ザ・リヴァー | Take me away from the river | アイキー・ロビンソン(Ikey Robinson) | ||||||
| record1B-5. | アイ・ウォナ・カウント・シープ | I wanna count sheep | ハーラン・ラティモア(Harlan Lattimore) | ||||||
| record1B-6. | プア・オールド・ジョー | Poor old Joe | ハーラン・ラティモア(Harlan Lattimore) | 、 | ジョン・ディケンズ(John Dickens) | 、 | アイキー・ロビンソン(Ikey Robinson) | 、 | ベイビー・ローズ・メアリー(Baby Rose Marie) |
Web版ディスコグラフィーによれば、1932年3月10日6面分の吹込みが行われた。前回録音が1931年10月だったので、約5か月後のことである。バンドは6曲とも同じメンバーで、合計4人の歌手が起用されている。その内3人が1曲ずつ歌い、1人が2曲歌い、4人そろって1曲歌っている(プア・オールド・ジョー)。その全6曲の録音の内4曲が、ここには収録されている。それぞれの曲の歌手は上記の通りである。
4曲とも不況の時代を反映してか温和なポップス・チューンとなっている。ガンサー・シュラー氏はこれらの録音に一切触れていないが、それは特に語るべきことがないということだと思われる。しかしアンサンブルは見事だし、ヒギンバサムやホーキンスの見事なソロなどを聴くことができるので、そうそう退屈な録音というわけではない。
B-3.[ストレンジャーズ]
ホーキンスのソロが聴き応えがある。ディケンズのヴォーカルの後のTpソロもいいが、レコード解説に拠ればスタークかスチュアートかはっきりしないという。
B-4.[テイク・ミー・アウェイ・フロム・ザ・リヴァー]
ここでもホーキンスが聴き応えのあるソロを取って活躍する。ヘンダーソンのPソロも聴くことができる。ヴォーカルのアイキー・ロビンソンは、黒人で”バンジョー・アイク”という名で知られていたという。アレンジは多分ベニー・カーターではないかという。
B-5.[アイ・ウォナ・カウント・シープ]
ここでもホーキンスが活躍する。ホーキンスがバンドの重要なソロイストの地位を確立しつつあることが分かる。
B-6.[プア・オールド・ジョー]
最初にソロで歌うのはラティモアで、ラティモアは当時「黒いビング・クロスビー」と呼ばれたという。後半部で残り3人のコーラスと掛け合いで歌う。これも編曲はカーターではないかという。
声はほとんど聴こえないが、ディスコグラフィーには「ベイビー・ローズ・メアリー」という名前の歌手が参加していることになっている。彼女は当時8歳で、子役などで活躍していた少女だという。
さて次の録音はCD“A study in frustration”になるのだが、CD記載の録音データとWeb版パーソネルでは、記載がかなり異なるのである。
まずCDでの記載であるが、曲名は「ブルー・モーメンツ」で録音日は1932年11月3日でニューヨークにて録音されたとある。しかしWeb版では、録音日は1932年3月11日ニューヨークにて録音とある。
パーソネルでは、双方共通なのがTpにレオラ・ヘンダーソンが加わったという点で、CD解説ではその他にアルト・サックスにヒルトン・ジェファーソンが加わったとするが、Webではそれがない。レオラ・ヘンダーソンはフレッチャーの2人目の妻でTp奏者だが、サックスも吹くという。
僕にはこの問題に対する判断能力はないが、想像では多分Web版が正しいように思える。CD誤りの原因は、以前にもあったが3月11日と11月3日の取り違えで、音源を収録順に並べているのが正しいとすれば、CD3枚目2曲目の録音日が9月12日あることから、11月3日の録音が9月の前に来ていることがおかしいのである。ということでこの曲はレコードの4曲の翌日3月11日に録音されたとして話を進めよう。
| 変更 Web、CD共通 | |||||
| Trumpet | … | ラッセル・スミス | ⇒ | レオラ・ヘンダーソン | Leora Henderson |
| 追加 CDのみ記載 | |||||
| Alto sax | … | ヒルトン・ジェファーソン | Hilton Jefferson | ⇒ | In |
| CD3-1. | ブルー・モーメンツ | Blue moments |
前日の録音と異なりヴォーカルが入っていない。また曲名の通り少しブルーなムードを持った曲である。ここでもソロで活躍するのは、コールマン・ホーキンスである。
その他の録音データについて一致するかと言えば残念ながら一致しないのである。1932年においてはもう3曲録音されたことになっている点とパーソネルはCD解説とWebでは一致しているが、録音日については大きく異なっている。CD解説では、9月12日にCD3-2〜CD3-4の3曲が録音されたことになっている。しかしWebでは12月9日に同じタイトルの3曲が同じメンバーによって録音されたと記載されている。またまた録音日の違いである。
これも僕には確定する力がないが、今回は力強い見方がいる。ガンサー・シュラー氏である。氏は「ニュー・キング・ポーター・ストンプ」を1932年12月録音と書いている。ということで今回もWebに軍配を上げ、12月9日が正しくCDの9月12日を誤りとしておこう。
ギター奏者を除いて3月10日の録音と同じ。
Guitar … クラレンス・ホリディ ⇒ フレディー・ホワイトFreddy White
| CD3-2. | ニュー・キング・ポーター・ストンプ | New king porter stomp |
| CD3-3. | アンダーニース・ザ・ハーレム・ムーン | Underneath the harlem moon |
| CD3-4. | ハニーサックル・ローズ | Honeysuckle rose |
前回録音から9か月たっているが、メンバーの交替はギターだけでメンバーは安定していたといえる。なかでもCD3-2「ニュー・キング・ポーター・ストンプ」は注目すべき作品ということでガンサー・シュラー氏が詳しく解説している。「1932年12月に、ヘンダーソン・バンドは『キング・ポーター・ストンプ』」の華麗な「ヘッド・アレンジメント」版を創り出した。
CD3-2.[ニュー・キング・ポーター・ストンプ]
「シュガー・フット・ストンプ」の再録音の場合と同じように、新たな版のより活発なテンポが測り知れないほど有効である。滑らかなスイング、調和の取れた4ビートのリズム・セクションもまた貢献している。骨格は、1928年の版とほぼ同一で、スタークが冒頭の旋律を反復し、装飾を加える。バンドの二人の新人Tb奏者の一人、サンディ・ウィリアムズがジミー・ハリソンがかつて吹いた短いフレーズを模倣し、他方、ホーキンスがバスター・ベイリーの昔のコーラスの代わりに、彼のそれまでで最も見事なソロの一つを披露する。
かつてのジョー・スミスの出番には、レックス・スチュアートが登場して、高音のf音でこれを終了する。もう一人の新人Tb奏者のJ.C.ヒギンボッサムが一連のソロのけりをつけるのだが、その過程で、右上楽譜のような半音階的な『小フレーズ』を模倣する。これは1926年の「スタンピード」以来相当長い間ホーキンスが時折愛用していたフレーズで、「キング・ポーター・ストンプの次の録音(1933年)では、ヘンリー・レッド・アレンが利用することになるフレーズでもあった。
ホーキンスの右のソロは綿密に検討してみる価値がある。このソロにおいて、この遅咲きの芸術家は、その後何十年間彼の目印ともなった大胆な着想によって真価を認められたのだ」と。
確かにここでのホーキンスのソロは、細かい音を危なげなく吹き切るテクニックを身につけた上に、グイグイとバンドを引っ張っていく力強い牽引力が加わり実に素晴らしいソロを聴かせてくれる。そしてスタークのTp、ボッサムのTbソロも見事である。エンディングはスイング時代到来を示すノリを生み出すコール&レスポンス式のリフを配するなど見事な構成で聴き応え十分である。
CD3-3.[アンダーニース・ザ・ハーレム・ムーン]
こちらも見事な出来映えで、出だしのホーキンスのソロ、Tpと絡みも素晴らしい。女性ヴォーカリスト、キャサリン・ハンディ(Katherine Handy)のヴォーカルの後に出てくるTbソロも見事だ。なお、ヴォーカルのキャサリンはかのW.C.ハンディの娘である。
CD3-4.[ハニーサックル・ローズ]
ファッツ・ウォーラーの作品。この曲もエンディングをリフで締めている。
ともかくこの日のバンドは絶好調で、3曲とも素晴らしいパフォーマンスを示している。
シュラー氏によると、12月9日の録音の後の1933年8月に行われた録音においては、このバンドはホーキンス一色になっていたという。そしてイギリスの放送協会がこれらの録音を聴くや否や、ホーキンスにロンドンでの1年間の契約仕事を申し込んできたという。ホーキンスはこれに乗り、ヘンダーソンの元を離れてこの後1939年までヨーロッパに滞在するのである。これはヘンダーソンにとって深刻な打撃となったが、それはまたのちの話。