フレチャー・ヘンダーソン 1936年

Fletcher Henderson 1936

1934年末名門フレッチャー・ヘンダーソンの楽団はほとんど解散状態だったと伝えられる(油井正一氏ははっきり解散したと書いている)。そのためか1934年9月以降1936年3月までレコーディングは1曲も行っていない。御大のヘンダーソンは、これまで触れてきたようにベニー・グッドマンにアレンジを提供したりとそれなりに音楽活動を続けていた。そんなヘンダーソンだったが1936年に入ると引き続きBGにアレンジ等の提供は続けながら、自らのバンドを率いてレコーディングに復活してきた。今回はそんなフレッチャー・ヘンダーソンの録音を聴いていこう。
ディスコグラフィーによれば、ヘンダーソン楽団は1936年に19曲のレコーディングを行っている。
まず3月27日に4曲の録音が行われ、この内3曲がコロンビア系だったのであろう右上「A study in frustration」CD3に収録されている。
続いて4月9日に4曲、5月23日に5曲、8月4日に6曲吹込みが行われ、ヴィクター系だったのであろう、全曲右下「RCAジャズ栄光の遺産シリーズ 第9巻 ザ・ビッグ・バンド・エラ 第1集」に収録されている。さらに"Classic jazz archive / Fletcher Henderson 1897-1952"(Membran 221998-306)には全19曲が収録されており、この年の録音は揃えることができることになる。
まず<パーソネル>であるが、復活第1弾1936年3月27日の録音を基本形とし、以降は移動だけを記載することにする。

<Personnel 基本形> … フレッチャー・ヘンダーソン・アンド・ヒズ・オーケストラ(Fletcher Henderson and his Orchestra)

Band leader & Pianoフレッチャー・ヘンダーソンFletcher Henderson
Trumpetディック・ヴァンスDick Vanceロイ・エルドリッジRoy Eldridgeジョー・トーマスJoe Thomas
Tromboneエド・クッフィーEd Cuffeeフェルナンド・アルベロFernando Arbello
Clarinet & Alto saxバスター・ベイリーBuster Bailey
Alto saxスクープス・キャリーScoops Carry
Tenor saxエルマー・ウィリアムスElmer Williamsチュー・ベリーChu Berry
Pianoホレス・ヘンダーソンHorace Henderson
Guitarボブ・レッシーBob Lessy
Bassジョン・カービーJohn Kirby
Drumsシドニー・カットレットSidney Catlett
活動というのはレコーディングだけではないことは承知の上だが、他の資料を見ても約1年くらいはほぼ活動休止状態だったヘンダーソン楽団。吹込みを再開するということになって参加したメンバーは1934年最後の録音から大幅に変更を余儀なくされたのは仕方のないことであろう。ミュージシャンも仕事がない楽団にいたのでは、飯が食えないのである。1934年録音から引き続き名前が見えるのは、弟のホレスを除けばバスター・ベイリー(Cl、As)くらいである。
CDには詳しく記載がないが、Web版ディスコグラフィーによればピアノはフレッチャーが弾いたり弟のホレスが弾いたりしているようである。

「スタディ・イン・フラストレイション」CDボックス

<Date & Place> … 1936年3月27日 ニューヨークにて録音

<Contents> … "Classic jazz archive / Fletcher Henderson 1897-1952"(Membran 221998-306)&"A study in frustration"(Essential・JAZZ・Classics EJC55511)

CD1-5、CD3-9.クリストファー・コロンブスChristopher Columbus
CD1-6.ビッグ・チーフ・ド・ソタBig chief de sota
CD1-7、CD3-11..ブルー・ルーBlue Lou
CD1-8、CD3-10.スティーリン・アップルズStealin' apples
[クリストファー・コロンブス]
テナーのチュー・ベリーがこのヘンダーソン楽団のために書いた曲。ベニー・グッドマンは1週間前の3月20日フレッチャー・ヘンダーソンのアレンジで録音している。その場所はシカゴであった。ところで”FletcherHenderson_Classics”では、アレンジは弟のホレスになっている。聴き比べても同じアレンジのように聴こえるが…。ただこういう音源は聴き比べると面白い。BGの方がテンポがわずかにゆったりしていてサウンドは洗練されている。フレッチャーの方は、名門楽団の復活の狼煙を上げるように元気よくTpが飛び出してくる。全体的に元気がよい演奏で、作者のチューも聴き応えのソロを披露している。好みの問題ではあるが僕はフレッチャーの方が好みである。
[ビッグ・チーフ・ド・ソタ]
ピアノはホレス。アレンジはTpのディック・ヴァンス。ヴァンスは後にアレンジャーとしても名を馳せることになる。ソロはTp(ヴァンスか?)⇒Ts(チュー)⇒P(ホレス)⇒Cl(ベイリー)といずれも名手ぞろいで聴き応え十分である。
[ブルー・ルー]
フレッチャーがピアノを担当している。オープンのTpとミュートのTpのソロが入るが、オープンの方がエルドリッジではないかと思うが自信はない。
[スティーリン・アップルズ]
フレッチャーがピアノを担当している。イントロで長いピアノ・ソロが聴かれる。オープンのTpとミュートのTpのソロが入るが、オープンの方がエルドリッジではないかと思うが自信はない。続くテナー・ソロはチュー・ベリーであろう。そしてTp⇒Clと聴き応えのあるソロが続く。

<Date & Place> … 1936年4月9日 シカゴにて録音

<Personnel 移動内容> … フレッチャー・ヘンダーソン・アンド・ヒズ・オーケストラ(Fletcher Henderson and his Orchestra)

Alto sax … スクープス・キャリー ⇒ オマー・シメオンOmer Simeon
Bass … ジョン・カービー ⇒ イスラエル・クロスビーIsrael Crosby

<Contents> … "Classic jazz archive / Fletcher Henderson 1897-1952"(Membran 221998-306)&「ジャズ栄光の遺産シリーズ/ビッグ・バンド・エラ 第1集」(RCA RA-46)

CD1-9、Record2 A-3.アイム・ア・フール・フォー・ラヴィン・ユーI'm a fool for lovin' you
CD1-10、Record2 A-4.ムーンライズ・オン・ザ・ロウランズMoonrise on the lowlands
CD1-11、Record2 A-5.アイル・オールウェイズ・ビー・イン・ラヴ・ウィズ・ユーI'll always be in love with you
CD1-12、Record2 A-6.ジャングル・ナーヴスJungle nerves
[アイム・ア・フール・フォー・ラヴィン・ユー]
アレンジはディック・ヴァンスでピアノはホレス。アンサンブルが見事な作品。ソロはTsそしてミュートTp、Clと続くがいずれもよい。さすがに名手を揃えているだけのことはある。
[ムーンライズ・オン・ザ・ロウランズ]
アレンジはディック・ヴァンスでピアノはホレス。少しばかりテンポを落とした演奏で、チューのテナー・ソロがいい感じだ。アンサンブルも見事。
[アイル・オールウェイズ・ビー・イン・ラヴ・ウィズ・ユー]
アレンジ、ピアノともにフレッチャーだという。ソロはTs⇒P⇒再度Ts⇒Tp。
[ジャングル・ナーヴス]
アレンジはロジャー・ムーア、ピアノはホレスという。ロジャー・ムーアと言っても「007」を演じた俳優さんではない。ソロはいずれもよいが、チューのTs、ホレスのPが特に良い。

「RCAジャズ栄光の遺産シリーズ 第9巻 ザ・ビッグ・バンド・エラ 第1集」2枚目A面ラベル

<Date & Place> … 1936年5月23日 シカゴにて録音

<Personnel 4月9日からの移動内容> … フレッチャー・ヘンダーソン・アンド・ヒズ・オーケストラ(Fletcher Henderson and his Orchestra)

Alto sax … オマー・シメオン ⇒ ジェローム・パスクォールJerome Pasquall

<Contents> … "Classic jazz archive / Fletcher Henderson 1897-1952"(Membran 221998-306)

CD1-13、Record2 A-7.ホエア・ゼアズ・ユー・ゼアズ・ミーWhere there's you there's me
CD1-14、Record2 A-8.ドゥ・ユー・オア・ドント・ユー・ラヴ・ミーDo you or don’t you love me ?
CD1-15、Record2 A-9.グランド・テラス・リズムGrand terrace rhythm
CD1-16、Record2 B-1.リフィンRiffin’
CD1-17、Record2 B-2.マリー・ハッド・ア・リトル・ラムMary had a little lamb
[ホエア・ゼアズ・ユー・ゼアズ・ミー]、[ドゥ・ユー・オア・ドント・ユー・ラヴ・ミー]
ホレスのアレンジで、テディ・ルイスという人のヴォーカルが入る。テディ・ルイスについて、「RCAジャズ栄光の遺産シリーズ 第9巻 ザ・ビッグ・バンド・エラ 第1集」解説の油井正一氏は、「テッド・ルイスとは別人」とわざわざ書いている。テッド・ルイスは若き日のBGが真似ていたクラリネット吹きである。しかしググってみても「テディ・ルイス」という人物は出てこない。ただ「テッド・ルイス」どうもエンターテイナーは出てくるし、どうもこれではないかとは思うが油井先生が違うというのだから違うのだろう。日本では、「テディ」と「テッド」で区別しているが、アメリカではどちらも同じなので、この人物はテッド・ルイス(シンガー)でいいような気もするが自信がないのでこれくらいにしよう。
ともかくチューのTsそしてTpのソロなどいずれも見事であるし、アレンジも手が込んでいて素晴らしい。
[グランド・テラス・リズム]
フレッチャーのアレンジ。エルドリッジのソロ以外はブラスとホーンのリフをフューチャーした作品。
[リフィン]
油井正一氏の解説では作ったのはホレスで、アレンジはフレッチャーとなっているが、CDにはアレンジもホレスとある。これもピアノとエルドリッジのソロのみでアンサンブルを中心とした作品。
[マリー・ハッド・ア・リトル・ラム]
日本でも有名な「メリーさんの羊」である。ここでのヴォーカルはディック・ヴァンスで、彼はアレンジも担当している。チュー・ベリーのソロが良い。

<Date & Place> … 1936年8月4日 シカゴにて録音

<Personnel> … フレッチャー・ヘンダーソン・アンド・ヒズ・オーケストラ(Fletcher Henderson and his Orchestra)

5月23日と同じ。

<Contents> … "Classic jazz archive / Fletcher Henderson 1897-1952"(Membran 221998-306)

CD1-18、Record2 B-3.シュー・シャイン・ボーイShoe-shine boy
CD1-19、Record2 B-4.シング・シング・シングSing , sing , sing
CD1-20、Record2 B-5.アンティル・トゥデイUntil today
CD1-21、Record2 B-6.ノック・ノック・フーズ・ゼアKnock , knock , who’s there ?
CD1-22、Record2 B-7.ジムタウン・ブルースJimtown blues
CD1-24、Record2 B-8.ユー・キャン・ディペンド・オン・ミーYou can depend on me
[シュー・シャイン・ボーイ]
この時代よく演奏されたスタンダード的ナンバーでアレンジはL.J.ラッセル。シュー・シャイン・ボーイとは靴磨きの少年のこと。ヴォーカルはロイ・エルドリッジ。それにしてもエルドリッジは歌もうまいものだ。ここでもチューのTsは短いがいい感じのソロを取っている。
[シング・シング・シング]
ルイ・プリマの作でホレスのアレンジ。最初の発売は1936年2月というから相当早いカヴァーである。ヴォーカルはジョージアボーイ・シンプキンス。シンプキンスのヴォーカルはキャブ・キャロウェイを思わせる。後のBG楽団で大ヒットする。ここでもチューのテナーがいい。
[アンティル・トゥデイ]
ホレスのアレンジ。エルマー・ウィリアムズのテナーが聴こえるほかはアンサンブルで聴かせるナンバー。
[ノック・ノック・フーズ・ゼア]
ディック・ヴァンスのアレンジ。ヴォーカルの掛け合いが聴かれる。これはエルドリッジとトロンボーンのエド・クッフィー。
[ジムタウン・ブルース]
アレンジを油井氏はホレス、CD解説ではフレッチャーとしている。ミディアム・アップ・テンポのナンバー。小気味よいスインギーなアンサンブルの後、Tp、Cl、アンサンブルが入ってTsの短いソロが入る。スイング感が心地よい。
[ユー・キャン・ディペンド・オン・ミー]
フレッチャーのアレンジのミディアム・テンポのスイング・ナンバー。ソロはTs、Tbの後ヴォーカルが入る。歌っているのはディック・ヴァンスである。ヴォーカルの後はCl、Tsの短いソロが入り、アンサンブルへと移る。

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