ミルドレッド・ベイリー 1939年
Mildred Bailey 1939
今回はミルドレッド・ベイリーの1939年の録音を聴いていこう。音源は一つ、コロンビアから出た”Her greatest performance”(Columbia JC3L-22)だが、内容はかなりヴァリエイション豊富である。
<Date&Place> … 1939年1月、2月 ニューヨークにて録音
<Personnel> … ミルドレッド・ベイリー・アカンパニード・バイ・ジョン・カービーズ・オーケストラ(Mildred Bailey accompaniedd by John Kirby's orchestra)
<Contents>
| Record2 B-4. | セント・ルイス・ブルース | St. Louis blues | 1939年1月18日 |
| Record2 B-5. | テイント・ホワット・ユー・ドゥ | 'Tain’t what you do | 1939年2月28日 |
録音順に見ると、この年1月と2月にジョン・カービーの率いるバンドが伴奏を行った2曲がある。このバンドはオーケストラという規模を持っていないが、何といっても最初のコンボと言われるバンドで、本来セクステット編成だがミルドレッドの夫君レッド・ノーヴォが加わり7人編成となっている。実に興味深い録音である。
Record2 B-4.「セント・ルイス・ブルース」
W.C.ハンディ作の超有名曲。そもそもミルドレッドがブルースを歌うこと自体が珍しいが、やはり軽妙と言えば軽妙だが、軽いと言えば軽い。ソロは夫君の能坊が取っている。次曲もそうだが、期待のカービーのセクステットもアンサンブルだけで、こういう気鋭のバンドを使う必要があったのかと思うが、たんに曲を聴くだけならよくスイングしているし聴き応えはある。
Record2 B-5.「テイント・ホワット・ユー・ドゥ」
この年ベニー・グッドマンやジミー・ランスフォードなども録音しているので人気があった曲なのだろう。スキャットなども交え軽快にスイングしているが、こういう曲は彼女には合わないなぁという感じがする。
<Date&Place> … 1939年3月16日録音
<Personnel> … ミルドレッド・ベイリー・アンド・オックスフォード・グレイズ(Mildred Bailey and Oxford Greys)
<Contents>
| Record2 B-6. | プリゾナー・オブ・ラヴ | Prisoner of love |
| Record2 B-7. | バレルハウス・ミュージック | Barrelhouse music |
| Record2 B-8. | アーカンサス・ブルース | Arkansas blues |
| Record3 A-2. | ユー・ドント・ノウ・マイ・マインド・ブルース | You don't know my mind blues |
| Record3 A-3. | ゼアル・ビー・サム・チェンジ・メイド | There'll be some change made |
| Record3 A-4. | ガルフ・コースト・ブルース | Gulf coast blues |
この録音も注目である。BGのコンボやトミー・ドーシーなどでも小編成の演奏が流行っていたからなのか、ここではバックは前録音より絞られ、カルテット編成である。このオックスフォード・グレイズとは特定のバンドではなく、この録音のために作られたバンド、バンド名であろう。《Oxford Grey》とは《濃い灰色》という意味で、ベイリー以外は皆黒人であり、「かなり黒人寄り、ちょっとだけ白人」ということであろう。
注目はピアニストに黒人女性No.1ピアニストと言われるアンディ・カーク楽団のメリー・ルー・ウィリアムスを起用していることで、他にもギターのスミスもアンディ・カークの楽団からの参加である。ベースのジョン・ウィリアムスは、実によくある名前。1938年のビリー・ホリディの録音でドラムスのダハティと組んで参加していた人物。
Record2 B-6.「プリゾナー・オブ・ラヴ」
ミディアム・テンポの曲で、ピアノのリードで歌うシンプルなナンバー。こういう歌伴を弾くウィリアムズは珍しいのではないかと思う。曲はベイリーに合っている感じだ。ビリー・ホリディ=テディ・ウィルソンのコラボを思い起こさせる。
Record2 B-7.「バレルハウス・ミュージック」
曲自体は黒っぽいナンバーなのだが、ミルドレッドの声質がどうしてもそぐわない。無理をして歌っている感じがする。短いフロイド・スミスのGtソロが入る。
Record2 B-8.「アーカンサス・ブルース」
この頃ミルドレッドは芸域を広げようとしていたのだろう、これもブルース・ブギー・ナンバーである。頑張って歌っているのは分かるが、無理している感じは否めない。ソロはウィリアムズ(P)。
Record3 A-2.「ユー・ドント・ノウ・マイ・マインド・ブルース」
これもブルースというかブギーっぽいナンバーである。ここでもソロを取るのはフロイド・スミス(Gt)。どブルースでやはりベイリーには似合わない感じがする。
Record3 A-3.「ゼアル・ビー・サム・チェンジ・メイド」
これもブルージーなナンバーで、ソロはメリー・ルーとフロイドが受け持つ。
Record3 A-4.「ガルフ・コースト・ブルース」
これもブギー調のブルースである。シャウトまでしているが、一体どうしたのだろうと思ってしまう。
<Date&Place> … 1939年6月27日録音 ニューヨークにて録音
<Personnel> … ミルドレッド・ベイリー・アカンパニード・バイ・ジョン・カービーズ・オーケストラ(Mildred Bailey accompaniedd by John Kirby's orchestra)
2月28日と同じメンバー。
Record3 A-5.「ゴースト・オブ・ア・チャンス」(A ghost of a chance)
この録音では、再びジョン・カービーのセクステット+能坊との録音。しっとりとしたスタンダード・ナンバーで、こういう曲の方がミルドレッドらしくて、出来もいいと思う。
<Date&Place> … 1939年10月20日、11月11日 ニューヨークにて録音
<Personnel> … ベニー・グッドマンと彼のオーケストラ(Benny Goodman and his orchestra)
レコードでは単に<Benny Goodman and his orchestra>となっているが、<Mildred Bailey accompanied by Benny Goodman and his orchestra>であろう。コロンビア専属の大物同士の組み合わせというところか?ミルドレッド・ベイリーのレコードでは従来のオーケストラではギタリスト、アーノルド・コヴェイが務めているとなっているが、「チャーリー・クリスチャン/メモリアル・アルバム」(CBS 56AP 674〜6)では、チャーリー・クリスチャンがギターを弾いていることになっている。どちらが<正>か判断材料がないが、ソロも無いのでコヴェイではないかと思う。
<Contents>
| Record3 A-7. | アイ・ソート・アバウト・ユー | I thought about you | 10月20日
| Record3 A-8. | ダーン・ザット・ドリーム | Darn that dream | 11月11日録音 |
| Record3 B-1. | ピース・ブラザー | Peace , brother | 11月11日 |
この2曲はいずれもヴァン・ヒューゼン作エディー・ソーター編曲のナンバー。
Record3 A-7.「アイ・ソート・アバウト・ユー」
こちらの録音は、ベニー・グッドマンの楽団との共演。ソロはBGが取っている。この日全部で4曲ほどレコーディングしたようだが、"Her greatest Performances"に収められているのはこの1曲のみ。やはりこういうナンバーがベイリーには向いていると思う。
Record3 A-8.「ダーン・ザット・ドリーム」
ベイリーのレコードでは、11月11日となっているが、「チャーリー・クリスチャン/メモリアル・アルバム」(CBS 56AP 674〜6)では、11月22日となっている。
現在でも歌われ演奏されるスタンダード・ナンバー。ドラマティックに始まる。ここでもソロはBG。
Record3B面1曲目「ピース・ブラザー」
スインギーなナンバー。短いイントロの後すぐにヴォーカルが始まる。アンサンブルが中心でソロはアルト・サックス(モンデロか)とBG(Cl)のみ。
<Date&Place> … 1939年11月11日、30日 ニューヨークにて録音
<Personnel> … ミルドレッド・ベイリー・アレック・ワイルダーズ・オーケストラ(Mildred Bailey accompaniedd by Alec Wilder's orchestra)
Record3 A-6.「ホールド・オン」(Hold on<)
こちらは鬼才と言われたアレック・ワイルダーの楽団との録音。楽器編成がユニークで、そのため余り聴いたことのないサウンドとなっている。イングリッシュ・ホーンを吹いているのは後に合唱団を率いて有名になるヒゲのオジサン、ミッチ・ミラーである。
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