マグシー・スパニア 1939年

Muggsy Spanier 1939

マグシー・スパニアズ・ラグタイム・バンド

マグシー・スパニアの言わずと知れた名盤である。拙ホームページで「ジャズ・レコードを年代順に聴く」シリーズを勝手に始めて以来初のLP単位での紹介となる。
僕が最も信頼するジャズ評論家故粟村政昭氏は、「彼の最高の作品は何といっても”Great 16”(本作)にとどめをさす。これは39年4月に瀕死の病床からカムバックして吹き込んだ演奏だけに、全編これ歓喜に満ちた極上のジャズ・ムードに貫かれている」と述べている。厳しい評価が常の氏としては珍しい手放しでの高評価である。
しかし師が語っている”Great 16”は左のジャケットでRCA Victorから1956年に発売されたいわゆるLPレコードである。1956年はもうLPレコードの時代に入っていた。さらにしかしこの録音は1939年なのである。つまり”Great 16”はSP盤で一度発売されたものの再編集盤なのである。全4セッション16曲が収録されているが、全セッションが1939年に行われたこともありでも何となく統一感がある。
それは下記<Contents>をご覧いただければわかるように、単に録音日順に並べたものではなく、この順で聴いていただくと良いですよという気持ちで編集されていることもあるのではないだろうか?
またこのレコードには気になるところがある。僕の保有しているレコードもオリジナル盤であるので、粟村師と同じものを聴いていることになると思うのだが、裏面の英文を見ると、16曲中9曲に「*」マークが付いている。では「*」マークは何を表すかというと、”Alternate takes”とあるのである。要は別テイクということだ。では何の別テイクかと言えば、既発売のSP盤ということになろう。別テイクがこれだけ入っていて素晴らしいのだ、本テイクは一体どんなに素晴らしいんだろうと思う。当時はオリジナルのSP盤も容易に買えた時代かもしれないが、現在これらのオリジナルSPを集めるのは至難の業であろう。別テイク集ではなく、本テイク集を編集してもらいたいものである。
最後に全セッションを通して計13名のミュージシャンが登場する。この内初登場が9人もいるのである。その9名は『ジャズ人名辞典』にも載らない、こういっては失礼だが2戦級のプレイヤーである。それでもバンドとしての演奏は傑作を創り上げているのである。名も無くても上手い人間はたくさんいるということなのだろう。
なお、右のHistoryから出ているCD2枚組には、”Great 16”から9曲が収録されている。

今回は正直迷った。何を迷ったかというと、LPレコード化を担当したプロデューサーが折角トータル・アルバムとして編集してくれたアルバムなのだから、録音順という基本方針は横において、アルバム収録順に楽しんで聴けばいいではないかという想いと「初志貫徹」との狭間で迷うのである。取り合えず以下演奏の紹介は、年代順に個人的に楽しんで聴くのは、トータル・アルバムとして収録順にということにしようと思う。

「Muggsy Spanier/The great 16」オリジナル盤レコード・ジャケット

<Date&Place> … 1939年7月7日 ニューヨークにて録音

<Personnel> … マグシー・スパニアズ・ラグタイム・バンド(Muggsy Spanier's ragtime band)

Bandleader & Cornetマグシー・スパニアMuggsy Spanier
Tromboneジョージ・ブルニーズGeorge Brunies
Clarinetロッド・クレスRod Cless
Tenor saxレイ・マッキンストリーRay McKinstry
Pianoジョージ・ザックGeorge Zack
Guitarボブ・キャシーBob Casey
Bassパット・パッチソンPat Pattison
Drumsマーティー・グリーンバーグMarty Greenberg

<Contents> … "Muggsy Spanier's ragtime band/The great 16!"(RCA LPM-1295)

B面7.サムデイ・スイートハートSomeday sweetheart
A面4.ザット・ダ・ダ・ストレインThat da da strain
B面3.ビッグ・バター・アンド・エッグ・マンBig butter and egg man
A面8.エクセントリックEccentric
「Muggsy Spanier/The great 16」A面ラベル

まずこの日の収録4曲は全て別テイクという表記がある。またこの日の録音はHistoryのCDには収録されていない。

B面7.「サムデイ・スイートハート」
多くのディキシー・バンドがレコーディングしているスタンダード的な曲。クラリネットが気持ち良さそうにメロディーを吹き、テナーがそれを受けてソフトなソロを取り、マグシーの登場となる。ここではミュート・プレイを披露している。ピアノ・ソロを挟んでディキシー風の合奏で終わる。
A面4.「ザット・ダ・ダ・ストレイン」
頭からディキシー調の曲。ソロは先ずクラリネット、アンサンブルを挟んでピアノ続いてマグシーそしてドラムスとアンサンブルのヴァ―スが入る。
B面3.「ビッグ・バター・アンド・エッグ・マン」
ルイ・アームストロングが1926年に録音したナンバー。サッチモを尊敬していたと言われるマグシーらしい選曲である。ソロはTs⇒P⇒Cor。マグシーはオープンでソロを取る。合奏があり、ジョージ・ブルニーズと思われるヴォーカルというか掛け声とマグシーの掛け合いが入ってエンディングにいたる。
A面8.「エクセントリック」
軽快なディキシー・ナンバー。ソロはクラリネット続いてマグシー、トロンボーン、ピアノと続き合奏となる。

「Muggsy Spanier/Pee Wee speaks」CD・ジャケット

<Date&Place> … 1939年11月10日 ニューヨークにて録音

<Personnel> … マグシー・スパニアズ・ラグタイム・バンド(Muggsy Spanier’s ragtime band)

Tenor sax … レイ・マッキンストリー ⇒ バーニー・ビリングス(Bernie Billings)
Piano … ジョージ・ザック ⇒ ジョー・ブシュキン(Joe Bushkin)
Drums … マーティー・グリーンバーグ ⇒ ドン・カーター(Don Carter)

<Contents> … "Muggsy Spanier's ragtime band/The great 16!"(RCA LPM-1295)&"MuggsySpanier_PeeWeespeaks"(History 20.3005-HI)

A面5.&CD1-2.シスター・ケイトI wish that I could shimmy like my sister Kate
B面8.&CD1-3.ディッパ―・マウス・ブルースDipper mouth blues
B面1.&CD1-1.アット・ザ・ジャズ・バンド・ボールAt the jazz band ball
B面4.ライヴリー・ステイブル・ブルースLivery stable blues
A面5.「シスター・ケイト」
マグシーがリードするアンサンブルの後ジョージ・ブルーズのヴォーカルが入る。ヴォーカルの後はマグシーのソロ、ピアノのソロの後アンサンブルになって終わる。
B面8.「ディッパ―・マウス・ブルース」
ジョー・キング・オリヴァーの作。ルイ・アームストロングがフレッチャー・ヘンダーソンの楽団で行った名演が有名。マグシーは、ミュートでのソロを披露する。ただ合奏をリードする時はミュートを外している。ソロはCl⇒P⇒Corの順。実に楽しい演奏だ。
B面1.「アット・ザ・ジャズ・バンド・ボール」
O.D.J.B.なども録音しているふるいディキシー・ナンバー。実に闊達でうきうきとするような演奏である。ソロはまずクラリネット、ピアノ、ベース、マグシー、ドラムスと続き合奏となる。
B面4.「ライヴリー・ステイブル・ブルース」
ディキー風の合奏が楽しいナンバー。マグシーのニューオリンズ伝統の「馬のいななき」などが聴かれる。ソロはテナー・サックス。CD未収録。

「Muggsy Spanier/The great 16」オリジナル盤レコード・B面ラベル

<Date&Place> … 1939年11月22日 ニューヨークにて録音

<Personnel> … マグシー・スパニアズ・ラグタイム・バンド(Muggsy Spanier’s ragtime band)

Tenor sax … バーニー・ビリングス ⇒ ニック・カイアッザ(Nick Caiazza)

<Contents> … "Muggsy Spanier's ragtime band/The great 16!"(RCA LPM-1295)&"MuggsySpanier_PeeWeespeaks"(History 20.3005-HI)

B面6.&CD1-4.リヴァーボート・シャッフルRiverboat shuffle
A面1.&CD1-5.リラクシン・アット・ザ・ツゥロRelaxin’ at the touro
A面6.&CD1-6.アット・サンダウンAt sundown
A面3.&CD1-7.ブルーイン・ザ・ブルースBluin’the blues
B面6.「リヴァーボート・シャッフル」
コルネットがリードする合奏の後短いピアノ・ソロ、マグシーのソロとなりそのままマグシーのリードする合奏となる。
A面1.「リラクシン・アット・ザ・トゥロ」
アルバム1曲目を飾るブルース。マグシーのエモーショナルなミュート・プレイ、続くピアノ、クラリネット、トロンボーンもしっとりした味を出しているが、終わりの部分を吹くマグシーのオープン・プレイは誠に力強い。このナンバーもCDに収録されている。
タイトルの「トゥロ(Touro)」は、マグシーが瀕死の状態で入院していた病院の名前。チャーリー・パーカーの「リラクシン・アット・ザ・カマリロ」の元ネタか?
A面6.「アット・サンダウン」
アップ・テンポのディキシー・ナンバー。まずソロを取るのはテナー・サックスで続いてクラリネット、ピアノと続き、ディキシー風の合奏で終わる。
A面3.「ブルーイン・ザ・ブルース」
これも典型的なディキシー風ブルース。ピアノは時折ブギ・ウギ調を交え楽しく展開する。これといったソロはなくほとんどがマグシーのリードするアンサンブルの曲。

「Muggsy Spanier/Pee Wee speaks」CD1枚目

<Date&Place> … 1939年12月12日 ニューヨークにて録音

<Personnel> … マグシー・スパニアズ・ラグタイム・バンド(Muggsy Spanier’s ragtime band)

Drums … ドン・カーター ⇒ アル・サイデル(Al Sidell)

<Contents> … "Muggsy Spanier's ragtime band/The great 16!"(RCA LPM-1295)&"MuggsySpanier_PeeWeespeaks"(History 20.3005-HI)

B面2.ダイナDinah
B面5.ブラック・アンド・ブルーBlack and blue
A面7.&CD1-8.ロンサム・ロードLonesome road
A面2.マンデイ・メイク・アップ・ユア・マインドMandy , make up your mind
B面2.「ダイナ」
ご存知ディック・ミネのヒット・ナンバー。途中でテンポ・ダウンしてマグシーのメロウなソロが入り、ヴォーカルが入る。このヴォーカルはメンバーの一人、ジョージ・ブルニーズが歌っているという。そしてマグシーのオープン・プレイでエンディングに向かう。この曲はCD未収録。
B面5.「ブラック・アンド・ブルー」
マグシーがテーマをオープンで吹き、テナー・ソロに移り、合奏の後ピアノ・ソロ、マグシーのミュート・ソロとなる。憂いを含んだナンバーである。CD未収録。
A面7.「ロンサム・ロード」
粟村氏はマグシーのミュート・プレイをユニークなものとして、その最高の「泣き」を聴くことができるナンバーと評価している。まずそのマグシーのミュート・ソロから始まる。続いてテナーのソロ、短いピアノ・ソロを挟み再びマグシーのソロとなる。後半の方がユニークさが際立っているように聴こえる。
A面2.「マンデイ・メイク・アップ・ユア・マインド」
この曲は最初からディキシー色満開である。マグシーがリードするアンサンブルの後、Ts⇒Cl⇒Cor(オープン)⇒Pとソロが続き、再び集団合奏で終わる。典型的なディキシー風ナンバー。CDには収録されていない。

このLPレコードは録音順ではなく、一つの作品としてA面1曲目から順番に聴いていった方が楽しい感じがする。

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