テディ・ウィルソン 1935年

Teddy Wilson 1935

テディ・ウィルソンはこの年一挙に受けに入る。7月からスイング時代の花形セッションと言われるブランズウィック・セッションが始まるが、その前もベニー・グッドマンなどいろいろなセッションに引っ張りだこで呼ばれていたのである。 「ザ・ビッグ・バンド・イーラ 第2集」レコード・ボックス

<Date&Place> … 1935年1月4日 ニューヨークにて録音

<Personnel> … ウィリー・ブライアント・アンド・ヒズ・オーケストラ(Willie Bryant and his Orchestra)

Band leader & Vocalウィリー・ブライアントWillie Bryant
trumpetロバート・チークRobert Cheekリチャード・クラークRichard Clarkエドガー・“プディング・ヘッド”・バトルEdger “Pudding head” Battle
Tromboneジョニー・ホウトンJohnny HaughtonR.H.ホートンR.H.Horton
Clarinet & Alto saxグリン・パクGlyn Paque
Alto sax & Baritone saxスタンリー・ペインStanley Payne
Tenor saxジョニー・ラッセルJohnny Russell
Pianoテディ・ウィルソンTeddy Wilson
Guitarアーノルド・アダムズArnold Adams
Bassルイ・トンプソンLouis Thompson
Drumsコジ―・コールCozy Cole

<Contents> … 「ザ・ビッグ・バンド・イーラ 第2集」(RCA RA-56)

record3.A面1.スローイン・ストーンズ・アット・ザ・サンThrowin’stones at the sun
record3.A面2.イッツ・オーヴァー・ビコーズ・ウィアー・スルーIt's over because we're through
record3.A面3.ア・ヴァイパーズ・モーンA viper's moan
A-1.[スローイン・ストーンズ・アット・ザ・サン]
Tpのエドガー・バトルの編曲によるナンバー。解説の大和氏によれば、このバンドのリズム・セクションの素晴らしさを充分に立証した演奏とのことで、ソロはクラーク(Tp)⇒ペイン(As)⇒バトル(Tp)⇒ウィルソン(P)⇒ラッセル(Ts)の順。特にバトルのブリリアントなソロ、スインギーなウィルソン、動的なラッセルのソロが充実している。
A-2.[イッツ・オーヴァー・ビコーズ・ウィアー・スルー]
当時の典型的なハーレム・スタイルによるトーチ・ソングだという。ウィリー・ブライアントが昔コンビを組んでいたレオナード・リードとの共作。34年にはタフト・ジョーダンのTpとヴォーカルをフューチャーしたチック・ウエッブ楽団の優れた録音もあった。
演奏は甘いテーマを縫ってラッセルが実に味のあるTs を展開し、リーダー、ブライアントが甘く暖かい喉を聴かせる。そしてオブリガートを付けるクラークのTpが良い。ここから楽しいリフ・アンサンブルをバックにウィルソンがアール・ハインズ風のタッチの素晴らしいソロを聴かせる。なおサビのAsはペインが担当。
A-3.[ア・ヴァイパーズ・モーン]
大和氏によれば、「Viper」とは麻薬耽溺者のことで、当時ジャズメンにマリファナが広がりつつあったことからこういう曲が出来たのだという。さらに氏は、編曲はエドガー・バトルでこの日の録音の中でもっと優れた演奏とし、先ずリズム・セクションがしっかりしており、プランジャー・ミュートをうまく使ったアンサンブルといい、ソリッドなリズムといい実に素晴らしい。R.H.ホートンのグロウルするプレイともう一人のホウトンとの掛け合いがラッセルのTsソロを挟んで行われる。ハインズ風のウィルソンの短いPソロを経て、バトルがここでも輝かしいソロを披露し、ペインのソロを経て演奏を終えている。語りは勿論ブライアント。 「ザ・ビッグ・バンド・イーラ 第2集」ウィリー・ブライアント面

<Date&Place> … 1935年5月8日 ニューヨークにて録音

<Personnel> … ウィリー・ブライアント・アンド・ヒズ・オーケストラ(Willie Bryant and his Orchestra)

trumpetロバート・チークRobert Cheekベニー・カーターBenny Carter
Tenor saxベン・ウエブスターBen WebsterIn

<Contents> … 「ザ・ビッグ・バンド・イーラ 第2集」(RCA RA-56)

record3.A面4.リガマロールRigamarole
record3.A面5.ロング・アバウト・ミッドナイト‘Long about midnight
record3.A面6.ザ・シーク The shiek
record3.A面7.ジェリー・ザ・ジャンカー Jerry the junker
A-4.[リガマロール]
演奏はストック・アレンジによるものだという。先ずアンサンブルがシャープであり、新加入のウエブスターのドライヴ感あふれるソロが聴きもので、ホウトン(Tb)、ウィルソン(P)、ホートン(ミュートTb)、アダムズ(Gt)、ウエブスター(Ts)、バトル(Tp)とソロが続く。
A-5.[ロング・アバウト・ミッドナイト]
ピアニストのアレックス・ヒルの作で、アレンジもヒルが手掛けている。アンサンブルからホウトンのオブリガードをを伴いながらブライアントが軽快に歌う。続いてバトルのミュートTp、ウエブスター張りに豪快に吹くラッセル(Ts)、ホートンの短いソロを経てアンサンブルで締める。
A-6.[ザ・シーク]
全ブライアント楽団の録音中1,2を争う出来映えを示す。ヘッド・アレンジによって演奏は進められ、ピアノのイントロから活き活きとしたリズムに乗って、ホートンのグロウルTbソロ、ウィルソン(P)、ウエブスター(Ts)のたくましいソロ、続いてドライヴ感溢れるラッセル(Ts)とアドリブが展開する。さらにバトルの歌心溢れるソロに続きラスト・コーラスはパク(Cl)がクライマックスへと盛り上げる。
A-7.[ジェリー・ザ・ジャンカー]
これは明らかにキャブ・キャロウェイの「ミニー・ザ・ムーチャー」や「キックイン・ザ・ゴーイング・アラウンド」の商業的成功を意識し、それにあやかろうとした作品。ブライアントとバンドメンのコーラスが同じような雰囲気を醸し出している。ソロはラッセル(Ts)、パク(Cl)、ウィルソン(P)と続く。パクのソロが秀逸。
「ザ・テディ・ウィルソン」レコード・ジャケット

1935年7月に始まったテディ・ウィルソンのブランズウィック・セッションは、スイング時代の花形セッションと言われる。レコードだけに限って言えば1933年にデビューしたばかりのウィルソンを中心において連続セッション・シリーズを企画するというのは僕などにはずいぶん大胆な企画だなぁと思える。ともかく1935年からスタートする連続セッションは、1939年1月まで全133曲の吹込みを行うが、その初年度1935年は計4回のセッションで、18曲がレコーディングされている。
かつて日本では、1968年にCBSソニーがLPレコード2枚組の「ザ・テディ・ウィルソン」(CBS SONY SONP 50332-33)を発売した。133曲に及ぶ「ブランズウィック・レコーディング」から32曲を厳選・収録し、世界に先駆けて完成したと自賛の帯封が付いており、発売月の『スイング・ジャーナル選定ゴールド・ディスク』を受賞している。僕も高校生の時この宣伝文句に載せられて発売されてすぐに購入した。当時の僕は殆どモダン・ジャズしか聴いたことがなく、珠玉の名演集と言われてもソロが短くてどうもあまり名演をたっぷり聴いたという気がしなかったのを覚えている。
ではこの2枚組が最もテディのブランズウィック・セッションを収集したものかと言えば実はそうではない。1968年以前に発売されていたビリー・ホリディのレコードの方が実は収録されている曲数は多いのである。というのはそもそもこの連続セッションは歌手を起用したセッションが多く、なかでも最も多いのがビリー・ホリデイで、既にビリー名義でレコードが出ていたのである。そしてこの「ザ・テディ・ウィルソン」というレコードは、基本的に歌手が参加していない吹込みを中心に構成されたものだからである。
ということでテディ・ウィルソンのブランズウィック・セッションは、ビリー・ホリデイのレコードと合わせて聴いていく必要がある。

<Date&Place> … 1935年7月2日 ニューヨークにて録音

<Personnel> … テディ・ウィルソン・アンド・ヒズ・オーケストラ(Teddy Wilson and his Orchestra)

Piano & Band Leaderテディ・ウィルソンTeddy Wilson
Trumpetロイ・エルドリッジRoy Eldridge
Clarinetベニー・グッドマンBenny Goodman
Tenor saxベン・ウエブスターBen Webster
Guitarジョン・トルーハートJohn Trueheart
Bassジョン・カービーJohn Kirby
Drumsコジー・コールCozy Cole
Vocalビリー・ホリディBillie Holiday
豪華な顔ぶれである。初登場はロイ・エルドリッジとコジー・コール。スイング時代最高のトランペット奏者と言われるロイ・エルドリッジの多分初レコーディングである。エルドリッジのディスコグラフィーでは、初録音は1936年2月5日自己名義のレコードとなっているが、それよりも半年早い。コジー・コールは、1930年ジェリー・ロール・モートンとのレコーディングがデビューだったようだが、そのレコードは持っていない。拙HPでは初である。

<Contents> … 「ビリー・ホリディ物語」(CBS SONY SOPH 61-62)

record1-3.月に願いをI wish on the moon
record1-4.月光のいたずらWhat a little moonlight can do
record1-5.ミス・ブラウンを貴方にMiss Brown to you
record1-6.青のボンネットA sunbonnet blue
「ビリー・ホリディ物語」解説の大和昭氏は、「リズム隊の躍動感は見事であり、生き生きとした雰囲気に満ちている。エルドリッジの鋭さ、ウエブスターの豪快さ、グッドマンの軽妙さとフロント・ラインの3人が三者三様の素晴らしい出来を示している」と書いているが、確かにこれぞスイング時代最高のコンボ演奏の一つと言えると思う。
record1-3.[月に願いを]
もう一人の解説者、大橋巨泉氏は、初録音から2年がたち、ビリーもグッと落ち着きを見せるとし、グッドマンも未完成だが、トーンに色気があり、歌のバックもいい、この二人は恋仲だったかもしれないと書いている。確かに恋仲だったのであろう。それはビリー自身が自伝『奇妙な果実』(油井正一、大橋巨泉訳 晶文社)で明らかにしていることである。またラスト16小節をリードするエルドリッジは抜群である。
record1-4.[月光のいたずら]
軽快なテディのイントロに乗って出るBGのソロがいい。前半は中・低音を使い、後半は高音部でぐいぐいとスイングする。大和氏、巨泉氏ともBG最高のソロの一つとしているが確かに素晴らしい。この後のビリーの歌唱もまた素晴らしく、それにつられてかウエブスターも素晴らしい吹奏ぶりをしめす。
原曲の譜面を確認した巨泉氏は、全くつまらない流行歌をここまで名作に仕立て上げたのはこの面子だからであると述べている。
record1-5.[ミス・ブラウンを貴方に]
この曲でBGはイントロは高音で、メロディは中・低音でと展開を変えており、彼の好調ぶりを示している。ビリーとウエブスターが、レスターとのように溶け合っていないが、ウィルソン、エルドリッジが良くコールのブラシでのドラミングも素晴らしい。
record1-6.[青のボンネット]
この曲録音前になぜかBGは帰ってしまい、参加していないという。ウエブスター、エルドリッジの出来が素晴らしい。

<Date&Place> … 1935年7月13日 ニューヨークにて録音

<Personnel> … ベニー・グッドマン・トリオ(Benny Goodman Trio)

Clarinet & Band Leaderベニー・グッドマンBenny Goodman
Pianoテディ・ウィルソンTeddy Wilson
Drumsジーン・クルーパGene Krupa

<Contents> … 「コンプリート・ベニー・グッドマン」(BMG BVCJ-7030)&“Giants of Jazz/Benny Goodman”(Time-Life)

CD1-19、record1 B-5.君去りし後After you’ve gone
CD1-20、record1 B-6.身も心もBody and soul
CD1-21.フーWho
CD2-1.サムディ・スィートハートSomeday sweetheart
この7月13日の初のトリオ・セッションは内容の素晴らしさもさることながら、歴史的にも非常に重要なものとされる。野口久光氏の解説によれば、それは「白人ミュージシャンと黒人ミュージシャンとの共演は、レコードの上では度々行われていて別に問題にはならなかったが、同じステージで共演することは黒人差別意識を持った白人の妨害を恐れて一種タブーのようになっていたのだという。しかしBGは黒人ピアニスト、テディ・ウィルソンを自分のグループの一員にしたいと思い、まずレコードの上でその共演を果たしたのだった。それが即ちBG、ウィルソン、ジーン・クルーパのトリオによる初吹込みとなったこの4曲である」という。
そして、この見返りにテディ・ウィルソンのブランズウィックへの吹込みにBGがサイドマンとして参加することになる。
このトリオの誕生は、BGがニューヨークのフォレスト・ヒルズにあるレッド・ノーヴォとミルドレッド・ベイリーの邸で行われたパーティーで座興的に共演してすっかり惚れ込んだのだという。その時はたまたま居合わせたミルドレッドの甥がドラムを叩いたのだが、それでは不十分なのでバンドのドラマージーン・クルーパを加えてトリオにすることにしたのだという。
さらに野口氏は、「この吹込みは簡単な打ちあわせとキーの取り決めだけで演奏したジャム・セッションともいえるものだったが、最上級のインプロヴァイザー三者によるテクニック、精神性(ジャズ・スピリット)を一丸としたプレイには、ジャム・セッションにありがちなルーズさもなく、完璧な構成美をも発揮している。
このBGトリオ以前に、これだけ質の高いコンボ演奏は少なくともレコードには見られなかった。黒人ピアニスト、テディ・ウィルソンには、珍しく黒人的な一種の訛りがなく、ソフィスティケイトされた彼のピアノは、BGのクラリネットに見事にフィットしている。このトリオの発想は勿論BGのものであり、彼はクラリネットにリーダーとしての貫禄を見せているが、ウィルソン、クルーパを同等同格にプレイさせていることも見逃せない」と述べている。
確かにこのトリオ演奏は重要なものという評価が定着しているようで、以前取り上げたTime-Life社で出している”Giants of jazz”シリーズのベニー・グッドマンのボックスは、レコード会社を跨いでいるので1927年から1946年まで膨大な吹込みがある中から40曲が取り上げられているが、1935年のこのトリオの演奏が2曲(「君去りし後」と「身も心も」)も選ばれている。
今の感覚で聴くと特段目新しいところのないトリオ演奏のように聴こえるが、これまでレコードを年代順に聴いてきた耳からするとかなり斬新な演奏である。つまりこの演奏が次世代のスタンダードになって行ったということが言えると思う。4曲ともそれぞれ聴かせ処のある素晴らしい演奏である。テディ・ウィルソンは、ピアノについてはつい最近までストライド奏法かハインズ系かなどという話とは程遠く一人モダンにまで通用するようなスイング・スタイルである。この人はどこでこういうスタイルを身に着けたのだろうか?BGも負けじとジャズ魂を込めて吹き上げる。クルーパはバックに廻っている時の奏しているのは「ブラシ」ではないだろうか?この時代ブラシ・プレイというのは聴いたことがない。誰かドラム奏法におけるブラシ・プレイの歴史を書いてくれないかなぁ。
CD1-19.[君去りし後]
BGは最初からエモーショナルなプレイを展開する。続くテディの短いが端正なソロは聴き応えがある。
CD1-20.[身も心も]
現在もよく歌われ演奏されるスタンダード・ナンバー。初めにテディがソロを取り、続くBGはストレートにメロディを吹く。再びテディのソロとなり、後はBGとテディが短いソロを取り合う。
CD1-21.[フー]
BGとテディのソロの合間にクルーパが見事なブラシによるドラム・ソロを披露する。この時代ブラシによるソロは珍しいのではないだろうか?
CD2-1.[サムディ・スィートハート]
ミディアム・アップのスインギーなナンバー。端正なテディのピアノが良く歌っており、BGのクラリネットよくマッチして上品なスイングを作り上げている。クルーパは途中からスティックでたたいている。
「ビリー・ホリディ」レコード第1集 1面

<Date & Place> … 1935年7月31日 ニューヨークにて録音

<Personnel> … テディ・ウィルソン・アンド・ヒズ・オーケストラ(Teddy Wilson and his orchestra)

Band leader & pianoテディ・ウィルソンTeddy Wilson
Trumpetロイ・エルドリッジRoy Eldridge
Clarinetセシル・スコットCecil Scott
Alto saxヒルトン・ジェファーソンHilton Jefferson
Tenor saxベン・ウエブスターBen Webster
Guitarローレンス・ルーシーLawrence Lucie
Bassジョン・カービーJohn Kirby
Drumsコージー・コールCozy Cole
Vocalビリー・ホリディBillie Holiday

<Contents> … 「ビリー・ホリディ物語 第1集」(CBS SONY SOPH 61-62)&「ザ・テディ・ウィルソン」(CBS SONY SONP 50332-33)

BH A-7.こんな夜にこんな月ならWhat a night , what a moon , what a girl
BH A-8.涙かくして街を行くI'm painting the town red
BH A-9.燃えている私It's too hot for words
TW A-5.スィート・ロレインSweet Lorraine
2度目の録音は7月末に行われた。2度目のレコーディングは、さすがに2度目につき合わせるのは無理と判断されたのかクラリネットにはセシル・スコットが加わっている。ディスコグラフィーによれば、この日は全6曲の録音が行われたが、ビリー・ホリディが参加したのは3曲である。
そしてビリーの加わっていない3曲の内の1曲「スィート・ロレイン」のみが「ザ・テディ・ウィルソン」に収録されている。残り2曲、「ライザ」と「ロッゼッタ」であるが、「ライザ」はオクラ入りとなり、「ロッゼッタ」は未聴である。
まず、リーダーのウィルソン、ウエブスター、コールの3人はウィリー・ブライアント楽団からの参加で、セシル・スコットは35、6年当時ヘンリー・レッド・アレンのレコーディングに参加していたという。ジェファーソンは当時はフレッチャー・ヘンダーソンやチック・ウエッブの楽団でプレイしていた名手だという。
ビリーの加わった3曲に関して、解説の大和明氏は「ここでも取り上げられたナンバーは取るに足らない流行歌である」と述べ、さらに「『こんな夜にこんな月なら』も『涙かくして街を行く』も、最初のコーラスをアンサンブルとウィルソンのピアノで8小節或いは4小節ずつ交互に進行していくという構成が取られ、ウィルソンのプレイを引き立たせる工夫がされている。」
曲の解説はビリーの大ファンである故大橋巨泉氏が担当している。巨泉氏はここでもビリーをべた褒めで、演奏はコーニー(古臭い)がビリーだけは新しいとしている。僕はこの時代はまだスイングの爆発前夜であり、当時としてかなり高水準の演奏だと思うし、逆にビリーのかすれた声のはすっぱな歌い方が好きではない。「すれっからし」という言葉しか浮かんでこないが、自分に正直で「かまとと」ぶっていないところが良いという感想もあるだろうとは思う。
「ザ・テディ・ウィルソン1」レコード 1A面ラベル A-7.[こんな夜にこんな月なら]
ピアノがリードするアンサンブルが小気味よくスイングする。その後ビリーの歌が入り、ジェファーソン(As)、スコット(Cl)、ウィルソン(P)、エルドリッジ(Tp)、ウエブスター(Ts)と続き、再度スコットのリードするアンサンブルで終わる。顔見世的ナンバーだがそれなりに楽しいと僕は思う。
A-8.[涙かくして街を行く]
最初に触れたようにピアノとアンサンブルの交互の進行の後、短いAs、Tpソロの後歌が入る。ここでのヴォーカルは迫力がある。そしてそれを受けたエルドリッジのTpソロも素晴らしい。
A-9.[燃えている私]
タイトル通りかなり大胆で卑猥な内容で、ビリーのヴォーカルも何やら反抗的だとは巨泉氏。ヴォーカル後のAs、Cl、Ts、Tpと短いソロが続きその後はアンサンブルで締め括る。
A-5.[スィート・ロレイン]
2度目のブランズウィック・セッションで唯一「ザ・テディ・ウィルソン」に収録されているナンバー。またブランズウィック・セッションで初めて歌手を入れないで録音を行ったナンバーでもある。エルドリッジ(Tp)とジェファーソン(As)が第1コーラスをほとんどストレート・メロディで軽やかに演奏し、第2コーラスはリリース部分のウエブスター(Ts)のソロを挟みウィルソンがスイートでロマンティックなソロを取る。ウィルソンの後にはもう一度ウエブスターが出るが後年のウエブスター節は希薄で普通に吹いている感じがする。ベースのカービーはやはり只者ではないことが窺い知れる。
[Mildred Bailey/Her greatest performances]レコード・ジャケット

<Date&Place> … 1935年9月20日 ニューヨークにて録音

<Personnel> … ミルドレッド・ベイリー・アンド・ハー・スイング・バンド(Mildred Bailey and her swing band)

Vocalミルドレッド・ベイリーMildred Bailey
Trumpetゴードン・グリフィンGordon Griffin
Tenor saxチュー・ベリーChu Berry
Pianoテディ・ウィルソンTeddy Wilson
Xylophoneレッド・ノーヴォRed Norvo
Guitarディック・マクドノフDick McDonough
Bassアーティー・バーンスタインArtie Bernstein
Drumsエディ・ダガーティEddie Dougherty

<Contents> … "Mildred Bailey/Her greatest performances"(Columbia JC3L-22)

Record1 A-1.ホエン・デイ・イズ・ダンWhen day is done
Record1 B-3.サムデイ・スイートハートSomeday sweetheart
ミルドレッド・ベイリーとレッド・ノーヴォ

写真右はミルドレッド・ベイリーとレッド・ノーヴォ。二人はどちらもポール・ホワイトマンの楽団に在籍しており、1933年に結婚している。この録音は僕が持っている内では最も初期夫婦共演である。 A-1.[ホエン・デイ・イズ・ダン]
軽快なスイング・ナンバー。Tpがリードする合奏の後、ミルドレッドはノーヴォのオブリガードをバックに軽快に歌う。ソロはテディ(P)、マクドノフ(Gt)チュー(Ts)グリフィン(Tp)が取り、夫君のノーヴォのソロはない。
B-3.[サムデイ・スイートハート]
こちらもミディアム・テンポだが、ミルドレッドの心を込めた歌唱が心に響く。ソロはテディ(P)が素晴らしい長尺のソロを取る。聴き応えのある作品。
「ビリー・ホリディ」レコード第1集 2面

<Date & Place> … 1935年10月25日 ニューヨークにて録音

<Personnel> … テディ・ウィルソン・アンド・ヒズ・オーケストラ(Teddy Wilson and his orchestra)

Band leader & pianoテディ・ウィルソンTeddy Wilson
Trumpetロイ・エルドリッジRoy Eldridge
Tromboneベニー・モートンBenny Morton
Tenor saxチュー・ベリーChu Berry
Guitarデイヴ・バーバーDave Barbour
Bassジョン・カービーJohn Kirby
Drumsコージー・コールCozy Cole

<Contents> … 「ビリー・ホリディ物語 第1集」(CBS SONY SOPH 61-62)

B面1.日がな一日Twenty=four hours a day
B面2.ヤンキーはショボかったYankee Doddle never went to town
B面3.イーニー・ミーニー・マイニー・モーEeny meny miney mo
B面4.君を得たならIf you were mine
このセッションで注目されるのはテナー・サックスのチュー・ベリーで、同じホーキンズ派でも前回までのウエブスターは豪放さが持ち味だが、一方ベリーは豪快な中にもまろやかなソフト・トーンを持っているとは解説の大和氏。しかし前回までのウエブスターもそれほど豪放に吹いているわけではないと思うのだが。それにTbのベニー・モーテンもいい味を出していると思う。
B-1.[日がな一日]
いきなり出てくるチュー・ベリー、そしてモーテン、ウィルソン、エルドリッジなど短いが素晴らしいソロの連続である。曲は愚作で、ビリーもスイングしているものの手の施しようがないと巨泉氏は書くが、インストの素晴らしさで元は取れたと思うよ。
B-2.[ヤンキーはショボかった]
解説氏は、これも当時はやった凡庸な流行歌の一つであるが、ビリーの独特の遅れたノリが聴きもので、サビの終わりに例のヴィブラートを聴かせてくれるという。スケールの大きいモーテンのソロの方が聴きもののような気がするが。
B-3.[イーニー・ミーニー・マイニー・モー]
この曲は少し後の11月22日にヘレン・ウォードのヴォーカルでベニー・グッドマン楽団も録音している。当時の流行歌だったのだろうか?「これも愚曲の典型でビリーの誰も真似ることのできない「乗り」を楽しむしかない」とは巨泉氏。僕はモーテンとウィルソン、エルドリッジ、ベリーのソロ、及びバックのコールのドラミングなど素晴らしいので可。
B-4.[君を得たなら]
「トロンボーンのイントロを受けてのウィルソンのソロは、彼の生涯の最高の一つであろう。歌い方、乗り方、非の打ちようがない」とは巨泉氏。正確には「トロンボーンのイントロを受けて一瞬トロンボーンのつなぎがありヴォーカルの前の」ピアノ・ソロのことであろう。さらに氏は続けて「そしてああビリー!この限りない憧れをたたえた名唱をなんと表現したらいいのだろう。後半の「Yes」だけでも僕は胸があつくなる」と感極まっている。確かに熱演で内容も素晴らしいことは、僕にも分かる。

4度目のレコーディングは、12月の初めに行われた。全4曲が録音されたが、その内3曲にビリーが参加している。
「ビリー・ホリディ」ライナー・ノート

<Date & Place> … 1935年12月3日 ニューヨークにて録音

<Personnel> … テディ・ウィルソン・アンド・ヒズ・オーケストラ(Teddy Wilson and his orchestra)

Band leader & pianoテディ・ウィルソンTeddy Wilson
Trumpetディック・クラークDick Clark
Clarinetトム・メイシーTom Macey
Alto saxジョニー・ホッジスJohnny Hodges
Guitarデイヴ・バーバーDave Barbour
Bassグラチャン・モンカーGrachan Moncur
Drumsコージー・コールCozy Cole

<Contents> … 「ビリー・ホリディ物語 第1集」(CBS SONY SOPH 61-62)&「ザ・テディ・ウィルソン」(CBS SONY SONP 50332-33)

BH B-5.ジーズン・ザッツン・ゾーズThese‘n’That‘n’those
BH B-6.つき落されてYou let me down
BH B-7.リズムまき散らしSpleadi'n rhythm around
TW A-6.シュガー・プラムSugar plum

解説大和明氏によれば、この日のセッションはエリントン楽団のジョニー・ホッジスに焦点を合わせるように行われたという。というのは他のフロント・ラインを構成するディック・クラーク、トム・メイシーというのはあまり名の知れたプレイヤーではないからであるという。
B-5.[ジーズン・ザッツン・ゾーズ]
ウィルソンのイントロからテーマを吹くホッジスはさすがの貫禄であると巨泉氏は書くがこの頃はまだホッジスは青二才同然だったのではないかと思う。後年のネーム・バリューで聴き過ぎではないか。
B-6.[つき落されて]
ホッジスのドラマティックなソロを受けて歌い出すビリーは、抑えた歌唱が光っていると思う。ウィルソンのソロも良いが、バーバーのアコースティック・ギターでのソロは珍しいものであり、聴き応えもある。
B-7.[リズムまき散らし]
当時よくあったパターンの曲であるという。メイシーのClはグッドマンによく似ている。そして続くホッジスのソロも良いが、さらに続くクラークのTpソロはエルドリッジに比べると迫力がかけるのがよく分かるという。
A-6.[シュガー・プラム]
メイシーとバーバーが白人で白黒混合コンボという編成である。やはりここでの聴きものは、奔放なホッジスのソロで、クラーク(Tp)やメイシー(Cl)のソロに比べるとその自信に満ち溢れたプレイぶりに驚かされる。

[Mildred Bailey/Her greatest performances]1枚目B面

<Date&Place> … 1935年12月 ニューヨークにて録音

<Personnel> … ミルドレッド・ベイリー・アンド・ハー・アレイ・キャッツ(Mildred Bailey and her Alley cats)

Vocalミルドレッド・ベイリーMildred Bailey
Trumpetバニー・ベリガンBunny Berigan
Alto saxジョニー・ホッジスJohnny Hodges
Pianoテディ・ウィルソンTeddy Wilson
Bassグラチャン・モンカーGrachan Moncur

<Contents> … "Mildred Bailey/Her greatest performances"(Columbia JC3L-22)

Record1 B-4.ハニーサックル・ローズHoneysuckle rose
Record1 B-5.ウィロウ・トゥリーWillow tree
Record1 B-6.スクイーズ・ミーSqueeze me
Record1 B-7.ダウンハーテッド・ブルースDownhearted blues
何といっても豪華なメンバーである。
B-4.[ハニーサックル・ローズ]
ミルドレッドはヴァースから歌っているが、この曲のヴァースは初めて聴いた。ソロはホッジス(As)、ベリガン(Tp)が取る。ベリガンは調子が悪かったのだろうか?あまり良くない。
B-5.[ウィロウ・トゥリー]
ホッジスのAsソロで始まるブルージーなナンバー。ヴォーカルのオブリガードはベリガン。ソロはテディ(P)、続いてベリガンにホッジスが絡むという展開がありヴォーカルに戻る。
B-6.[スクイーズ・ミー]
ベリガンのTpで始まり、ヴォーカルに入る。ソロはテディ(P)。ミルドレッドのヴォーカルは力が入っていることは分かるが、少し空回りしている感じがする。
B-7.[ダウンハーテッド・ブルース]
黒人ブルース・シンガーアルバータ・ハンターが作詞・自演し、1923年ベッシー・スミスのデビュー・レコードで大ヒットしたナンバーを白人のミルドレッドが歌っている。どうもこの頃彼女はこういう黒っぽいものに挑戦していることが多く見受けられるが、当時はどう受け止められていたのだろう?僕は成功しているようには聴こえないが。

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