トミー・ドーシー 1936年
Tommy Dorsey 1936
前年1935年の春に兄のジミーとケンカ別れしたトミー・ドーシーはバンドをたたもうとしていたジョー・ヘイムズのバンドを引き継ぎ、自分のバンドに仕立て直していく。それは実にお素早い行動で、9月にはレコーディングを開始し、レコーディングや各ボールルームなどへの出演など活発な活動を行っている。
1935年から1936年にかけてトミーはバンドメンの充実を企図し、バート・ブロックのバンドから男性歌手のジャック・レナード、Tp奏者兼歌手兼アレンジャーのアクセル・ストーダル(Axel "Odd" Stordahl)、Tp奏者のジョー・バウアーを引き抜いた。この3人が"Three Esquires"と名乗るコーラス・トリオを結成する。この3人が加わった演奏は1月30日にウォルドルフ・アストリア・ホテルからNBCからラジオ放送された。
さらにトミーは、バンドのメンバーからソロイストを7人チョイスし、女性歌手のイーディス・ライトを添えて、「クラムベイク・セヴン」(Clambake seven)を結成し、セミ・ディキシーランド・スタイルのジャズを演奏した。これはボブ・クロスビーが自分のバンド内で「ボブ・キャッツ」(Bob cats)なる小グループを作り本格的なディキシーランド・ジャズを演奏したのと似ていると言えば言える。
僕が持っている1936年の録音は3月に行われたその「クランベイク・セヴン」による演奏からである。僕の知る限りこれが「クランベイク・セヴン」による初録音である。
<Date&Place> … 1936年3月27日 ニューヨークにて録音
<Personnel> … トミー・ドーシー・アンド・ヒズ・クランベイク・セヴン(Tommy Dorsey and his Clambake seven)
<Contents> … 「オリジナル・トミー・ドーシー・ベスト・コレクション」(RCA RA-9007-08)
record1 A-3.[リズム](Rhythm saved the world)
僕の持っている前回録音から半年後の録音で、Tpにカミンスキー、Drにタフを入れバンドの強化が実行された形になっている。ただしこれは『クラムベイク・セヴン』と名付けられたピック・アップ・メンバーによるもので、本体のオーケストラも同様にメンバー・チェンジが行われたのであろう。『クラムベイク・セヴン』はいささかコマーシャルなディキシー演奏を行ったと粟村師は書いているが、実際に演奏を聴いてみるとその通りインスト部分はディキシーで、ただヴォーカルの入るディキシーというのは聴いたことがなく、そういう意味ではスイングとディキシーのコラボとでも言うしかないような出来映えである。曲は1月にルイが録音した”Rhythm saved the world”。ライトは、ヴォーカルだけではなく、語りでもいい味を出している。
<Date&Place> … 1936年4月3日 ニューヨークにて録音
<Personnel> … トミー・ドーシー・アンド・ヒズ・オーケストラ (Tommy Dorsey and his orchestar)
<Contents> … 「オリジナル・トミー・ドーシー・ベスト・コレクション」(RCA RA-9007-08)&「ジャズ・ヒストリカル・レコーディング・シリーズ/トミー・ドーシー 1935 to 1939」(HR-125-JK)
| record1 A-4. | ロイヤル・ガーデン・ブルース | Ryal garden blues |
同曲が2種類のレコードに収録されている。「オリジナル・トミー・ドーシー・ベスト・コレクション」はヴィクター系なので不思議はないが、「ジャズ・ヒストリカル・レコーディング・シリーズ/トミー・ドーシー 1935 to 1939」はコロンビアから出ているのが不思議である。このコロンビア盤はベースがビンビン響いて音はいいのだが、タイトルに「1935 to 1939」とあるが、1935年の録音は1曲も収録されていない不思議なレコードである。
曲はこれもルイなどで有名なスタンダードのディキシー・ナンバー。ここでは豪快かつワイルドなビッグ・バンド・ジャズに仕上げているとは解説氏。しかし曲調がディキシーであることは覆うべくもない。トミーはディキシーが好きだったのだろうか?Tb(ドーシーか?)、Cl、Tsなどが短いソロを取っている。通して聴くと不思議なナンバーだ。
<Date&Place> … 1936年4月15日 ニューヨークにて録音
<Contents> … 「オリジナル・トミー・ドーシー・ベスト・コレクション」(RCA RA-9007-08)&「ジャズ・ヒストリカル・レコーディング・シリーズ/トミー・ドーシー 1935 to 1939」(HR-125-JK)
| record1 A-5. | スターダスト | Stardust | Tommy Dorsey and his orchestara |
| record1 A-6. | コッドフィッシュ・ボール | At the codfish ball | Tommy Dorsey and his Clambake seven |
| A-2. | ジャダ | Jada |
<Personnel>
この日ディスコグラフィーによれば、3曲がレコーディングされており、その3曲は2曲が「オリジナル・トミー・ドーシー・ベスト・コレクション」に、1曲が「ジャズ・ヒストリカル・レコーディング・シリーズ/トミー・ドーシー 1935 to 1939」に収録されている。ところがメンバーについてデータごとに記載が異なるのである。
まず「オリジナル・トミー・ドーシー・ベスト・コレクション」では、「スターダスト」が<トミー・ドーシー・アンド・ヒズ・オーケストラ(以下Orc と略)>で、「コッドフィッシュ・ボール」は<クランベイク・セヴン(以下C7 と略)>となっていて、「ジャダ」は「ジャズ・ヒストリカル・レコーディング・シリーズ/トミー・ドーシー 1935 to 1939」では<トミー・ドーシー・アンド・ヒズ・オーケストラ>となっている。ところがディスコグラフィーでは、3曲とも<クランベイク・セヴン>となっている。表にすると次のようになる。表では「オリジナル・トミー・ドーシー・ベスト・コレクション」をBC、「ジャズ・ヒストリカル・レコーディング・シリーズ/トミー・ドーシー 1935 to 1939」をHR、ディスコグラフィーをDiscoと略す。
| | BC「スターダスト」C7 | | BC「コッドフィッシュ」Orc | | HR「ジャダ」Orc | | Disco3曲ともC7 |
| Trumpet | | Max Kaminsky | | Max Kaminsky | | Max Kaminsky | | Max Kaminsky |
| Trumpet | | Sam Skolnick | | | | Sam Skolnick |
| Trumpet | | Joe Bauer | | | | Joe Bauer |
| Trombone | | Tommy Dorsey | | Tommy Dorsey | | Tommy Dorsey | | Tommy Dorsey |
| Trombone | | Ben Pickering | | | | Ben Pickering | | |
| Trombone | | | | | | Walter Mercurio | | | |
| Clarinet | | | | Joe Dixon | | Joe Dixon | | Joe Dixon |
| Alto sax | | | | | | Fred Stulce | | |
| Alto sax | | | | | | | | | |
| Tenor sax | | | | | | Billy Bunch | |
| Tenor sax | | | | Bud Freeman | | Sid Block | | Bud Freeman |
| Piano | | Walter Jones | | Dick Jones | | Dick Jones | | Dick Jones |
| Guitar | | William Schaeffer | | William Schaeffer | | William Schaeffer | | William Schaeffer |
| Bass | | Gene Traxler | | Gene Traxler | | Gene Traxler | | Gene Traxler |
| Drums | | Dave Tough | | Dave Tough | | Dave Tough | | Dave Tough |
| Vocal | | Edythe Wright | | Edythe Wright | | | |
とかなり異なるのである。勿論どれが正しいか僕には決め手がないので、それぞれを記しておこう。
record1 A-5.[スターダスト]
レコードの解説が正しければ、クラリネット、サックスというリード楽器が全く加わっていないことになっているが、どう聴いてもアンサンブルにはリードが加わっているようにしか聴こえない。当時ビッグ・バンドが競って録音していたというホーギー・カーマイケルの名歌曲。出だしのTbが美しい音色を響かせる。ライトのヴォーカルもグッドである。
record1 A-6.[コッドフィッシュ・ボール]
ポピュラー・ソングで、クラムベイク・セヴンによる傑作の一つと解説文には書いてあるが、データではオーケストラになっている。これは楽しいディキシーでライトのヴォーカルが良いし、フリーマンのソロ、カミンスキーのTpもさすがの出来映え。
A-2.[ジャダ]
ミディアム・アップ・テンポのスインギーなナンバー。アンサンブルの後、Tb、Ts、Tpのソロが入り、アンサンブルを挟んで再びTbがソロを取りエンディングに向かう。
<Date&Place> … 1936年10月18日 ニューヨークにて録音
<Personnel> … トミー・ドーシー・アンド・ヒズ・オーケストラ (Tommy Dorsey and his orchestar)
| | ベスト・コレクション | | ヒストリカル・レコーディング | | ディスコグラフィー |
| Trumpet | | Max Kaminsky | | Max Kaminsky | | Max Kaminsky |
| Trumpet | | Steve Lipkins | | Steve Lipkins | | Steve Lipkins |
| Trumpet | | Joe Bauer | | Joe Bauer | | Joe Bauer |
| Trombone | | Tommy Dorsey | | Tommy Dorsey | | Tommy Dorsey |
| Trombone | | Lee Jenkins | | Les Jenkins | | Les Jenkins |
| Trombone | | | | Walter Mercurio | | Walter Mercurio |
| Clarinet | | | | Joe Dixon | | Joe Dixon |
| Alto sax | | | | Fred Stulce | | Fred Stulce |
| Alto sax | | | | Clyde Rounds | | Clyde Rounds |
| Tenor sax | | | | Billy Bunch | |
| Tenor sax | | | | Bud Freeman | | Bud Freeman |
| Piano | | Walter Jones | | Dick Jones | | Dick Jones |
| Guitar | | William Schaeffer | | Carmen Mastren | | Carmen Mastren |
| Bass | | Gene Traxler | | Gene Traxler | | Gene Traxler |
| Drums | | Dave Tough | | Dave Tough | | Dave Tough |
この曲はコロンビア盤にも収録されているが、ヴィクター盤「ベスト・コレクション」とではパーソネルが大きく異なる。これまた判断材料がないので、双方を記載しておくことにする。
なお「RCAジャズ栄光の遺産シリーズ/ザ・サウンド・オブ・スイング」(RCA RA-60-68)にも収録されているが、「遺産シリーズ」には元々録音データがついていない。ややこしいので収録アルバム2種だけを掲げることにした。
<Contents> … 「オリジナル・トミー・ドーシー・ベスト・コレクション」(RCA RA-9007-08)&「ジャズ・ヒストリカル・レコーディング・シリーズ/トミー・ドーシー 1935 to 1939」(HR-125-JK)
record1 A-7.[メイプル・リーフ・ラグ](Maple leaf rag)
ご存知スコット・ジョプリン作のラグタイムの傑作。パーソネル記載の食い違いが激しいが、それは演奏者側には何ら責任がない。こういうピアノ曲に挑戦するというのは素晴らしい。実に聴き応えがある作品に仕上がった。
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