ビリー・ホリデイ 1937年

Billie Holiday 1937

ビリーの自伝『奇妙な果実』

今回は、ビリー・ホリデイの1937年の録音を聴いていこう。この年はテディ・ウィルソンのブランズウィック・セッション以外にビリー自身名義の録音も増える。またジョン・ハモンド氏の勧めで、37年3月から約1年間カウント・ベイシー楽団に専属女性ヴォーカリストとして参加するようになった。それと前後して出会ったレスター・ヤングとのコラボレーションはジャズ史上最高のコラボの一つと言われるようになる。ビリーとレスターの出会いは、ビリーの自伝『奇妙な果実』によれば、ジャム・セッションの場だったいう(P63)。
しかしベイシー楽団に入団する時期である3月1日に父のクラレンス・ホリデイが亡くなる。上記『奇妙な果実』では、1937年2月ニュー・ヨークのアップタウン・ハウスに出演している夜、ステージの10分前に電話に呼ばれた。テキサス州ダラスからの長距離電話で、全く冷たい声が「クラレンス・ホリデイは今亡くなりました」と告げたという(P88〜)。ちょっと記述が合わないところもあるが、ビリーの思い違いであろう。
「ビリー・ホリディ」レコード第2集」1枚目A面

<Date & Place> … 1937年1月12日 ニューヨークにて録音

<Personnel> … ビリー・ホリディ・アンド・ハー・オーケストラ(Billie Holiday and his orchestra)

Band leader & Vocalビリー・ホリディBillie Holiday
Trumpetジョナ・ジョーンズJonah Jones
Clarinet & Alto saxエドガー・サンプソンEdger Sampson
Tenor saxべン・ウエブスターBen Webster
Pianoテディ・ウィルソンTeddy Wilson
Guitarアラン・リュースAllan Reuss
Bassジョン・カービーJohn Kirby
Drumsコージー・コールCozy Cole

<Contents> … 「ビリー・ホリディ物語 第2集」(CBS SOPH 63-64)

record3.A-4誰も知らないOne never knows , does one ?
record3.A-5恋に寒さを忘れI've got my love to keep me warm
record3.A-6口でいえない心のうちIf my heart could only talk
record3.A-7夢の中でもPlease keep me in your dreams

パーソネルを見るとGtのリュースが唯一白人の参加で珍しい。サンプソンの参加も意外だが、多分それほど大きな意味合いはなく、「明日ビリーの吹込みに来れる人」という連絡網が回り、集まってきたのかもしれない。
record3.A-4.[誰も知らない]
ビリーにしては珍しく、イントロなしにいきなり歌い始める。サンプソンはClとAsを持ち替えてプレイしている。ここでビリーは、お得意の「遅れたノリ」でレイジーに歌う。
record3.A-5.[恋に寒さを忘れ]
ウィルソンの軽快なイントロの後、ここでもビリーは、お得意の「遅れたノリ」でレイジーに歌う。ビリーの後のウエブスターも同じ雰囲気を継続して聴かせる。しかしその後のサンプソンのClが良くないとは、レコード楽曲解説の大橋巨泉氏。それほど良くないかな?僕はそうは思わないが…。
record3.A-6.[口でいえない心のうち]
こうした祈るような乙女心を歌うビリーは絶品だが、後のサンプソンのClが良くないと、大橋巨泉氏は怒っている。怒るほどでもないのでは?と僕。
record3.A-7.[夢の中でも]
30年代の安っぽい流行歌の一つと巨泉氏。ウエブスター、ジョーンズのソロが良い。
「ビリー・ホリディ」レコード第2集」ジャケット

<Date&Place> … 1937年1月25日 ニューヨークにて録音

<Personnel> … テディ・ウィルソン・アンド・ヒズ・オーケストラ(Teddy Wilson and his orchestra)

Band leader & pianoテディ・ウィルソンTeddy Wilson
Trumpetバック・クレイトンBuck Clayton
Clarinetベニー・グッドマンBenny Goodman
Tenor saxレスター・ヤングLester Young
Guitarフレディ・グリーンFreddie Greene
Bassウォルター・ペイジWalter Page
Drumsジョー・ジョーンズJo Jone
Vocalビリー・ホリディBillie Holiday
ベニー・グッドマンはサイド・マン扱いが気に食わず「ジョン・ジャクソン(John Jackson)という名でクレジットされている。

<Contents> … 「ビリー・ホリディ物語 第2集」(CBS SONY SOPH 63-64)&「ザ・テディ・ウィルソン」(CBS SONP 50332)

record1 B-1.リズムのない男He ain't got rhythm
record1 B-2.今年のキッスThis year's kisses
record1 B-3.何故生まれてきたのWhy was I born ?
record1 B-4.あの人でなけりゃI must have that man !
パーソネルを見れば一目瞭然だが、ベニー・グッドマンとウィルソン以外はベイシー楽団のメンバーで固められている。ベイシーの楽団員たちはこうしたセッションに参加して日銭を稼いでいたわけだが、この録音は、ビリーの一つの飛躍のきっかけとなる重要な録音となった。それは音楽的に重要な影響を及ぼすことになるレスター・ヤングとの初共演であるからだ。この日以降レスターのリリシズムと寛いでスムースなプレイ・スタイルに影響を受け、彼女の原メロディーにとらわれない器楽的な唱法は歌詞との不即不離の関連の上に完成の域に近づいていく。
さらにもう一人バック・クレイトンとの初共演ということでも大きな意味があった。クレイトンは、ルイ・アームストロングの感覚をさらに都会的に洗練され一層彼女の好みに近づいたスタイルを持っていた。まさに彼の音も彼女に親近感を抱かせることとなった。「ザ・テディ・ウィルソン」にも1曲(「リズムのない男」)収録されているが、「ビリー・ホリディ物語」には4曲とも収録されているので、こちらでまとめて聴こう。
B-1.[リズムのない男]
ベニー・グッドマンは自身のオーケストラで1936年12月30日に録音をしている。そのBGとウィルソンのイントロの後ビリーのヴォーカルとなる。ヴォーカルが終わるか終わらぬうちに出るレスターのソロが素晴らしい。続くクレイトンのソロからディキシー風アンサンブルとなる。
B-2.[今年のキッス]
ウィルソンのイントロの後レスターが極上のリリシズムを発揮する。ビリーもその雰囲気を引き継ぎしっとりとした味わい深い歌唱を聴かせる。その後に出るウィルソンのPも極上である。
B-3.[何故生まれてきたの]
クレイトンがリリカルなイントロでこの曲のムードを作る。ビリーは思い切ったフレイジングで応じ、ウィルソン、BGが暖かい素晴らしいソロを繰り広げる。
B-4.[あの人でなけりゃ]
ビリーがじっくり取り組んだ詠唱を聴かせる。Voの後のレスターのソロもしみじみとした温かさを伝える。BGも短いながらムードにマッチした好ソロを聴かせてくれる。
「ビリー・ホリディ」レコード第2集」1枚目B面

<Date & Place> … 1937年2月18日 ニューヨークにて録音

<Personnel> … テディ・ウィルソン・アンド・ヒズ・オーケストラ(Teddy Wilson and his orchestra)

Band leader & pianoテディ・ウィルソンTeddy W ilson
Trumpetヘンリー・レッド・アレンHenry “red” Allen
Clarinet & Alto saxセシル・スコットCecil Scott
Clarinet & Tenor saxプリンス・ロビンソンPrince Robinson
Guitarジミー・マクリンJimmy McLin
Bassジョン・カービーJohn Kirby
Drumsコージー・コールCozy Cole
Vocalビリー・ホリディBillie Holiday

<Contents> … 「ビリー・ホリディ物語 第2集」(CBS SONY SOPH 63-64)

record3.B-5ムードにひたってThe mood that I'm in
record3.B-6導いてくれた貴方You showed me the way
record3.B-7センチでメランコリーSentimental and melancholy
record3.B-8これが最後の恋よMy last affair

このセッションの聴き処を解説の大和氏は、一つは「これが最後の恋よ」におけるビリーの歌唱で、それはビリーの歌唱にレスターのノン・ヴィブラートによるフレイジングが導入され、一層リリカルな味が強調されているところと、サッチモ直系のTp奏者であるレッド・アレンには他の奏者には見られない自由自在なフレイジングを駆使した独特の味わいがあり、この日のセッションでは随所に発揮されているという。
record3.B-5.[ムードにひたって]
何といってもウィルソンのプレイが光るとは巨泉氏。でも一番良いのはビリーの歌だと思う。
record3.B-6.[導いてくれた貴方]
ここでもウィルソンと、堂々たるレッド・アレンのTpが素晴らしい。僕はこの歌、この歌を歌うビリーは好きだなぁ。
record3.B-7.[センチでメランコリー]
この曲もウィルソンが絶好調を維持、レッド・アレンもフレージングが独特で素晴らしい。前々セッション参加のジョナ・ジョーンズとの格の違いを見せつけると巨泉氏は厳しい。
record3.B-8.[これが最後の恋よ]
ここでもウィルソン、アレンが素晴らしい。最初に述べたようにビリーの歌唱も後の歌手に大きな影響を与えた画期的なものだという。これでテナーがレスターだったら言うことなしという快演。

2月18日のレコーディングと3月31日のレコーディングの間、3月1日にビリーは父親の<クラレンス・ホリディ>を亡くしている。クラレンスの死因は「肺炎」ということになっているが、実際には黒人である彼は肺炎にかかったが病院をたらい回しにされて診てもらえず、最後に軍人病院(彼は第一次大戦中兵役に就いたことがある)にたどり着いたが、既に手遅れだったということだった。彼女自身は次のように述べている。「肺炎が彼を殺したのではなく、テキサス州ダラスだったことが致命的原因となったのだ。」このことが後に一大傑作『奇妙な果実』に結びついていく。
「ザ・テディ・ウィルソン」レコード・ジャケット

<Date & Place> … 1937年3月31日 ニューヨークにて録音

<Personnel> … テディ・ウィルソン・アンド・ヒズ・オーケストラ(Teddy Wilson and his orchestra)

Band leader & pianoテディ・ウィルソンTeddy Wilson
Trumpetクーティー・ウィリアムスCootie Williams
Alto saxジョニー・ホッジスJohnny Hodges
Clarinet & Baritone saxハリー・カーネイHarry Carney
Guitarアラン・リュースAllan Reuss
Bassジョン・カービーJohn Kirby
Drumsコージー・コールCozy Cole
Vocalビリー・ホリディBillie Holiday

<Contents> … 「ビリー・ホリディ物語 第2集」(CBS SONY SOPH 63-64)

record4.A-1.うかつだった私Carelessly
record4.A-2.どうしてできるのHow could you
record4.A-3.しのび泣きMoanin’low

このセッションは前録音から約1か月半空いており、この間ビリーは、ジョン・ハモンド氏に口説かれカウント・ベイシー楽団の専属歌手となった。その直後のこの録音ではクーティー、ホッジス、カーネィとエリントニアンとの共演が実現した。そういったことで雰囲気ががらりと変わるところが面白い。ビリーの歌唱には、父親を失った悲しみ・怒りは聴き取れない。歌うことに集中することでそれらを振り払っていたのかもしれない。
record4.A-1.[うかつだった私]
ビリーのノン・ヴィブラート唱法が効いているし、後半のクーティはグロウル・ミュートのソロは素晴らしい。
record4.A-2.[どうしてできるの]
解説の巨泉氏は、ビリーの歌以外はつまらないというが、端正なウィルソンのピアノ、クーティーのソロ、ホッジスのAsソロなどいかにもらしくて僕は好きだ。
record4.A-3.[しのび泣き]
解説の巨泉氏は、曲が良いと出来も良くなるとメチャクチャなことを言っている。イントロのウィルソン、続くホッジス、それを受けてのウィルソンはさらにリリカルで素晴らしい。大和氏は、本来は失恋の歌だが、恋人を失うことと父親を失ったことが二重写しになり深みのあるブルース・フィーリング(曲はブルースではない)となっているのではないかと述べている。
この日はもう1曲インストで「ファイン・アンド・ダンディ」(Fine and dandy)が収録されたが、ビリーが加わっていないので、「ザ・テディ・ウィルソン」(CBS SONP 50332)にだけ収録されている。
「ビリー・ホリディ」レコード第2集」2枚目A面

<Date & Place> … 1937年4月1日 ニューヨークにて録音

<Personnel> … ビリー・ホリディ・アンド・ハー・オーケストラ(Billie Holiday and his orchestra)

Band leader & Vocalビリー・ホリディBillie Holiday
Trumpetエディー・トンプキンスEddie Tompkins
Clarinetバスター・ベイリーBuster Bailey
Tenor saxジョー・トーマスJoe Thomas
Pianoテディ・ウィルソンTeddy Wilson
Guitarカーメン・マストレンCarmen Mastren
Bassジョン・カービーJohn Kirby
Drumsアルフォンス・スティールAlphonse Steele

<Contents> …「ビリー・ホリディ物語 第2集」(CBS SOPH 63-64)

record4.A-4お先真っ暗Where is the sun
record4.A-5誰も奪えぬ思い出They can’t take that away from me
record4.A-6もうよそうやLet’s call the whole thing off
record4.A-7恋は盲目I don't know if I’m coming or going
さて今回のセッションは前録音の翌日で、こちらはビリー名義のレコーディング。サイドメンにこちらはジミー・ランスフォード楽団からエディ・トンプキンス、ジョー・トーマスが参加している。
record4.A-4.[お先真っ暗]
ビリーはピアノ1音でいきなり歌い出す。非常にグルーミー(憂鬱)な唱法は前セッションに続いて彼女の唱法に変化が訪れたことを表している。ベイリーのClの絡みが良い。トンプキンスのTpもクールでよい味を出している。
record4.A-5.[誰も奪えぬ思い出]
突然音が悪くなる。音源のSP盤の状態が良くなかったか?この曲はスインギーなナンバーとして奏されることが多かった由だが、ここではグッとテンポを落とし切々と歌い上げている。
record4.A-6.[もうよそうや]
大体コミカル・ソングとして歌われることが多いというが、ここではビリーは素晴らしいジャズヴォーカルにしているという。ソロでは、ホーキンス直系のジョー・トーマスの太くてたくましいテナーが出色。
record4.A-7.[恋は盲目]
これも音が悪い。ビリーは、プレイボーイに恋をしてしまった娘の気持ちを高音を使い可憐に歌っている。後年のビリーは高い声が出なくなりこういう表現は出来なくなったという。これもベイリーのソロ、ウィルソンのオブリガードがいい。
「ビリー・ホリディ」レコード第2集」2枚目B面

<Date & Place> … 1937年5月11日 ニューヨークにて録音

<Personnel> … テディ・ウィルソン・アンド・ヒズ・オーケストラ(Teddy Wilson and his orchestra)

Band leader & pianoテディ・ウィルソンTeddy Wilson
Trumpetバック・クレイトンBuck Clayton
Clarinetバスター・ベイリーBuster Bailey
Alto saxジョニー・ホッジスJohnny Hodges
Tenor saxレスター・ヤングLester Young
Guitarアラン・リュースAllan Reuss
Bassアーティー・バーンスタインArtie Bernstein
Drumsコージー・コールCozy Cole
Vocalビリー・ホリディBillie Holiday

<Contents> … 「ビリー・ホリディ物語 第2集」(CBS SOPH 63-64)&「ザ・テディ・ウィルソン」(CBS SONY SONP 50332)

record4.B-1日照雨(ひばえ)Sun shower
record4.B-2二人のものYours and mine
record4.B-3貴方とならばどこでもI'll get by
record4.B-4意地悪なあなたMean to me

日照雨(ひばえ)以外は「ザ・テディ・ウィルソン」にも収録されているが、「ビリー・ホリディ物語」には、4曲全て収録されている。
解説の大和明氏によれば、ビリーが30年代半ばから40年代初めにかけて行った数あるセッションの中で、これほどメンバーが充実し、それもビリーのヴォーカルとの適合性という点でも最高と言えるメンバーを揃え、ビリーのヴォーカル、メンバーのソロとも最高の出来を示したレコーディングは、この日をおいてないと最高の評価をしている。
またこの録音辺りからビリーとレスターの同棲生活は始まっており、この二人の共演がしばらく断続的に続くことから、『ジャズ史上最良のコラボレイション』と謳われた名コンビが誕生するのである。
record4.B-1.[日照雨(ひばえ)]
”Sun shower”を「日照雨」と訳しているのは、間違いないと思う。いわゆる「狐の嫁入り」のことである。しかい「ひばえ」と仮名を振るのは誤りである。正しくは「そばえ」で、どの辞典を見ても、「日照雨」=「ひばえ」とするものはない。どこから引っ張ってきたのだろうか。
短いクレイトン、ホッジスのソロからビリーのヴォーカルとなる。そしてウィルソンの端正なソロ、レスターのソロからエンディングとなる。まさに豪華リレーである。
record4.B-2.[二人のもの]
ピアノのイントロからレスター、クレイトン、ウィルソンのオブリガードの付いたビリーのヴォーカル、ウィルソン、レスターのソロと続く。
record4.B-3.[貴方とならばどこでも]
最初はレスターが吹く。そしてビリーのヴォーカルが入り、ウィルソン、クレイトンのソロからエンディングに向かう。
record4.B-4.[意地悪なあなた]
最近は原題通り『ミーン・トゥ・ミー』の方が通りやすいのではないかと思う。クレイトン、レスターのソロに続いてビリーのヴォーカルとなる。そしてウィルソンのソロとなりクレイトンが入ってエンディングに向かう。
解説の大和氏が言うように、この4曲については特に言うことがない。もう一人の解説巨泉氏は、「自由奔放に楽しみましょう、バック・クレイトンの拡張の高さに酔い、ビリーの名唱に酔いましょう、テディ・ウィルソンのリリシズムに酔いましょう、そのために貴方はこのレコードを買ったのだ」と言っている。聴けば解説など不要ということだろう。
「ビリー・ホリディ」レコード第2集」ライナーノート

<Date & Place> … 1937年6月1日 ニューヨークにて録音

<Personnel> … テディ・ウィルソン・アンド・ヒズ・オーケストラ(Teddy Wilson and his orchestra)

Band leader & pianoテディ・ウィルソンTeddy Wilson
Trumpetバック・クレイトンBuck Clayton
Clarinetバスター・ベイリーBuster Bailey
Tenor saxレスター・ヤングLester Young
Guitarフレディ・グリーンFreddie Greene
Bassウォルター・ペイジWalter Page
Drumsジョー・ジョーンズJo Jone
Vocalビリー・ホリディBillie Holiday

<Contents> … 「ビリー・ホリディ物語 第2集」(CBS SOPH 63-64)

record4.B-5.自分を偽ってFoolin’myself
record4.B-6.貴方のために生きるならEasy living
record4.B-7.私は変わったのI'll never be the same
record4.B-5.[自分を偽って]
レスター、ウィルソン、クレイトンの後ビリーのヴォーカルとなる。これこそビリーの最高傑作。何百回、何千回聴いても飽きない珠玉の名品だとは、巨泉氏。
record4.B-6.[貴方のために生きるなら]
”Easy living”をこう訳しているのはこのレコードだけだろう。僕の大好きな曲で、”Easy living”=「気楽な生活」と思っていたら、まったく違う訳である。曲の意味合いは「貴方のために生きるなら、何があってもそれは簡単なこと」ということなのだろう。ベイリー、レスター、ウィルソンのソロの流れが何とも言えずいい。
record4.B-7.[私は変わったの]
ビリーに寄り添うレスターのオブリガードが悩ましいまでに思いやりに溢れているという。確かに一緒に歌っているようだ。ウィルソンのピアノも力演で素晴らしい。
この日はもう1曲インストで「いい娘を見つけた」(I found a new baby)が録音されたが、ビリーが加わっていないので「ザ・テディ・ウィルソン」(CBS SONY SONP 50332)にだけ収録されている。
「ビリー・ホリディ」レコード第3集」レコード・ジャケット

<Date & Place> … 1937年6月15日 ニューヨークにて録音

<Personnel> … ビリー・ホリディ・アンド・ハー・オーケストラ(Billie Holiday and his orchestra)

Band leader & Vocalビリー・ホリディBillie Holiday
Trumpetバック・クレイトンBuck Clayton
Clarinetエドモンド・ホールEdmond Hall
Tenor saxレスター・ヤングLester Young
Pianoジェイムス・シャーマンJames Sherman
Guitarフレディ・グリーンFreddie Greene
Bassウォルター・ペイジWalter Page
Drumsジョー・ジョーンズJo Jone

大変珍しいメンバーである。Clのホールはニューオリンズ出身のCl奏者とは思えぬ鋭角的なソロを吹く人で、この人の起用は当たればとてつもない傑作になるが外れると目も当てられない。この録音ではうまく行ったようだ。ピアノのシャーマンは初登場で、この日はテディは都合が付かなかったのだろうか。但しプレイぶりはテディそっくりだ。ともかく前回に続きビリー最高期の録音であるという。

<Contents> … 「ビリー・ホリディ物語 第3集」(CBS SOPH 65〜66)

record5.A-1三人の私Me , myself and I
record5.A-2三人の私Me , myself and I
record5.A-3月夜の小舟A sailboat in the moonlight
record5.A-4愛の運命Born to love
record5.A-5君の愛なしではWithout your love
record5 A-1、2.[三人の私]
珍しく別テイクも収録している。しかし別テイクのA-2になるとグッと音が悪くなる。音だけではなく演奏も一歩落ちるとは巨泉氏。確かにA-1の方が断然良い。レスターのオブリガードは伴奏ではなく、共演である。
record5 A-3.[月夜の小舟]
この曲でもビリーとレスターの共演は続く。二人の共演が終わって出るシャーマンのソロがリリカルでありながら、グッと冷静に聴こえる。クレイトンは襟を正したようなプレイで再度出るビリーとレスターはまたまた甘いところを聴かせる。
record5 A-4.[愛の運命]
単調なメロディとコード、陳腐な歌詞でどうしようもないがクレイトンのメリハリの効いたソロが救っているとは巨泉氏。
record5 A-5.[君の愛なしでは]
この頃レスターはオブリガード専門でほとんどソロを取っていない、とってもせいぜい8小節程度だが、これはビリーからの要請によるものだったという。ここでもクレイトンのソロが素晴らしい。
次の音源は貴重なベイシー楽団でのビリーの録音である。
「カウント・ベイシー・アット・サヴォイ・ボールルーム」レコード・ジャケット

<Date&Place> … 1937年6月30日 ニューヨーク・サヴォイ・ボールルームから実況放送

<Personnel> … カウント・ベイシー・アンド・ヒズ・オーケストラ(Count Basie and his orchestra)

Band leader & Pianoカウント・ベイシーCount Basie
Trumpetエド・ルイスEd Lewisボビー・ムーアBobby Mooreバック・クレイトンBuck Clayton
Tromboneジョージ・ハントGeorge Huntダン・マイナーDan Minor
Alto saxアール・ウォーレンEarl Warren
Alto & Baritone saxジャック・ワシントンJack Washington
Tenor saxレスター・ヤングLester Youngハーシャル・エヴァンスHerschel Evans
Guitarフレディ・グリーンFreddie Greene
Bassウォルター・ペイジWalter Page
Drumsジョー・ジョーンズJo Jones
Vocalビリー・ホリディBillie Holiday

<Contents> … "Billie Holiday/Live and private recordings in Chronological order"&「カウント・ベイシー・アット・サヴォイ・ボールルーム 1937」(ELEC Record KV-109)

record1 A-2、A-5.ゼイ・キャント・テイク・ザット・アウェイ・フロム・ミーThey can’t take that away from me
record1 A-3、B-3.スイング・ブラザー・スイング!Swing ! brother , awing !
[BillieHoliday/Liveandprivaterecordings]レコード・ボックス まずこの音源は、イタリアで組まれたらしい"Billie Holiday/Live and private recordings in Chronological order"というLPレコード23枚組という膨大なボックス物とかつて日本の「エレック」から出た「カウント・ベイシー・アット・サヴォイ・ボールルーム 1937」(ELEC Record KV-109)というレコードに収録されている。"Billie Holiday/Live and private recordings in Chronological order"というボックスはかつて1935年のデューク・エリントン楽団との共演盤の時に登場した。今後も正規録音ものに補足する形でたびたび登場することになると思う録音集である。
一方「カウント・ベイシー・アット・サヴォイ・ボールルーム 1937」は「エレック・レーベル」から出たというのがまず意外である。「エレック」はURC、ベルウッドとともに昭和40年代に設立されたフォーク3大レーベルの一つだ。吉田拓郎や泉谷しげるなど現代も活躍するアーティストがここからデヴューした。僕も何枚かフォークのアルバムを持っていた。最初にこのレコードを手にした時はかなり驚いた。「あのエレックがジャズの復刻版?」。僕はこのレコードをずっと後になって手に入れ、発売された当時は全く知らなかった。オン・タイムでこのレコードのシリーズの発売を知った方はかなり驚かれたことだろうと思う。因みにエレック・レコードは一度倒産したようだが、2004年に再生復活し現在も営業中のようだ。ただこのシリーズ(ELEC Jazz series collector’s item)は復刻していないようである。
因みに"Billie Holiday/Live and private recordings in Chronological order"はビリーの加わった2曲と11月の放送音源1曲を収録しているが、「カウント・ベイシー・アット・サヴォイ・ボールルーム 1937」は 放送された番組30分を丸ごと収録している。これまでプライヴェート・レーベルやTemple、Palmなどから何曲か発売されたことはあるが、放送分全曲をまとめてレコード化されたのはこれが初めてだという。全体については「カウント・ベイシー 1937年」を参照あれ。
ハッキリ言って、音はよくない。しかしこれまで想像できなかった史上最高のスイング・バンドの初めてのライヴ演奏、何といっても迫力が違う。
record1 A-2、A-5.[ゼイ・キャント・テイク・ザット・アウェイ・フロム・ミー]
ビリー・ホリディの登場となる。ビリーは気怠い雰囲気で、後に引きずるような独特の唱法が印象的だ。
record1 A-3、B-3.[スイング・ブラザー・スイング!]
ビリーは実にスインギーによく乗っているが、やはり後に引くような彼女独特の乗り方が特徴的である。
「ビリー・ホリディ物語 第3集」1枚目A面

<Date&Place> … 1937年9月13日 ニューヨークにて録音

<Personnel> … ビリー・ホリディ・アンド・ハー・オーケストラ(Billie Holiday and his orchestra)

Band leader & Vocalビリー・ホリディBillie Holiday
Trumpetバック・クレイトンBuck Clayton
Clarinetバスター・ベイリーBuster Bailey
Tenor saxレスター・ヤングLester Young
Pianoクロード・ソーンヒルClaude Thornhill
Guitarフレディ・グリーンFreddie Greene
Bassウォルター・ペイジWalter Page
Drumsジョー・ジョーンズJo Jone
後に革新的なビッグ・バンドを率いるクロード・ソーンヒルの参加が珍しい。

<Contents> … 「ビリー・ホリディ物語 第3集」(CBS SOPH 65〜66)

record5.A-6気ままな人生Getting some fun out of life
record5.A-7誰が恋なんかWho wants love ?
record5.A-8ひとり旅Traverin’all alone
record5.A-9可笑しなあの人He's funny that way
約3か月ぶりのスタジオ・レコーディングである。この間ビリーはベイシー楽団の専属歌手としてツアーなどに同行していた。6月30日には前々回で取り上げたサヴォイ・ボールルームからのラジオ放送にも参加している。さてこの日のセッションであるが、ソーンヒル以外はビリーが最も安心して歌えるメンバーが揃ったといえる。
record5.A-6.[気ままな人生]
ここではクレイトンが始めオブリガードを付け、続いてベイリー、ウィルソンと変わっていく。クレイトン、レスターのソロはやはりいいなぁ。
record5.A-7.[誰が恋なんか]
当時のポップス・チューンらしい。ソーンヒルのソロはテディの影響をもろに受けているのがよく分かる。
record5.A-8.[ひとり旅]
レスターの伸びやかなソロ、クレイトンのミュート・ソロを受けてビリーも快調にスイングしていく。
record5.A-9.[可笑しなあの人]
ビリーの持ち歌で後にも吹き込んでいる。クレイトンの抑え気味のソロが滋味あふれるようで味わい深い。
「ビリー・ホリディ」レコード第3集」1枚目B面

<Date&Place> … 1937年11月1日 ニューヨークにて録音

<Personnel> … テディ・ウィルソン・アンド・ヒズ・オーケストラ(Teddy Wilson and his orchestra)

Band leader & pianoテディ・ウィルソンTeddy Wilson
Trumpetバック・クレイトンBuck Clayton
Clarinet & Tenor saxプリンス・ロビンソンPrince Robinson
Tenor saxヴィド・ムッソVido Musso
Guitarアラン・リュースAllan Reuss
Bassウォルター・ペイジWalter Page
Drumsコージー・コールCozy Cole
Vocalビリー・ホリディBillie Holiday

このセッションには何故かレスターの姿がない。この日のヴィド・ムッソとプリンス・ロビンソンの担当楽器について昔から諸説あったらしいがここでは割愛しよう。

<Contents> … 「ビリー・ホリディ 第3集」(CBS SONY SOPH 65〜66)

record5.B-1うまい話しさNice work if you can get it
record5.B-2やっと陽の目をThings are looking up
record5.B-3マイ・マンMy man
record5.B-4あの人を愛さずにはいられないCan't help lovin’dat man
record5.B-1.[うまい話しさ]
今でもよく歌われるスインギーでノリのいいナンバーだが、ビリー向きのナンバーとは思えない曲ではある。
record5.B-2.[やっと陽の目を]
切々としたビリーの名唱の後に出るテディのピアノ・ソロが良い。巨泉氏はこのタッチが素晴らしい、このタッチが真似できないのだという。確かにそうかもしれない。
record5.B-3.[マイ・マン]
後にビリーのフェヴァリット・ナンバーとなった曲であるが、ここではテンポも速くまだまだ掘り下げが足りない感じだという。ビリーはこの後じっくりとこの曲を育てていく。ソロはロビンソン(Cl)、ウィルソン(P)でその後集団演奏となる。
record5.B-4.[あの人を愛さずにはいられない]
クレイトンの高音を控えたソロが滋味深い。続くウィルソンのピアノもよい。ラストの合奏はコーニーだと僕も思う。
[BillieHoliday/Liveandprivaterecordings]レコード・ボックス

<Date&Place> … 1937年11月3日 アンティグア島シダー・グローヴ メドウブルック・ラウンジからのラジオ放送音源

<Personnel> … カウント・ベイシー・アンド・ヒズ・オーケストラ(Count Basie and his orchestra)

Band leader & Pianoカウント・ベイシーCount Basie
Trumpetバック・クレイトンBuck Claytonエド・ルイスEd Lewisボビー・ヒックスBobby Hicks
Tromboneベニー・モートンBenny Mortonダン・マイナーDan Minorエディー・ダーハムEddie Durham
Alto saxアール・ウォーレンEarl Warren
Tenor saxレスター・ヤングLester Youngハーシャル・エヴァンスHerschel Evans
Baritone & alto saxジャック・ワシントンJack Washington
Guitarフレディ・グリーンFreddie Greene
Bassウォルター・ペイジWalter Page
Drumsジョー・ジョーンズJo Jones
Vocalビリー・ホリディBillie Holiday

<Contents> … "Billie Holiday/Live and private recordings in Chronological order"

record1 A-4.言い出しかねてI can't get started
アンティグア島とはカリブ海西インド諸島の小国。そこのシダー・グローヴという観光スポットにあるメドウブルック・ラウンジからのCBSラジオ放送の音源という。ビリーがこの曲を録音上で歌うのは初めてだと思う。音はめちゃくちゃ悪い。ビリーはライヴだからかメロディーを崩しまくりで注意して聴かないと曲がよく分からないほどだ。バックは、ソロはなくアンサンブルのみである。ビリーの歌い方はかなり独特で、バックのいかにもビッグ・バンドというサウンドとは合わない感じがする。この人は人は小編成のバンドの方が光るような気がする。

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