カウント・ベイシー 1938年
Count Basie 1938
1938年のベイシーは年初早々1月3日から録音を始めている。音源はビクターが編集再発した「黄金時代のカウント・ベイシー」レコード4枚組。僕は実は最初にベイシーのレコードを手に入れたのは、「ベイシー・アット・ザ・ピアノ」という10inch盤であった。1938年11月と39年1月に行われたベイシーを中心とした「オール・アメリカン・リズム・セクション」によるものである。ベイシーのピアノを堪能するなら最適な1枚だが、2曲ほど収録されていない。「黄金時代のカウント・ベイシー」のボックスには全て収録されているので、レコードの希少さは、「ベイシー・アット・ザ・ピアノ」に劣るもののベイシーのピアノをより多く聴きたいという方にはボックスが最適である。
<Date&Place> … 1938年1月3日 ニューヨークにて録音
<Personnel> … カウント・ベイシー・アンド・ヒズ・オーケストラ(Count Basie and his orchestra)
前録音(1937年10月13日)からの変更点
Trumpet … ビリー・ヒックス ⇒ カール・ジョージ
<Contents> … 「黄金時代のカウント・ベイシー」(MCA VIM-5501〜4)
| record2.A-5. | ジョージアナ | Georgianna |
| record2.A-6. | ブルース・イン・ザ・ダーク | Blues in the dark |
record2.A-5.ジョージアナ
最初に出てくるのはハーシャル・エヴァンス(Ts)で、ドライヴ感豊かな情熱溢れるソロが快調である。こういったテンポでのエヴァンスには、ホーキンス派と言っても、彼独特の湿ったトーンと相俟って独特の個性を作り出しているとは解説の大和明氏。ラッシングの後に出るレスター・ヤングのソロもリラックスした好演である。このように対照的な実力ある2人のテナー奏者がいたことは、ベイシー楽団の強みであった。
record2.A-6.ブルース・イン・ザ・ダーク
全編に渡ってグルーミーな雰囲気を漂わせたベイシー作のブルース・ナンバー。エリントンのジャングル・スタイルを思わせるアンサンブルをバックにプレイするバック・クレイトン(Tp)のソロに続いて、ラッシングがブルーなフィーリングで歌っている。
ヴォーカルの2コーラス目から付けられるエド・ルイスのオブリガードは、ルイ・アームストロングの”Gully low blues”のソロをそのまま引用したもので、ルイのメロディ・ラインの作り方が直接影響として表れているという。ブルース・フィーリング溢れる間を活かしたベイシーのソロも素晴らしい。
ベニー・グッドマンの「カーネギー・ホール・コンサート」への協力
この年1938年1月16日伝統あるニュー・ヨークのカーネギー・ホールで、ベニー・グッドマンによる歴史的なコンサートが開催される。なぜ「歴史的」なのか、コンサートの全容などについては「ベニー・グッドマン 1938年」を参照。このコンサートを全面的に支援するジョン・ハモンド氏からの声掛けもあったのであろう、ベイシー自身初めベイシー楽団の強者たちがカーネギー・ホールのステージに立つのである。
コンサート第1部の3曲目にベイシー楽団の大ヒットナンバー、「ワン・オクロック・ジャンプ」がBG楽団によって演奏された。そしてベイシー一党はその数曲後の「ジャム・セッションーハニーサックル・ローズ」に登場し、BG楽団選抜メンバー及び同じく協力出演していたデューク・エリントン楽団選抜メンバーとジャム・セッションを繰り広げるのである。
<Date&Place> … 1938年1月16日 ニューヨークにて録音
<Personnel> … ジャム・セッション(Jam session)
CD1-13.ジャム・セッション準備
ここでエリントニアンのジャニー・ホッジス、ハリーカーネイにカウント・ベイシー楽団のメンバー、バック・クレイトン、レスター・ヤング、フレディー・グリーン、ウォルター・ペイジ、そして御大のベイシーが加わりジャム・セッションを行う。多分カーネギー・ホールに集った聴衆たちは「ジャム・セッション」なるものを聴くのは初めてだろうし、それどころが「ジャム・セッション」がどんなものかも知らなかったろう。ここまで一切MCによる解説がないが大丈夫だったのだろうか?
CD1-14.&record1.B-1.ハニーサックル・ローズ
ものすごいメンバーである。従来のレコードでは13分55秒という演奏時間で、それなりに聴き応えがあるなぁと思っていたら、CDの解説によると本来は16分33秒の演奏で、クレイトンの第3コーラス、カーネイとグリーンのソロがカットされていたという。何ということだ!グリーンのソロは極めてまれで貴重なのに…。ともかくこの<完全版>CDで復活されたことは喜ばしい限りである。
曲はファッツ・ウォーラー作のスタンダード・ナンバー。ベイシー楽団はニュー・ヨークに出て最初に吹き込んだナンバーでもある。先ずベイシーが短いイントロを弾き、テーマのアンサンブルに入る。ここでリードを取るのはハリー・ジェイムス。アドリブ・スペースに入り最初はレスター(Ts)⇒ベイシー(P)⇒クレイトン(Tp)⇒ホッジス(As)⇒ペイジ(B)⇒カーネイ(Bs)⇒BG(Cl)⇒グリーン(Gt)⇒ジェイムス(Tp)⇒集団アドリブ⇒レスター(Ts)⇒クレイトン(Tp)⇒リフからエンディング。
ともかく豪華極まりないリレーだ。最初のレスターのソロから2度目のクレイトンのソロまでどれも聴き応え十分である。とかく「ジャム・セッション」は垂れ流し的な演奏で締まりがないと批判する人がいる。確かにそういう演奏もあることは事実だが、ここでの演奏は各自が持ち味を発揮した素晴らしい演奏の連続で十分に聴くに値すると思う。
個別のソロではなく、ここではいくつかのエピソードを掲げておきたい。まず最初のクレイトンのソロの2コーラス目が終わったところでちょっとした聴衆の反応が聴かれる。これはクレイトンのソロは2コーラスで終わる予定だったのか次のホッジスが前に進み出ていたがクレイトンが3コーラス目を吹きだしたので慌てて席に戻ったことに対する反応だという。
後にBG楽団のギタリストとなったターク・ヴァン・レイクはフレディー・グリーンにソロを弾かせようとしたのは、BGの無神経さを表すものだと批判している。ソロは弾かずリズムに専念するぐり−ンはギターをそのようにセッティングしているからだという。しかしソロを求められたグリーンはコードによるソロを2コーラスに渡って展開し見事に自分の仕事を成し遂げている。
ともかく各スターたちのソロが楽しく、そして最後はリフを中心としたアンサンブルがノリノリで、ジャズは楽しいなぁと思いわせてくれる傑作であることは間違いない。
BGのカーネギー・ホール・コンサートから1か月、ベイシーはデッカのレコーディング・スタジオに入る。
<Date&Place> … 1938年2月16日 ニューヨークにて録音
<Personnel> … カウント・ベイシー・アンド・ヒズ・オーケストラ(Count Basie and his orchestra)
前録音(1938年1月3日)からの変更点
Trumpet … カール・ジョージ ⇒ ハリー・エディソン(Harry Edison)
<Contents> … 「黄金時代のカウント・ベイシー」(MCA VIM-5501〜4)&"Hall of fame/Lester Young"(Past perfect 220149)
| record2.A-7. | セント・フォー・ユー・イエスタディ | Sent for you Yesterday |
| record2.A-8.&CD5-3. | エヴリー・タブ | Every tub |
| record2.B-1. | ナウ・ウィル・ユー・ビー・グッド | Now , will you be good ? |
| record2.B-2.&CD5-2. | スゥインギン・ザ・ブルース | Swingin’the blues |
record2.A-7.セント・フォー・ユー・イエスタディ
ジャンプ・ブルースでラッシングが最も得意としたナンバー。初めに出るアルト・ソロがジョニー・ホッジスを思わせるような吹奏である。またこのTpオブリガード及びソロについては、バック・クレイトン説(レイモンド・ホリックス氏)とハリー・エディソン説(ユーグ・パナシェ氏)があるが、大和氏はハリー・エディソンだと思うとしている。
record2.A-8.&CD5-3.エヴリー・タブ
ベイシー、ダーハムの共作で、典型的なカンサス・スタイルのジャンプ・ナンバー。リズム隊の躍動感あふれるビートに乗って、次々と繰り広げられるソロの共演が楽しめる。ソロ・オーダーはレスター⇒ベイシー⇒Tp(?)。いずれも聴き応え十分のソロである。骨太のたくましいスイングとはまさにこれ!
record2.B-1.ナウ・ウィル・ユー・ビー・グッド
ラッシングのリラックス・ムードのヴォーカルの後に出るTpソロについても、エディソンかどうかという論争があったという。大和氏曰く、このソロはレコード2.A面7「セント・フォー・ユー・イエスタディ」と全く同じなのでエディソンであると推定されている。逆にこれくらい俺にも吹けるぞと、クレイトンかルイスが吹いて見せたとしてもおかしくないような気がするが。
record2.B-2.&CD5-2.スゥインギン・ザ・ブルース
ベイシー作曲の典型的なリフ・ナンバー。元は1929年にエリントンとババー・マイレイがつくった”Doin' the Voom Voom”を素にフレッチャーとホレス・ヘンダーソン兄弟が31年に作り変えた”Hot and anxious”と”Comin' and goin'”という2曲のブルースが元になっているという。
単音を重ねながらアドリブに入っていくレスター独特の手法が新鮮であるとは大和氏。続けてレスターとエヴァンスの対照と同じように、かっちりと引き締まったクレイトンと艶があり華麗なエディソンのコントラストが見事だという。
<Date&Place> … 1938年6月3日 ニューヨークにて録音
<Personnel> … カンサス・シティ・ファイヴ(Kansas City Five)
<Contents> … "From Spirituals to Swing complete legendary 1938-1939 Carnegie hall concert"(Definitive records DRCD 11182)&"From Spirituals to Swing"(Vanguard KICJ 2051/2)
| CD1-26. | レディ・ビー・グッド | Lady be good |
| CD2-5. | モーギッジ・ストンプ | Mortgage stomp |
「レディ・ビー・グッド」
ベイシー楽団の十八番。イントロはベイシーのピアノで始まり、クレイトン(Tp)、レスター(Ts)とソロが続く。後半には2小節ずつのソロの交換がある。ペイジのベースがビンビンである。
「モーギッジ・ストンプ」
レスターのメロディー吹奏でスタートする。ソロはまずベイシー、クレイトン、レスターと続き再びベイシーへ。ここでもペイジのベースが唸っている。
<Date&Place> … 1938年6月6日 ニューヨークにて録音
<Personnel> … カウント・ベイシー・アンド・ヒズ・オーケストラ(Count Basie and his orchestra)
前録音(1938年2月16日)と同じ
<Contents> … 「黄金時代のカウント・ベイシー」(MCA VIM-5501〜4)
| record2.B-3. | ママ・ドント・ウォント・ノー・ピース・アンド・ライス・アンド・ココナツ・オイル | Mama don't want no peas an’rice an’coconut oil |
| record2.B-4. | ブルー・アンド・センチメンタル | Blue and sentimental |
| record2.B-5. | ドッギン・アラウンド | Doggin’around |
record2.B-3.ママ・ドント・ウォント・ノー・ピース・アンド・ライス・アンド・ココナツ・オイル
ラッシングとベイシーのピアノをフューチャーしたナンバーで、リラックスした雰囲気が楽しめる。
record2.B-4.ブルー・アンド・センチメンタル
ハーシャル・エヴァンスの代表作として有名。このバンドとしては珍しいスロウ・ナンバー。ラプソディックに歌い上げるエヴァンスのソロに彼のセンシティヴな面が聴き取れる。珍しいレスターのクラリネット・ソロもさわやかな中にも強く訴えかけるものがあるとは大和氏。
record2.B-5.ドッギン・アラウンド
これもエヴァンス作のこちらはアップ・テンポのスインギーなナンバー。大和氏はさすがに以下のような細かい指摘している。「エヴァンスのソロ・コーラスのブリッジ部分にレスター流の息継ぎが見られることが興味深い。この演奏の圧巻は何といってもベイシーのソロの最後の2小節を潜り抜けながら、流れるようにスムーズでリラックスしたアドリブを展開していくレスターのソロ・コーラスではないだろうか。彼の代表的ソロの一つに上げたい好演である。」
<Date&Place> … 1938年8月22日 ニューヨークにて録音
<Personnel> … カウント・ベイシー・アンド・ヒズ・オーケストラ(Count Basie and his orchestra)
前録音(1938年6月6日)からの変更点
Trombone & Guitar … エディー・ダーハム ⇒ ディッキー・ウエルズ(Dickie Wells)
<Contents> … 「黄金時代のカウント・ベイシー」(MCA VIM-5501〜4)&"Hall of fame/Lester Young"(Past perfect 220149)
| record2.B-6. | ストップ・ビーティン・アラウンド・ザ・マルベリー・ブッシュ | Stop beatin' around the mulberry bush |
| record2.B-7. | ロンドン橋落ちた | London bridge is falling down |
| record2.B-8.&CD5-5. | テキサス・シャッフル | Texas shuffle |
| record2.B-9.&CD5-4. | ジャンピン・アット・ザ・ウッドサイド | Jumpin’at the woodside |
record2.B-6.ストップ・ビーティン・アラウンド・ザ・マルベリー・ブッシュ
大和氏によれば、これはポップス・ファン向けのナンバーであるという。それでありながらベイシー・イディオムが演奏の端々に聴き取れるところはさすがだとは大和氏。
record2.B-7.ロンドン橋落ちた
前曲同様、一般受けを狙った作品で、日本でもよく知られた曲。そうであってもベイシーは前半に、モートン、レスター、ウエルズを配しジャジーな雰囲気を創り上げている。ヴォーカル前のウエルズのソロは快演である。
B-6、B-7のような曲を演るのは、もしかしたらトミー・ドーシーの楽団の影響かもしれない。「スイング・クラシック」やフォーク・ソングから題材を得てヒット曲を出し大衆の支持を得ながら、しっかりとジャズもやる=バンド経営の極意と考えていたのかもしれない。
record2.B-8.&CD5-5.テキサス・シャッフル
エヴァンスの作・編曲によるカンサス・ジャズの雰囲気を盛り込んだ典型的なジャンプ・ナンバー。オール・アメリカン・リズム・セクションによる見事なリズムに乗せてベイシーが絶妙なタイム感覚を示す。各々のプレイヤーのソロも快調で、特にレスターのスインギーでユニークなクラリネット・ソロが印象的である。
record2.B-9.&CD5-4.ジャンピン・アット・ザ・ウッドサイド
『ワン・オクロック・ジャンプ』と並ぶベイシーの代表作。ベイシー・バンドの前身”Jammin' for the jackpot”が元になっているという。タイトル中の”Woodside”とは、当時ベイシー楽団が出演したことのある”Woodside hotel”のこと。ドライヴ感に満ちた力強いベイシーによるイントロから、典型的なリフを重ねたジャンピング・テーマに入るが、ウォーレンのホットなブリッジがよく利いている。スインギーなクレイトンのソロを経て、例によってユニークなスタートで始まるレスターのアドリブに入る。エヴァンスのクラリネット・ソロも強烈な響きで迫り、バンド全体が煮え切っているかのようなドライヴ感に包まれたホットな演奏である。
<Date&Place> … 1938年11月9日 ニューヨークにて録音
<Personnel> … カウント・ベイシー・アンド・ヒズ・オール・アメリカン・リズム・セクション(Count Basie and his all American rhythm section)
<Contents> … 「黄金時代のカウント・ベイシー」(MCA VIM-5501〜4)
| record4.A-1. | ハウ・ロング・ハウ・ロング・ブルース | How long , how long blues |
| record4.A-2. | ザ・ダーティー・ダズンズ | The dirty dozens |
| record4.A-3. | ヘイ・ロウディー・ママ | Hey lawdy mama |
| record4.A-4. | ザ・ファイヴス | The fives |
| record4.A-5. | ブギー・ウギー | Boogie Woogie |
初めに触れたことではあるが、この5曲はカルテット演奏として、他録音とは別に4枚目にまとめて収められている。録音は1938年11月9日なので、順番によりここに取り上げるが、翌39年1月26日にもカルテットによる演奏が録音され、合わせて”Basie at the piano”というタイトルで10inch盤で出ていたことがある。この”Basie at the piano”は廃盤になって久しくまたCD化もされていない(Chronogicalは別)ので貴重であるが、さらに貴重なのは”Basie at the piano”には、39年1月26日録音の2曲が収録されておらず、このレコードで38年末から39年初頭におけるカルテット演奏が全て揃うという点である。
この5曲の演奏は現在聴いても全く古さを感じさせない。実にモダンな演奏である。
record4.A-1.ハウ・ロング・ハウ・ロング・ブルース
ブルース・シンガーでありピアニストのルロイ・カー作の20小節というちょっと変形のブルース。元はラッシングが歌っていたがそれをベイシーはシングル・トーン・スタイルに変えて演奏している。粟村政昭氏は、その著『ジャズ・レコード・ブック』において「最小限の音を使って最大限の効果を引き出した名作」と最大限の賛辞を述べている。
record4.A-2.ザ・ダーティー・ダズンズ
ブギ・ウギ・ピアニスト、スペックルド・レッドの代表作として有名(レッド自身の吹込みについては「スペックルド・レッド 1929年」を参照)。元は「ウィルキンス・ストリート・ストンプ」又は「セントルイス・ストンプ」という名で親しまれていたナンバーだという。また「ダーティー・ダズン」とは、黒人同士の反目を意味し、互いに相手の両親や先祖を徹底的に貶し合うことだという。
record4.A-3.ヘイ・ロウディー・ママ
この曲は元は歌曲だったという。ここでもベイシーは絶妙の空間処理によって、このメンバーでなくては出来ない作品に仕上げている。
record4.A-4.ザ・ファイヴス
元々は歌曲だが、ベイシーはブギー・ウギーのリズムも利用しながら独自の軽快さを盛り込んで仕上げている。
record4.A-5.ブギー・ウギー
ブギ・ウギの名付け親であるパイン・トップ・スミスの自作自演で大ヒットした。大和氏は「後にトミー・ドーシーによってオーケストラ用にアレンジされ、そのヒットによってブギ・ウギのポピュラー化を促した」と書いているが、ドーシーが録音したのは、ベイシーよりも前である。もしかするとベイシーはドーシーのヒット作を聴いて取り上げた可能性すらある。というのはこのベイシーの演奏はかなり都会風に洗練されたもので、「俺は黒人だがもっと洗練されたブギ・ウギを演れるぜ、それもピアノだけで」と言いたかったのかもしれない。
<Date&Place> … 1938年11月16日 ニューヨークにて録音
<Personnel> … カウント・ベイシー・アンド・ヒズ・オーケストラ(Count Basie and his orchestra)
Vocal … ヘレン・ヒュームズ(Helen Humes) ⇒ In
以外は前録音(1938年6月6日)からの変更点
女性専属歌手だったビリー・ホリディが退団したため新たにヘレン・ヒュームズを雇うことになった。さすがに良い選択をしている。
<Contents> … 「黄金時代のカウント・ベイシー」(MCA VIM-5501〜4)
| record3.A-1. | ダーク・ラプチュアー | Dark Rapture |
| record3.A-2. | ショーティー・ジョージ | Shorty George |
| record3.A-3. | ザ・ブルース・アイ・ライク・トゥ・ヒア | The blues I like to hear |
| record3.A-4. | ドゥ・ユー・ウォナ・ジャンプ・チルドレン | Do you wanna jump children |
| record3.A-5. | パナシェ・ストンプ | Panassie stomp |
record3.A-1.ダーク・ラプチュアー
数か月前に専属歌手として参加したばかりの女性シンガー、ヘレン・ヒュームズを始めてフューチャーした録音。大和氏は、「彼女のヴォーカルは当時チック・ウエッブの専属歌手として売り出していたエラ・フィッツジェラルドと偉大なる白人シンガー、ミルドレッド・ベイリーの影響を感じさせる」と書いている。ここではバンド全体が実に整然としたスイング感をもたらしており、アンサンブルも素晴らしい。この頃からベイシー・サウンドの洗練化が進み、編曲された演奏が次第に多くなる傾向にある。なお、レスターのソロが実にリラックスしたよい感じで歌っている。
record3.A-2.ショーティー・ジョージ
ハリー・エディソンとベイシーの共作で新鮮な感覚にあふれたミディアム・バウンス・ナンバー。タイトルの「ショーティー・ジョージ」とは、ダンスの一種の名称だという。前半のアンサンブルとアドリブ・ソロの交差、後半でのブラス・セクションとリード・セクションの交差や合奏などにジミー・マンディの編曲手腕がうかがえる。
record3.A-3.ザ・ブルース・アイ・ライク・トゥ・ヒア
こちらは古株ヴォーカリストのジミー・ラッシングが聴かせる。アール・ウォーレンがリードするサックス・セクションの滑らかなアンサンブルが美しい。いわばベイシー・サウンドのニューヨーク化がここに見られる。全編にわたりベイシーバンドの優秀なセクションによるアンサンブル・サウンドが彩りを加えている。
record3.A-4.ドゥ・ユー・ウォナ・ジャンプ・チルドレン
活気あるアンサンブル、躍動感みなぎるベイシーを先頭にしたリズム陣の動き、男性的なラッシングのシャウト、全てが聴き手のハートを燃え上がらせるだろうと解説の大和昭氏。それにしても演奏全体が実に洗練されてきている。
record3.A-5.パナシェ・ストンプ
ベイシーが当時渡米していたジャズ評論の先駆者の一人ユーグ・パナシェを歓迎してつくったリフ・チューン。ここでは再び活気あふれるカンサス・ジャズが満喫できる。ベイシーのオール・スター・ジャズメン総動員を思わせる迫力あるアドリブの応酬が楽しい。豪華で華麗なアンサンブルにもこのバンドの熱気が感じられる。
そしてこの後、カウント・ベイシーとその楽団は「フロム・スピリチュアルス・トゥ・スイング」の主力メンバーとして再びーネギー・ホール出演を果たすのである。
<Date&Place> … 1938年12月23日 ニューヨーク・カーネギー・ホールにて録音
<Peronnel> … カウント・ベイシー・アンド・ヒズ・オーケストラ(Count Basie and his orchestra)
11月16日からの移動。
Trumpet … シャド・コリンズ ⇒ In
<Contents> … <legendary>&<Definitive>&<Original>
| CD1-1.&DefCD1-1. | スインギン・ザ・ブルース | Swingin' the blues | カウント・ベイシー・アンド・ヒズ・オーケストラ | |
| CD1-2.&DefCD1-2. | ワン・オクロック・ジャンプ | One O'clock jump | カウント・ベイシー・アンド・ヒズ・オーケストラ | |
| CD1-3.&OriCD1-7. | 紹介 | Introduction | ジョン・ハモンド |
| CD1-4.&DefCD1-3.&OriCD1-7. | ブルース・ウィズ・リップス | Blues with Lips | ホット・リップス・ペイジ・ウィズ・ザ・カウント・ベイシー・オーケストラ | |
| CD1-5.&DefCD1-27. | アイ・ネヴァー・ニュー | I never knew | カンサス・シティ・ファイヴ | |
| CD1-6.&OriCD1-12. | その手はないよ | Don't be that way | カンサス・シティ・ファイヴ |
| CD1-7.&OriCD1-4. | 紹介 | Introduction | ジョン・ハモンド |
| CD1-8.&OriCD1-4. | ブルース・ウィズ・ヘレン | Blues with Helen | ヘレン・ヒューム・ウィズ・カンサス・シティ・ファイヴ |
| CD1-9.&OriCD1-11. | 紹介 | Introduction | ジョン・ハモンド |
| CD1-10.&OriCD1-11. | アイ・エイント・ガット・ノーバディ | I ain't got nobody | カウント・ベイシー・トリオ |
そもそも「フロム・スピリチュアルス・トゥ・スイング」の音源は面倒くさい。どう面倒なのかは「フロム・スピリチュアルス・トゥ・スイング 1938年」を参照。
<Contents>の略称は、
<legendary>="From Spirituals to Swing-the legendary 1938&1939 Carnegie hall concerts produced by John Hammond"(Vanguard -169/71-2)
<Definitive>="From Spirituals to Swing complete legendary 1938-1939 Carnegie hall concert"(Definitive records DRCD 11182)
<Original>=「フロム・スピリチュアルス・トゥ・スイング」(ヴァンガード・ジャズシリーズ キング・レコード LAX-3076-7)
「スインギン・ザ・ブルース」
<オリジナル・ヴァンガード盤>未収録。上記のように混乱の中始まった1曲目だが、全くその気配は感じられない。この年の2月にスタジオ録音を行ったジャンプ・ナンバー。Dsのカウントの後生きのいいビッグ・バンドサウンドが飛び出す。アンサンブルが見事で実にスインギー!これでツカミはOKという感じであろう。
「ワン・オクロック・ジャンプ」
1937年年間ヒットチャート第2位のベイシーの代名詞ともいえるヒット曲。<オリジナル・ヴァンガード盤>では途中から始まり、ラスト・コーラスのみ収録されている。これを油井氏は「録音盤の取り換えに手間取ったのだろう」としているが、何のことはいないベイシーのピアノのイントロからちゃんとあるではないか。でも演奏は大変短い。最も盛り上がりそうなナンバーなのに意外である。
「ブルース・ウィズ・リップス」
<Definitive complete>ではすぐに演奏に入るが、<ヴァンガード盤>では、ジョン・ハモンド氏による紹介が入る。曰く「私が最初にベイシー・バンドを聴いたのは、1936年カンサス・シティのリノ・クラブでした。たった9人の編成で、トランペットのホット・リップス・ペイジがフューチャーされていました。ペイジは世界最高のトランペット奏者の一人ですが、今はベイシーのバンドにはいません。」とここで再会の演奏であることを聴衆に告げます。油井氏は内容からジョン・ハモンド氏本人のコメントと判断したのであろう。<Definitive complete>でもこういう部分は残して欲しかった。
勿論ペイジのTpフューチャーされる。長尺のプレイで彼のブルース・プレイが堪能できる。Tsソロはエヴァンズ。
「アイ・ネヴァー・ニュー」
この曲と次の曲はベイシーバンドのピック・アップ5人による「カンサス・シティ・ファイヴ」による演奏。「カンサス・シティ・ファイヴ」のメンバーは、バック・クレイトン(Tp)、レスター・ヤング(ts)、カウント・ベイシー(p)、ウォルター・ペイジ(B)、ジョー・ジョーンズ(Ds)の5人。しかしレコード上ではコモドア・レコードにこの年3月に吹き込みを行った時に使われており、その時のメンバーはバック・クレイトン(Tp)、エディ・ダーハム(Tb&Gt)、フレディ・グリーン(Gt)、ウォルター・ペイジ(B)、ジョー・ジョーンズ(Ds)の5人だった。ベイシー楽団のメンバー5人が参加した場合は「カンサス・シティ・ファイヴ」ということで、特別に名前に意味はないのであろう。
アップ・テンポのナンバーで、最初の合奏はディキシー風だ。ソロはベイシー⇒レスター(Cl)⇒クレイトン。レスターがディキシー風クラリネットを吹くのが面白い。
「その手はないよ」
ベニー・グッドマンの楽団が1月のカーネギー・ホールでのコンサートで演奏して大当たりを取り、改めてスタジオ盤を録音しヒットしていたナンバー。一聴すると「その手はないよ」には聴こえないくらい形を変えている。ソロはレスター、クレイトンだが2度目に出るレスターのソロは彼屈指のパフォーマンスであるという。
「ブルース・ウィズ・ヘレン」
「カンサス・シティ・ファイヴ」にベイシー楽団の専属歌手ヘレン・ヒュームズ(Helen Humes)が加わっている。ヒュームズはビリー・ホリデイが辞めた後のベイシー楽団に雇われたシンガー。ゆったりとしたテンポで素晴らしい歌唱を聴かせてくれるが中間に入るレスターのクラリネット・ソロも素晴らしい。
「アイ・エイント・ガット・ノーバディ」
この曲はベイシー、ペイジ、ジョーンズのピアノ・トリオで演奏される。ベイシーは前半をストライド・スタイルで、後半はテンポを上げ間を生かしたベイシー・スタイルで演奏している。
この日のフィナーレはやはり人気のカウント・ベイシー楽団のノリノリで、ということなのだろう。「ジャズって、楽しいでしょ!」というところだろう。
Peronnel … カウント・ベイシー・アンド・ヒズ・オーケストラ(Count Basie and his orchestra)
「スティーリン・ブルース」のみジミー・ラッシング(Jimmy Rushing)が加わる。
<Contents> … <legendary>&<Definitive>
| CD2-7.&CD1-22. | エヴリー・タブ | Every tub | カウント・ベイシー・アンド・ヒズ・オーケストラ | |
| CD2-8.&CD1-23. | スティーリン・ブルース | Stealin' blues | ジミー・ラッシング・ウィズ・ザ・カウント・ベイシー・オーケストラ | |
| CD2-9.&CD1-24. | アフター・ユーヴ・ゴーン | Aftre you've gone | カンサス・シティ・シックス | |
全て<オリジナル・ヴァンガード盤>未収録。
「エヴリー・タブ」
この年の2月にスタジオ録音を行ったナンバーなので、新曲と言えるかも。アップ・テンポのスインギーなナンバーで、ソロはレスター⇒ベイシー⇒エディソン⇒エヴァンズ。アンサンブルも見事。
「スティーリン・ブルース」
ファッツ・ウォラー作のミディアム・テンポのブルース・ナンバー。専属歌手のラッシングの迫力あるブルース歌唱がすごい。
「アフター・ユーヴ・ゴーン」
オーケスタらからのピック・アップ・メンバーによる演奏。最初のコーナーでは<ファイヴ>と5人だったが、ここではレナード・ウエア(Leonard Ware)というギター奏者が加わり6人となる。このウエアというギタリストはエレキ・ギターを弾きクレイトンの次にソロを取っている。ただこの人物の登場が登場は唐突感が否めない。どういう事情でここに加わったのだろうか?
後を継ぐレスターのソロがスゴイ。終わり近くに各自2小節ずつの短いソロがあり、エンディングを演出している。
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