テディ・ヒル 1937年

Teddy Hill 1937

若きディジー・ガレスピー

テディ・ヒルは1920年代後半から活躍しているテナー・サックス奏者で、1934年不況の真っただ中に自己のバンドを組織する。そして翌35年には初めてのレコーディングを行っているので、サックス・プレイヤーとしての腕前はともかくバンド経営の才は卓越したものがあったと言えるだろう。彼の名前が一番知られるのは、ビ・バップ勃興の基地ともいえる「ミントンズ・プレイ・ハウス」のマネージャーとして先見の明を発揮したところであろう。そして彼の先見の明はバンドを辞めたロイ・エルドリッジの後任としてディジー・ガレスピーを起用したことにも表れている。
すなわちこの「ザ・ビッグ・バンド・イーラ《第2集》」に収録されたテディ・ヒル1937年の録音で、ディジー・ガレスピーは初レコーディングを経験するのである。後にチャーリー・パーカーと共にビ・バップを牽引する偉大なミュージシャンの輝かしい吹込みの数々はここからスタートするのである。
その前にテディ・ヒル自身とそのバンドは1935年2月26日に初録音(4曲)をバナー・レーベルに行う。そして36年4月1日(2曲)と5月4日(3曲)をヴォカリオン・レーベルに録音した。さらにこの他に3月26日に6曲、4月23日に6曲、さらに5月17日の6曲合計18曲をブルーバード・レーベルへ吹込みを行った。この「ザ・ビッグ・バンド・イーラ《第2集》」には、この18曲から8曲を選んで収録している。この8曲以外はほとんどがヴォーカル入りで、演奏もスイートなものであり、バンドの実力を知るには、この8曲が最適であると解説氏は書いている。
「ザ・ビッグ・バンド・イーラ 第2集」

<Date&Place> … 1937年3月26日 ニューヨークにて録音

<Personnel> … テディ・ヒルと彼のNBCオーケストラ(Teddy Hill and his NBC orchestra)

Band leader & Tenor saxテディ・ヒルTeddy Hill
trumpetビル・ディラードBill Dillardフランキー・ニュートンFrankie Newtonシャド・コリンズShad Collins
Tromboneディッキー・ウェルズDickie Wells
Clarinet & Alto saxラッセル・プロコープRussell Procope
Alto saxハワード・ジョンソンHoward Johnson
Tenor & Baritone saxセシル・スコットCecil Scott
Pianoサム・アレンSam Allen
Guitarジョン・スミスJohn Smith
Bassリチャード・フルブライトRichard Fullbright
Drumsビル・ビーソンBill Beason

<Contents> … 「RCAジャズ栄光の遺産シリーズ10/ザ・ビッグ・バンド・イーラ《第2集》」(RCA RA-54〜59)

record3 B-1.ザ・ハーレム・トゥイスターThe harlem twister
record3 B-2.マイ・マリーMy Marie
record3 B-1.[ザ・ハーレム・トゥイスター]
解説氏によれば、これはテディ・ヒル楽団の全レコーディング中ベストの演奏の一つという。優れたアンサンブル・プレイと充実したソロ、そして躍動感に富んだリズム・セクションが一体となって、実に活き活きとした演奏が展開される。プロコープ(Cl)の活力あふれるソロ、ウェルズ(Tb)もノッテおり、続くブラス・セクションのアンサンブル・ワークも力強いスイング感に満ちている。スコット(Ts)は豪快そのものであり、アレン(P)からコリンズ(Tp)のスインギーで軽快なソロを経て、ビーソン(Ds)の活気に満ちたプレイ、短いスコットのTsソロで演奏は盛り上がる。かなり実力のあったバンドであったことがよく分かる。
record3 B-2.[マイ・マリー]
力強くスイングするアンサンブルが素晴らしい。スコット(Ts)、アレン(P)、そしてウェルズも実力を発揮したプレイを展開する、圧倒的な演奏であるとは解説氏。
「ザ・ビッグ・バンド・イーラ 第2集」3枚目B面

<Date&Place> … 1937年4月23日 ニューヨークにて録音

<Personnel> … テディ・ヒルと彼のNBCオーケストラ(Teddy Hill and his NBC orchestra)

3月26日と同じ

<Contents> … 「RCAジャズ栄光の遺産シリーズ10/ザ・ビッグ・バンド・イーラ《第2集》」(RCA RA-54〜59)

record3 B-3.ア・スタディ・イン・ブラウンA study in brown
record3 B-4.トルコの黄昏Twilight in Turkey
record3 B-5.チャイナ・ボーイChina boy

record3 B-3.[ア・スタディ・イン・ブラウン]
この時期よく登場するラリー・クリントン作の曲。明るいサウンドであると共に、グイグイと引っ張られるような力強さとスイング感に溢れたアンサンブルがすごい。コリンズ(Tp)も力強く、スコット(Ts)の出来も上々である。
record3 B-4.[トルコの黄昏]
新しい感覚のアレンジで聴かせる。この4日前にトミー・ドーシーの楽団も吹込みを行っているナンバー。そちらも実にユニークな演奏である。
ビーソン(Ds)とスミス(Gt)によるイントロも奇抜なら、ウェルズ(Tb)らしからぬグロウルしたプレイも珍しい。ビーソンのドラム・ブレイクとスミスのGtを前面に出したリズムを中心としてキーを変化させながら進行するグロウル・アンサンブルが不思議な効果を上げている。フルブライト(B)のスラップピング的なバッキングも効果的だ。そしてスコット(Ts)のソロは前任者チュー・べり−的なノリを示すのが面白い。現代なら間違いなく「問題作」と云われるような作品である。
record3 B-5.[チャイナ・ボーイ]
アレン(P)のよく乗ったソロで演奏は始まる。彼の3コーラスに渡る入魂のソロは各コーラスごとに変化に富み楽しい。続くニュートン(Tp)のソロも途中スコット(Bs)の短いソロをはさんで実に力強く、彼ならではの甘さとノリの良さで他を圧倒している。
「ディジー・ガレスピー/ヴィンテージ・シリーズ」

<Date&Place> … 1937年5月17日 ニューヨークにて録音

<Personnel> … テディ・ヒルと彼のNBCオーケストラ(Teddy Hill and his NBC orchestra)

3月26日、4月23日と変更点
Trumpet … フランキー・ニュートン ⇒ ディジー・ガレスピー(Dizzy Gillespie)
Tenor & Baritone sax … セシル・スコット ⇒ ロバート・キャロル(Robert Carroll)

<Contents> … 「RCAジャズ栄光の遺産シリーズ10/ザ・ビッグ・バンド・イーラ《第2集》」(RCA RA-54〜59)&「ヴィンテージ・シリーズ/ディジー・ガレスピー」(Victor VRA-5011)

record3 B-6、A-2.ユアーズ・アンド・マインYours and mine
record3 B-7、A-1.キング・ポーター・ストンプKing porter stomp
record3 B-8、A-3.ブルー・リズム・ファンタジーBlue rhythm fantasy
[ユアーズ・アンド・マイン]
ヴォーカル入りで、歌っているのはTpのビル・ディラード。「ヴィンテージ・シリーズ」解説の油井正一氏は「ディジーのソロが若々しい」と書いている。しかし「ザ・ビッグ・バンド・イーラ」の解説大和明氏は、このTpソロはディジーではなくシャド・コリンズではないかという。どちらが正しいでしょうか?
[キング・ポーター・ストンプ]
ジェリー・ロール・モートン作の有名ナンバーで、ベニー・グッドマンなど多くのジャズメンが取り上げている。
この演奏ついて、油井氏は余り語っていない。一方大和明氏は、「若干19歳の新進トランぺッター、ディジーが初めて吹き込んだ輝かしいファースト・ソロ・プレイ。(中略)ロイ・エルドリッジのスタイルそのままにはち切れんばかりの若さを示す」と歌い上げている。僕はディジーのソロは短くて、明確なソロという感じがしないが、力強くアンサンブルをリードする姿は頼もしい。演奏自体は、後半のリフも含めて迫力満点で実に素晴らしい。
[ブルー・リズム・ファンタジー]
この曲についても油井氏は余り語っていない。ソロについて、Tsはロバート・キャロルではないかと思うが、原盤解説でテディ・ヒルとなっているのでそれを採る。しかしヒルのソロというのはほとんど存在しないので、判然としないが…、と書いている。一方大和氏は明確にロバート・キャロルと言い切っている。どちらが正しいのでしょう?
一方大和氏はかなり詳しく解説している。「テディ・ヒル楽団で最もよく知られたナンバー。ヒルと共作したチャッピー・ウィレットが編曲を行っている。ヒル楽団は34年5月4日にこの曲を一度録音しているが、ここでは新進トランぺッター、ガレスピーを迎え再録音したものである。特に注目したいのは、ウィレットの編曲で、これは時代に先行した斬新でユニークな手法が使われている。アンサンブルからジョンソン(As)とプロコープ(Cl)の呼びかけと応答が浮き上がり、そのままプロコープの新鮮なソロからガレスピー(Tp)のアドリブに入る。このソロもエルドリッジのスタイルを踏襲したものであり、続くキャロル(Ts)がチュー・ベリー風のソロを取る」とかなり詳しい。演奏は素晴らしいの一言に尽きる。本当に実力があったバンドであることが分かる。

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