ジョー・キング・オリヴァー 1924年

Joe "King" Oliver 1924

「キング・オリヴァー／Creole Jazz band The Completeset」 CD

1924年はオリヴァーにとって波乱万丈の年となった。24年のいつ頃かは記載がないが、ルイがバンドを去り、彼の妻ピアニストのリルもルイについて抜けた後（ルイがフレッチャー・ヘンダーソンに誘われニュー・ヨーク行きを迷っていた時背中を押したのは妻のリルだったという）、ニュー・オリンズからトランぺッターのトミー・ラドニアを呼び寄せる。しかし彼はすぐに退団しサム・ウッディングのバンドに加わりヨーロッパ楽旅に旅立ってしまう。またクラリネットのジョニー・ドッズも退団し一時バスター・ベイリーを雇うが、彼も直ぐ抜けたのでニューオリンズからアルバート・ニコラスを呼ぶ。しかしそんな折1924年根城にしていたジャズ・クラブのリンカーン・ガーデンが焼失してしまうのである。そのことがドラマティックに“Creole jazz band”に終止符を打たざるを得なくなった。
そのような事情で、バンドでの録音はなくコルネット奏者として参加したもので、セッション数としては2つのみだ。双方ともCD“King Oliver’s creole jazz band ／ The complete set”に収録されている―ありがたい。

＜Date & Place> … 1924年9月12日　ニュー・ヨークにて録音

＜Personnel> … バタービーンズ・アンド・スージー（Butterbeans & Susie）

Vocal	…	ジョディー・エドワーズ	Jodie Edwards	&	スージー・エドワーズ	Susie Edwards
Cornet	…	ジョー・”キング”・オリヴァー	Joe ”King”Oliver
Piano	…	クラレンス・ウィリアムス	Clarence Williams

＜Contents> … ”King Oliver／Creole Jazz band The Completeset”（Retrieval RTR 79007）

CDⅡ-18.	キス・ミー・スィート	Kiss me sweet
CDⅡ-19.	コンストラクション・ギャング	Construction gang

1924年最初の吹込みは9月12日のバタービーンズとスージーの歌伴である。僕の知っている限り、2代目ジャズ王”キング”オリヴァーが歌伴を務めたのはこれだけである。
CDのライナーノート通りとすれば、ニューヨークでの吹込みである。後にオリヴァーはニューヨークに出ることになるが、この時点では、根拠地は未だシカゴであったと思われる。何故に単身ニューヨークに出、歌伴を務めたのかこう云った辺りの解説がプロの評論家の先生達に望まれるのだが…。
さて、その歌伴を務めた相手というのがバタービーンズ＆スージーというコンビである。このコンビは、ジョディ―・エドワーズとスージー・エドワーズ（旧姓スージー・ホーソーン）夫婦によるコメディ・コンビで、夫婦喧嘩やコミック・ダンス、民族歌唱（racy singinng）などを行い、ヴォードヴィル、ミンストレル・ショウに加わって巡業していた。日本で言えば夫婦漫才のようなものであろう。但し歌はうまい。
また、ピアノのクラレンス・ウィリアムスは、「ブルー・ファイヴ」というバンドを率いて1923年にはシドニー・ベシエを起用してレコーディングを行い、後にはルイをコルネットに起用し、レッド・オニオン・ベイビーズでは、自らはピアノを退き、ルイの妻リルにピアノを弾かせている人物である。
ルイがオリヴァーのクレオール・ジャズ・バンドを辞め、ニューヨークに出てフレッチャー・ヘンダーソンのバンドに加入し初吹き込みを行ったのは1924年10月7日のことであった。その約1か月前にオリヴァーはニューヨークで、夫婦漫才コンビの歌伴の吹込みをしていた。この関係性がよく分からない。
僕がこの録音で一つ良かったと思うのが、オリヴァーのコルネットがはっきり聞こえるということである。これまでの吹込みでは、オリヴァーのコルネットは、そのバンドのリーダーでありながらあまり目立っているとは言い難かった。しかしここではピアノとオリヴァーだけで伴奏を務めているのである。否が応でも＜音＞ははっきり聞こえる。しかしここでのオリヴァーのプレイは、心なしか自信無さ気に聞こえてしまう。思い返してみればオリヴァーには、1923年4月初吹き込み以来弟子のルイが傍についていたのである。オリヴァーのルイ抜きでの初レコーディングでもあったのだ。それが自信の無さに繋がったのだとしたら、どっちが弟子で師匠か分からない。

そして最後は2代目ジャズ王オリヴァーとジャズ史上初の偉大な作曲家と言われるモートンという大物同士の顔合わせである。
しかし僕はこれまで、この録音について評論家の先生達がコメントしたものを見たことが無い。ガンサー・シュラー氏でさえ言及していない。何故だろう？特別成果がなかったのだろうか？もしそうならそれはそれで「大物同士の貴重な顔合わせだが聴くべきところはない」と書くべきではないだろうか？

＜Date & Place＞ … 1924年12月6日　シカゴにて録音

＜Personnel>…　King Oliver & Jelly Roll Morton

Cornet	…	ジョー・”キング”・オリヴァー	Joe ”King”Oliver
Piano	…	ジェリー・ロール・モートン	Jelly Roll Morton

＜Contents＞　…　”King Oliver's creole jazz band／The complete set”（RTR 79007）

CDⅡ-20.	キング・ポーター・ストンプ	King porter stomp
CDⅡ-21.	トム・キャット	Tom cat

モートン、オリヴァーのこの年最後の録音。ジェリー・ロール・モートンとキング・オリヴァーの共演ともなれば、歴史的な逸品ということになるのが普通と思われるが、正直言って聴くべきところは無いように思う。全体の雰囲気は師匠（モートン）が、弟子（オリヴァー）に稽古をつけてやっているという感じで、何となくオリヴァーのプレイが頼り無く感ぜられる。オリヴァーは師匠の前で委縮してしまったのかもしれない。一番の成果は、前作の歌伴以上にオリヴァーのコルネットの”音”が聞こえるということしか思い当たりません。

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ジョー・キング・オリヴァー 1924年

Joe "King" Oliver 1924

＜Date & Place> … 1924年9月12日 ニュー・ヨークにて録音