ベッシー・スミス 1925年
Bessie Smith 1925
1925年ベッシー・スミスは前年に引き続き多く、33曲の録音を行っていることになっているが、僕が持っているのはCD”Bessie Smith/The collection”に収録された4曲(うち1曲は"The Smithsonian collection"にも収録)と"Bessie Smith/Nobody's blues but me"(日本版「ベッシー・スミス物語」の基となったもの)に収録された14曲である。
<Date & Place> … 1925年1月14日 ニューヨークにて録音
<Personnel>
<Contents> … "Bessie Smith/The collection"(Columbia CK 44441)&"The Smithsonian collection of classic jazz"(P6 11891)
Record1 A-4、CD-5. | セント・ルイス・ブルース | St.Louis blues |
CD-6. | レックレス・ブルース | Reckless blues |
CD-7. | ユーヴ・ビーン・ア・グッド・オール・ワゴン | You've been a good ole man |
CD-5.セント・ルイス・ブルース
「ブルースの父」と言われるW.C.ハンディーが1914年に作曲したブルース界トップ・クラスのスタンダード・ナンバー。ブルースには珍しく16小節のインタールード(いわゆるBメロが付く)。ベッシ―とルイが競演したこの演奏は1925年度年間ヒット・チャート3位にランクされ、グラミー賞の「名声の殿堂(Hall of fame)」にも選ばれている誰もが認める名演。
かなりゆったりしたテンポである。粟村氏によると、彼女はルイの歌伴を余り好まなかったという。それは彼女に限らず当時のルイは、主役の歌手を食い散らかさんばかりに雄弁であったからで、彼女の忌避も頷けるものがあると書いている。しかしこの録音ではそんなことは露ほども感じさせないほど、彼女の圧倒的な声量と存在感で素晴らしい「共演」という形になっている。
CD-6.レックレス・ブルース
ここではルイは、ミュートでコルネットを吹いている。これも実にゆったりとしたテンポである。
CD-7.ユーヴ・ビーン・ア・グッド・オール・ワゴン
前2曲で感じたことだが、どうもオルガンの響きに違和感を感じる。しかし、こういう雰囲気は教会風で黒人には好まれるのかな?と思っていたらこの曲では一転して、ロングショウはピアノをプレイしている。
これもゆったりしたテンポで、ルイはミュートでプレイしている。かなりトリッキーな音も交えている。
<Date & Place> … 1925年5月26、27日 ニュー・ヨークにて録音
<Personnel> … ベッシー・スミス&ルイ・アームストロング(Bessie Smith & Louis Armstrong)
<Contents> … "Bessie Smith/Nobody's blues but me"(CG 31093)&"Bessie Smith/The collection"(Columbia CK 44441)
record1 A-1. | ケアレス・ラヴ | Careless Love | 5月26日 |
record1 A-2. | J.C.ホルムス・ブルース | J.C.Holmes blues | 5月27日 |
record1 A-3、CD-8. | アイ・エイント・ゴナ・プレイ・ノー・セカンド・フィドル | I ain't gonna play no second fiddle | 5月27日 |
record1 A-1.[ケアレス・ラヴ]
堂々たるベッシーの歌唱にルイとグリーンが代わる代わるオブリガードを付ける。しかし何という迫力ある歌いっぷりであろう、全てを圧倒している。
record1 A-2.[J.C.ホルムス・ブルース]
ゆったりとしたスロウ・ブルース。ここでもヘンダーソンの伴奏、ルイとグリーンがオブリガードを付けるという基本構造は変わらないが、ルイ、グリーンという名手を向こうに回し、力のヴォーカルで圧倒するベッシーが凄まじい。
CD-8. アイ・エイント・ゴナ・プレイ・ノー・セカンド・フィドル(I ain't gonna play no second fiddle)
この約6か月後にも作者ペリー・ブラッドフォード自身によって吹き込まれる曲。ペリーはメイミー・スミスの「クレイジー・ブルース」作者として知られるが、当時は作曲家、プロデューサーとして大きな存在だったのであろう。
なおこの曲にはさらに副題がついている。全て表記すると”I ain’t gonna play no second fiddle if I can't play the lead”、つまり「もしリードを弾けなくても、もう第2フィドルは弾かないぞ」という題だが、一体どんな想いが込められているのだろうか?
後に取り上げる作者ペリーのヴァージョンは、ルイの注目ソロとしてシュラー氏が取り上げている曲だが、ここでのルイは短いイントロとオブリガートが聴けるくらいである。
そして何と言っても圧巻はベッシ―のところどころシャウトを交えた力感あふれるヴォーカルである。ブレークを繰り返すところなど迫力満点である。その後のリズム・アンド・ブルースの萌芽が見えるようだ。
<Date & Place> … 1925年6月23日 ニュー・ヨークにて録音
<Personnel> … ベッシー・スミス(Bessie Smith)
<Contents> … "Bessie Smith/Nobody's blues but me"(CG 31093)
record1 A-4.[ヒーズ・ゴーン・ブルース(He's gone blues)]
「彼氏が行ってしまったブルース」ということであろう。スロウ・テンポのアンニュイな感じのブルース。しかし歌いっぷりは迫力満点である。
<Date & Place> … 1925年8月19日 ニュー・ヨークにて録音
<Personnel> … ベッシー・スミス・アンド・ハー・バンド(Bessie Smith and her band)
<Contents> … "Bessie Smith/Nobody's blues but me"(CG 31093)
record1 A-5. | ノーバディズ・ブルース・バット・マイン | Nobody's blues but me |
record1 A-6. | アイ・エイント・ガット・ノーバディ | I ain't got nobody |
record1 A-5.[ノーバディズ・ブルース・バット・マイン]
ボブ・フラーのアルトとスノウデンのバンジョーが不思議なサウンドを作り出している。ブルースではないが迫力ある歌唱は相変わらずである。
record1 A-6.[アイ・エイント・ガット・ノーバディ]
どこかで聴いたことのあるメロディである。これもブルースではない。
<Date & Place> … 1925年9月1日 ニュー・ヨークにて録音
<Personnel> … ベッシー・スミス・アンド・クララ・スミス(Bessie Smith and Clara Smith)
<Contents> … "Bessie Smith/Nobody's blues but me"
record1 A-7.[マイマンズ・ブルース(My man's blues)]
ベッシー・スミスと同じくブルース・シンガー、クララ・スミスと共演盤。同じスミス姓だが姻戚関係はない。ベッシーの唯一女性との共演レコードである。ゆったりとしたブルースで、最初に出るのがクララではないかと思う。口笛そして言い合いの後に出るのがベッシーではないか?ハモりも見事。
<Date & Place> … 1925年11月17日 ニュー・ヨークにて録音
<Personnel> … ベッシー・スミス(Bessie Smith)
<Contents> … "Bessie Smith/Nobody's blues but me"(CG 31093)
record1 A-8. | ニュー・ガルフ・コースト・ブルース | New gulf coast blues |
record1 B-1. | フロリダ・バウンド・ブルース | Florida bound blues |
record1 A-8.[ニュー・ガルフ・コースト・ブルース]
久しぶりにクラレンス・ウィリアムズがバックを務めている。ベッシーのバックはこのウィリアムズがよくフィットしていると僕は思う。
record1 B-1.[フロリダ・バウンド・ブルース]
「フロリダ行きのブルース」ということかな?この2曲はほとんどシャウトもなく割と大人しい歌唱である。
<Date & Place> … 1925年11月18日 ニュー・ヨークにて録音
<Personnel> … ベッシー・スミス(Bessie Smith)
<Contents> … "Bessie Smith/Nobody's blues but me"(CG 31093)
record1 B-2. | アット・ザ・クリスマス・ボール | At the Christmas ball |
record1 B-3. | アイヴ・ビーン・ミストリーティド・アンド・アイ・ドント・ライク・イット | I've been mistreated and I don't like it |
record1 B-2.[アット・ザ・クリスマス・ボール]
当時のヘンダーソン楽団がバックを務めている。トランペットには、ベッシーが最も好んだTp奏者と言われるジョー・スミスが入っている。
record1 B-3.[アイヴ・ビーン・ミストリーティド・アンド・アイ・ドント・ライク・イット]
どちらもバックは取り留めもない演奏である。折角フロントに名手が揃っているのだから、ソロを吹かせてほしかった。
<Date & Place> … 1925年11月20日 ニュー・ヨークにて録音
<Personnel> … ベッシー・スミス(Bessie Smith)
<Contents> … "Bessie Smith/Nobody's blues but me"(CG 31093)
record1 B-4. | レッド・マウンテン・ブルース | Red mountain blues |
record1 B-5. | ゴールデン・ルール・ブルース | Golden rule blues |
ヘンダーソンの伴奏にレッドマンがオブリガードを付けるという形式だが、レッドマンのオブリガードは少し変わっているように聴こえる。
<Date & Place> … 1925年12月9日 ニュー・ヨークにて録音
<Personnel> … ベッシー・スミス(Bessie Smith)
<Contents> … "Bessie Smith/Nobody's blues but me"
record1 B-6.[ロンサム・デザート・ブルース(Lonesome desert blues)]
ヘンフィルのミュートTpはいい味付けになっている。フレッド・ロングショウは度々伴奏を付けているが相性がよさそうである。
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