カリフォルニア・ランブラーズは、バンジョーのレイ・キッチンマン(Ray Kitchenman)によって1921年に結成されました。1920年代を通じて多くの異なるレーベルに数百にも上る曲を録音した最も録音数の多いバンドの一つと言われます。キッチンマン初めメンバーの多くはオハイオ州出身でしたが、カリフォルニア・ランブラーズ(California Ramblers)と名付けられました。
そもそもこのレイ・キッチンマンという人物、その創始者がなぜ録音に加わっていないのか等については資料がなく不明です。なぜ「カリフォルニア」なのかについても謎に包まれています。
なぜこのカリフォルニア・ランブラーズそもそもこのレコードを購入したかというと、中古レコードショップで見かけた時メンバーは知らない人が多いが、その中に「レッド・ニコルス」とジミーとトミーの「ドーシー・ブラザース」の名前を見つけたので、ジャズのレコードに間違いないと思ったのでした。
ガンサー・シュラー氏は『初期のジャズ』で「フレッチャー・ヘンダーソン楽団など黒人バンドのメンバーたちは、必ずしも無批判的にということではないが、広い範囲の音楽スタイルを聴いていた。例えばオリジナル・メンフィス・ファイヴや、楽員を一新してより滑らかで洗練されたO.D.J.B.などのようないくつもの5人編成のグループである。彼らはまた、ポール・ホワイトマンやカリフォルニア・ランブラーズのような白人大楽団を聴いて、少なくともその一定の側面に感心することもありえただろう。」
そして「前者(ポール・ホワイトマン)のタイプのバンドには感嘆に値するようなジャズの要素はあまりなかったが、後者(カリフォルニア・ランブラーズ)における4人のサックスのセクションの正確な演奏と抑制の利いた響きや編曲者が作り出す特別な効果音に感心したことはあったに違いない」と述べています。
1920年代初期を代表するバンドであるフレッチャー・ヘンダーソンのバンドは、ニュー・ヨークで育ったバンドで、フレッチャー自身ジャズやブルースよりも元来は軽いクラシック系の音楽を志向していた。そしてその楽団員たちもブルース歌手と共演はしながらも決して自分たちでブルースを演奏しなかった。彼らは技巧と洗練を重んじていた。そしてそれが当時ニュー・ヨークの音楽シーンの特徴でもあったというのである。そんな彼らはポール・ホワイトマンやカリフォルニア・ランブラーズのような白人大楽団も聴き感心することもあったのだろうというのである。
色々述べたが、つまりシュラー氏はこのカリフォルニア・ランブラーズを「ちょっとジャズの香りがする白人楽団」だというのです。
A面4.「チャールストン」が年間ヒット・チャート30位にランク位されている。
A面 | 曲名 | 原題 | 録音日 | B面 | 曲名 | 原題 | 録音日 |
1 | キープ・スマイリング・アット・トラブル | Keep smiling at trouble | 1月19日 | 1 | ホエン・ザ・ムーン・シャインズ・オン・コーラル・ゲイブルズ | When the moon shines on Coral Gables | 5月11日 |
2 | オー、メイベル | Oh Mabel | 1月19日 | 2 | カレッジエイト | Collegiate | 6月23日 |
3 | チーティング・オン・ミー | Cheating on me | 4月2日 | 3 | マンハッタン | Manhattan | 7月15日 |
4 | チャールストン | Charleston | 4月2日 | 4 | スイート・マン | Sweet man | 9月15日 |
5 | エヴリシング・イズ・ホッツィー・トッツィー・ナウ | Everything is hotsy totsy now | 4月22日 | 5 | クラップ・ハンズ 、ヒア・カムズ・チャーリー | Clap hands , here comes Charlie | 11月24日 |
6 | ザ・フラッパー・ワイフ | The flapper wife | 4月22日 |
Trumpet | … | フランク・クッシュ | Frank Cush | 、 | ビル・ムーア | Bill Moore |
Trombone | … | ロイド・オレ・オルセン | Lloyd Ole Olsen | |||
Clarinet & Alto sax | … | ジミー・ドーシー | Jimmy Dorsey | 、 | アーノルド・ブリルハート | Arnold Brilhart |
Clarinet & Tenor sax | … | フレディ・キュージック | Freddy Cusick | |||
Bass sax | … | エイドリアン・ロリーニ | Adrian Rollini | |||
Piano | … | アーヴィング・ブロドスキー | Irving Brodsky | |||
Banjo | … | トミー・フェリーネ | Tommy Felline | |||
Drums & Kazoo | … | スタン・キング | Stan King |
<変動Personnel>
Trumpet … ビル・ムーア ⇒ レッド・ニコルズ Red Nichols
Trombone … ロイド・オレ・オルセン ⇒ トミー・ドーシー Tommy Dorsey
<変動Personnel>
Vocal … ヴォーカルのヴァーノン・ダルハート(Vernon Dalhart)とアーサー・ホール(Arthur Hall)が加わる。
<変動Personnel>
Vocal … ヴォーカルのチャールズ・ハート(Charles Hart)が加わる。
<変動Personnel>
Vocal … 名前が不明だがヴォーカル・デュエットが加わる。
<変動Personnel>
Trumpet … レッド・ニコルズ ⇒ ロイ・ジョンストン Roy Johnston
Clarinet & Alto sax … アーノルド・ブリルハート ⇒ ボビー・ディヴィス Bobby Davis
<変動Personnel>
Alto sax … エディー・スタンナード Eddie Stannard
Trumpet | … | フランク・クッシュ | Frank Cush | 、 | ロイ・ジョンストン | Roy Johnston |
Trombone | … | ハーブ・ウィンフィールド | Herb Winfield | |||
Clarinet , Soprano & Alto sax | … | ボビー・デイヴィス | Bobby Davis | |||
Clarinet & Alto sax | … | フレディ・キュージック | Freddy Cusick | |||
Clarinet & Tenor sax | … | ファド・リヴィングストン | Fud Livingston | |||
Tenor sax | … | エディー・スタンナード | Eddie Stannard | |||
Bass sax | … | エイドリアン・ロリーニ | Adrian Rollini | |||
Piano | … | アーヴィング・ブロドスキー | Irving Brodsky | |||
Banjo | … | トミー・フェリーネ | Tommy Felline | |||
Drums | … | スタン・キング | Stan King | |||
Vocal | … | アーサー・ホール | Arthur Hall | 、 | ジョニー・ライアン | Johnny Ryan |
全般を通して聴いてみればやはりジャズなのであろう。短いながらもちゃんとを各人ソロを取っている。フレッチャー・ヘンダーソン楽団とほぼ同レベルのジャズ演奏ではないかと思える。リズムを支える中心はバンジョーであるところが時代を感じさせる。
本来聴き処はレッド・ニコルスやドーシー・ブラザーズなのだろうが、Tpソロではどれがニコルスか、Clソロではどれがジミーかなど申し訳ないが僕には特定できない。
シュラー氏の言うようにどちらかといえば高音域を使った柔らかなサックス・アンサンブルが特徴的である。
A-1のAsソロ(ジミーか)、ロリーニのBsのソロ、A-2のTpとBsとの対話形式のソロなどは面白いと思う。またA-3には数少ないTbソロがあるがパーソネルを見る限り他にTbはいなのでトミー・ドーシーであろう。A-4終盤のニューオリンズ風集団演奏、A-6の朗々としたTpソロ、Bjのソロなどは聴き応えがあると思う。
B-1、4のTpソロはなかなか良いと思う。一方、B-2、3、5はとてもポップな曲でいかにも初期スイング時代の白人バンドの演奏という感じがする。
ロリーニのバス・サックスによるソロは先駆的で、最も古いバス・サックスのソロではないかと思う。ここからバリトン・サックスのソロが生まれてきたようにも感じる。
全体を通して感じることは、なんとなく雰囲気が明るいのである。太陽を一杯に浴びた西海岸の学生向けという感じがする。それが白人だからなのかはよく分からないが…。ともかく全くブルースなどとは縁のない演奏であることは確かだ。
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