ザ・カリフォルニア・ランブラーズ 1925年

The California Ramblers 1925

「CaliforniaRamblers 1925」ジャケット写真

カリフォルニア・ランブラーズは、バンジョーのレイ・キッチンマン(Ray Kitchenman)によって1921年に結成されました。1920年代を通じて多くの異なるレーベルに数百にも上る曲を録音した最も録音数の多いバンドの一つと言われます。キッチンマン初めメンバーの多くはオハイオ州出身でしたが、カリフォルニア・ランブラーズ(California Ramblers)と名付けられました。
そもそもこのレイ・キッチンマンという人物、その創始者がなぜ録音に加わっていないのか等については資料がなく不明です。なぜ「カリフォルニア」なのかについても謎に包まれています。

なぜこのカリフォルニア・ランブラーズそもそもこのレコードを購入したかというと、中古レコードショップで見かけた時メンバーは知らない人が多いが、その中に「レッド・ニコルス」とジミーとトミーの「ドーシー・ブラザース」の名前を見つけたので、ジャズのレコードに間違いないと思ったのでした。
ガンサー・シュラー氏は『初期のジャズ』で「フレッチャー・ヘンダーソン楽団など黒人バンドのメンバーたちは、必ずしも無批判的にということではないが、広い範囲の音楽スタイルを聴いていた。例えばオリジナル・メンフィス・ファイヴや、楽員を一新してより滑らかで洗練されたO.D.J.B.などのようないくつもの5人編成のグループである。彼らはまた、ポール・ホワイトマンやカリフォルニア・ランブラーズのような白人大楽団を聴いて、少なくともその一定の側面に感心することもありえただろう。」
そして「前者(ポール・ホワイトマン)のタイプのバンドには感嘆に値するようなジャズの要素はあまりなかったが、後者(カリフォルニア・ランブラーズ)における4人のサックスのセクションの正確な演奏と抑制の利いた響きや編曲者が作り出す特別な効果音に感心したことはあったに違いない」と述べています。
1920年代初期を代表するバンドであるフレッチャー・ヘンダーソンのバンドは、ニュー・ヨークで育ったバンドで、フレッチャー自身ジャズやブルースよりも元来は軽いクラシック系の音楽を志向していた。そしてその楽団員たちもブルース歌手と共演はしながらも決して自分たちでブルースを演奏しなかった。彼らは技巧と洗練を重んじていた。そしてそれが当時ニュー・ヨークの音楽シーンの特徴でもあったというのである。そんな彼らはポール・ホワイトマンやカリフォルニア・ランブラーズのような白人大楽団も聴き感心することもあったのだろうというのである。
色々述べたが、つまりシュラー氏はこのカリフォルニア・ランブラーズを「ちょっとジャズの香りがする白人楽団」だというのです。
A面4.「チャールストン」が年間ヒット・チャート30位にランク位されている。

A面ラベル

<Contents> … ”Archive of Jazz/The California Rumblers”(BYG 529.089)

A面
曲名原題録音日
B面
曲名原題録音日
キープ・スマイリング・アット・トラブルKeep smiling at trouble1月19日ホエン・ザ・ムーン・シャインズ・オン・コーラル・ゲイブルズWhen the moon shines on Coral Gables5月11日
オー、メイベルOh Mabel1月19日カレッジエイトCollegiate6月23日
チーティング・オン・ミーCheating on me4月2日マンハッタンManhattan7月15日
チャールストンCharleston4月2日スイート・マンSweet man9月15日
エヴリシング・イズ・ホッツィー・トッツィー・ナウEverything is hotsy totsy now4月22日クラップ・ハンズ 、ヒア・カムズ・チャーリーClap hands , here comes Charlie11月24日
ザ・フラッパー・ワイフThe flapper wife4月22日

<Personnel> … ザ・カリフォルニア・ランブラーズ (The California Ramblers)

Trumpetフランク・クッシュFrank Cushビル・ムーアBill Moore
Tromboneロイド・オレ・オルセンLloyd Ole Olsen
Clarinet & Alto saxジミー・ドーシーJimmy Dorseyアーノルド・ブリルハートArnold Brilhart
Clarinet & Tenor saxフレディ・キュージックFreddy Cusick
Bass saxエイドリアン・ロリーニAdrian Rollini
Pianoアーヴィング・ブロドスキーIrving Brodsky
Banjoトミー・フェリーネTommy Felline
Drums & Kazooスタン・キングStan King
<Date & Place> … 1925年4月2日 ニュー・ヨークにて録音

<変動Personnel>
Trumpet … ビル・ムーア ⇒ レッド・ニコルズ Red Nichols
Trombone … ロイド・オレ・オルセン ⇒ トミー・ドーシー Tommy Dorsey

<Date & Place> … 1925年4月22日 ニュー・ヨークにて録音

<変動Personnel>
Vocal … ヴォーカルのヴァーノン・ダルハート(Vernon Dalhart)とアーサー・ホール(Arthur Hall)が加わる。

<Date & Place> … 1925年5月11日 ニュー・ヨークにて録音

<変動Personnel>
Vocal … ヴォーカルのチャールズ・ハート(Charles Hart)が加わる。

<Date & Place> … 1925年6月23日 ニュー・ヨークにて録音

<変動Personnel>
Vocal … 名前が不明だがヴォーカル・デュエットが加わる。

<Date & Place> … 1925年7月15日 ニュー・ヨークにて録音

<変動Personnel>
Trumpet … レッド・ニコルズ ⇒ ロイ・ジョンストン Roy Johnston
Clarinet & Alto sax … アーノルド・ブリルハート ⇒ ボビー・ディヴィス Bobby Davis

<Date & Place> … 1925年9月15日 ニュー・ヨークにて録音

<変動Personnel> Trombone … トミー・ドーシー ⇒ スピーグル・ウィルコックス Spiegle Wilcox
Alto sax … エディー・スタンナード Eddie Stannard

B面ラベル
<Date & Place> … 1925年11月24日 ニュー・ヨークにて録音
<Personnel> … 変動が多いので全メンバーを記す。
Trumpetフランク・クッシュFrank Cushロイ・ジョンストンRoy Johnston
Tromboneハーブ・ウィンフィールドHerb Winfield
Clarinet , Soprano & Alto saxボビー・デイヴィスBobby Davis
Clarinet & Alto saxフレディ・キュージックFreddy Cusick
Clarinet & Tenor saxファド・リヴィングストンFud Livingston
Tenor saxエディー・スタンナードEddie Stannard
Bass saxエイドリアン・ロリーニAdrian Rollini
Pianoアーヴィング・ブロドスキーIrving Brodsky
Banjoトミー・フェリーネTommy Felline
Drumsスタン・キングStan King
Vocalアーサー・ホールArthur Hallジョニー・ライアンJohnny Ryan

全般を通して聴いてみればやはりジャズなのであろう。短いながらもちゃんとを各人ソロを取っている。フレッチャー・ヘンダーソン楽団とほぼ同レベルのジャズ演奏ではないかと思える。リズムを支える中心はバンジョーであるところが時代を感じさせる。
本来聴き処はレッド・ニコルスやドーシー・ブラザーズなのだろうが、Tpソロではどれがニコルスか、Clソロではどれがジミーかなど申し訳ないが僕には特定できない。
シュラー氏の言うようにどちらかといえば高音域を使った柔らかなサックス・アンサンブルが特徴的である。
A-1のAsソロ(ジミーか)、ロリーニのBsのソロ、A-2のTpとBsとの対話形式のソロなどは面白いと思う。またA-3には数少ないTbソロがあるがパーソネルを見る限り他にTbはいなのでトミー・ドーシーであろう。A-4終盤のニューオリンズ風集団演奏、A-6の朗々としたTpソロ、Bjのソロなどは聴き応えがあると思う。
B-1、4のTpソロはなかなか良いと思う。一方、B-2、3、5はとてもポップな曲でいかにも初期スイング時代の白人バンドの演奏という感じがする。
ロリーニのバス・サックスによるソロは先駆的で、最も古いバス・サックスのソロではないかと思う。ここからバリトン・サックスのソロが生まれてきたようにも感じる。
全体を通して感じることは、なんとなく雰囲気が明るいのである。太陽を一杯に浴びた西海岸の学生向けという感じがする。それが白人だからなのかはよく分からないが…。ともかく全くブルースなどとは縁のない演奏であることは確かだ。

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